宅建業免許の「事務所を使用する権原に関する書面」の書き方
賃貸借契約書に「事務所」とあれば、そのまま申請できますか?
会社で借りた部屋を宅建業の事務所にする予定です。賃貸借契約書の使用目的は「事務所」になっています。「事務所を使用する権原に関する書面」へ契約内容を写せばよいのでしょうか。契約書そのものも提出しますか。
この書面だけではなく、宅建業に使える契約かどうかも確認します
「事務所を使用する権原に関する書面」は、建物の所有者と、申請者がその場所を使う根拠を申告する書類です。所有者・契約当事者・契約期間・使用目的を、登記事項や賃貸借契約書と一致させます。
ただし、この書面を作れば契約上の問題がなくなるわけではありません。契約書の用途が「事務所」でも、営業できる業種、来客、商号表示、法人登記、電話設置などに制限があれば、宅建業の事務所として使えないことがあります。
部屋の独立性や来客対応の条件は、宅建業の事務所要件でも確認できます。レンタルオフィスの場合は、レンタルオフィスで申請するときの確認事項も併せてご覧ください。
権原書面の書き方と用意する資料の診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論自己所有として記載
- 結論代表者との賃貸借・使用貸借
- 確認2その部屋は、どういう契約で借りていますか?
- 結論賃貸借として記載
- 結論転貸借として記載
- 結論専用の区画まで特定して記載
- 結論法人名義への変更か貸主の承諾
- 確認1建物の登記簿上の所有者は、誰ですか?結論自己所有として記載結論代表者との賃貸借・使用貸借
- 確認2その部屋は、どういう契約で借りていますか?結論賃貸借として記載結論転貸借として記載結論専用の区画まで特定して記載結論法人名義への変更か貸主の承諾
- 自己所有として記載
書面には自己所有と記載します。建物の登記事項証明書の写しなど、所有者が分かる資料を用意します。
- 代表者との賃貸借・使用貸借
自己所有ではなく、法人と代表者の間の賃貸借か使用貸借として記載します。賃貸借契約書、使用貸借契約書、使用承諾書のどれかを用意します。
- 賃貸借として記載
賃貸借として記載し、法人名義の賃貸借契約書を用意します。契約書の用途が「事務所」としか書かれていないときは、宅建業に使えることを貸主へ確認します。
- 転貸借として記載
所有者と転貸人を分けて記載します。法人の転貸借契約書に加えて、所有者と転貸人の間の契約書か、所有者の転貸承諾書を用意します。
- 専用の区画まで特定して記載
施設名だけでなく、専用の階・部屋・区画まで特定して記載します。契約書のほかに求められることがある資料は、レンタルオフィスで申請するときの確認事項で説明しています。
- 法人名義への変更か貸主の承諾
契約名義を法人へ変更した契約書か、法人が使用することへの貸主の承諾書を用意します。
埼玉県では、契約書などの資料を権原書面とともに県へ提出します。東京都では、通常は権原書面に所有者と契約の内容を書き、レンタルオフィスなどでは契約書や承諾書を追加で求められることがあります。
申請前に、契約関係を五つ確認します
- 建物の所有者は誰か建物の登記事項を確認します。貸主や管理会社と所有者が同じとは限りません。転貸借では、所有者までさかのぼって使用の了承を確認します。
- 申請者が契約当事者になっているか法人申請なら、原則として法人が借主になります。会社設立前に代表者個人で契約した場合は、法人への契約変更や所有者の承諾を確認します。
- 宅建業を営める契約になっているか用途欄だけでなく、禁止業種、来客、看板・商号表示、法人登記、電話、郵便物、営業時間の制限まで読みます。用途が「事務所」だけなら、宅地建物取引業に使用できることを貸主へ確認します。
- 専用区画を継続して使えるか自由席や一時利用ではなく、申請者が独占して使う区画があるか、契約期間と更新条件を確認します。レンタルオフィスでは特に重要です。
- 書面と申請書の所在地が一致するか建物名、階、部屋番号まで、免許申請書第三面、法人登記、契約書、平面図、写真の表記をそろえます。
建物を代表者が個人で所有し、法人が宅建業を営む場合は、申請者である法人から見ると他人所有です。法人と代表者の間の賃貸借又は使用貸借として記載し、使用できる根拠を用意します。
契約資料を見ながら、各欄を記入します
- 事務所の名称と所在地を書く
免許申請書第三面と同じ名称・所在地を書きます。複数の事務所がある場合は、事務所ごとに行を分けます。
- 所有者を書く
建物の登記事項に記録された所有者の氏名又は法人名を書きます。賃貸人や管理会社をそのまま所有者欄へ書かないようにします。
- 契約相手を書く
申請者へ直接貸している人又は法人を書きます。所有者から直接借りていれば所有者と同じになり、転貸借なら転貸人になります。
- 契約の種類を書く
自己所有、賃貸借、使用貸借、転貸借の実態に合わせます。賃料がないから自己所有になるわけではなく、他人の建物を無償で借りる場合は使用貸借です。
- 契約日と契約期間を書く
契約書の締結日、始期、終期をそのまま転記します。自動更新や期間の定めがない場合は、契約資料と矛盾しない書き方にします。
- 使用目的を書く
契約書に記載された用途を書きます。「事務所」としか書かれていない場合は、宅建業を営むことへの承諾が別途必要か確認します。
- 必要な裏付け資料を添える
自己所有なら建物の登記事項、賃貸借・使用貸借なら契約書又は使用承諾書、転貸借なら所有者までの契約関係又は所有者の承諾を用意します。
所有・賃貸借・転貸借で、用意する資料が変わります
| 書面の記載 | 用意する資料 | |
|---|---|---|
| 申請者が建物を所有 | 自己所有として記載します。 | 建物の登記事項証明書の写し、又は登記情報提供サービスから印刷した所有者情報等を用意します。 |
| 法人が所有者から直接借りる | 賃貸借として、所有者と契約相手を記載します。 | 法人名義の賃貸借契約書を用意します。契約上の用途と宅建業利用の承諾も確認します。 |
| 代表者個人の建物を法人が使う | 法人から見れば賃貸借又は使用貸借です。 | 法人と代表者間の賃貸借契約書、使用貸借契約書又は使用承諾書を用意します。 |
| 会社設立前に代表者が契約 | 契約名義を設立後の法人へ変更したうえで記載するのが確実です。 | 名義変更した契約書、法人が使用することへの貸主の承諾書など、法人の使用権限が分かる資料を用意します。 |
| 借主から又借りする | 転貸借として、所有者と転貸人を分けて記載します。 | 申請者の転貸借契約書に加え、所有者から転貸人までの契約書又は所有者の転貸承諾書を用意します。 |
| レンタルオフィスを使う | 施設名だけでなく、専用の階・部屋・区画まで特定します。 | 契約書に加え、物件・専用区画・申請者・契約期間・独占使用・宅建業利用・来客対応・商号表示・電話・ポスト・利用時間等を確認できる資料を求められることがあります。 |
契約書の用途が「事務所」だけでは足りないことがあります
用途が「事務所」と書かれていても、すべての事業を自由に営めるとは限りません。契約約款や館内規則で、不特定の来客、看板の設置、宅建業を含む特定業種、登記、郵便物、営業時間などが制限されていれば、宅建業の事務所として使用できる説明がつきません。
借主が当該区画を宅地建物取引業の事務所として使用すること、法人登記、商号の掲示、来客対応、業務用電話の設置を貸主が承諾していることを、物件の事情に合わせて明記します。契約書に十分な記載があれば、同じ内容の書類を重ねて作る必要はありません。
「宅地建物取引業」の文字がすべての契約書に必須という全国一律の様式ではありません。ただし、用途や業種の制限が読めない契約ほど、貸主の具体的な承諾を求められやすくなります。契約前であれば、最初から宅建業の事務所として使うことを書面に入れておく方が確実です。
埼玉県と東京都では、契約書を出す相手と時期が異なります
| 免許申請 | 保証協会の入会・事務所確認 | |
|---|---|---|
| 埼玉県 | 権原書面とともに、自己所有なら所有者が分かる登記資料、賃貸借・使用貸借なら契約書又は使用承諾書、転貸借なら所有者までの権利関係が分かる資料を埼玉県へ提出します。レンタルオフィスは契約書と独占使用を示す資料が必要です。 | 加入する保証協会から別の資料を求められる場合があります。免許申請で使った契約資料は、入会手続が終わるまで保管します。 |
| 東京都 | 通常は権原書面へ所有・契約内容を記載します。事務所の使用関係に疑義がある場合や、レンタルオフィス等では、賃貸借契約書や承諾書等の追加提出を求められることがあります。 | 実務では、保証協会への入会や事務所確認で賃貸借契約書等を確認されることがあります。公開されている共通書類一覧のほかに支部から追加書類を求められる場合があるため、加入先と担当支部へ確認します。 |
東京都の免許申請で賃貸借契約書が一律の添付書類になっていないからといって、契約書が不要になるわけではありません。権原書面の作成、追加資料への対応、保証協会の事務所確認に使います。
この記事で確認した公式情報:宅地建物取引業者免許申請について(埼玉県)事務所使用の権利を証するもの(埼玉県)宅地建物取引業者免許申請について(東京都)入会申請書類(東京都宅建協会・全宅保証協会東京本部)
賃貸借契約を結ぶ前に、宅建業で使うことまで確認します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
契約後に『この業種は認められない』と分かると、事務所を探し直すことになります。部屋だけでなく、契約内容も申請前に確認します。
宅建業の事務所は、登記できるだけでは足りません。顧客を迎え、商号を掲示し、継続して営業できることが必要です。物件の図面が事務所要件を満たしていても、契約が宅建業の利用を認めていなければ進められません。
レンタルオフィスでは、運営会社が作成する利用証明書や独占使用の証明書を追加することがあります。法令に「24時間365日利用できること」という要件はありませんが、時間貸しや特定日のみの利用では継続性を説明できません。届け出る営業時間中に専用区画へ入り、他の利用者と競合せずに使えるかを確認し、利用時間に制限があれば申請先と保証協会へ事前に確認します。
事務所の図面と契約書を、申請前に確認します
- 所有者、契約当事者、転貸の有無を確認します
- 宅建業の利用、来客、表示、電話等の制限を確認します
- 権原書面と必要な契約書・承諾書を作成します
- 埼玉県への免許申請と保証協会の入会手続を進めます
標準的な法人新規・埼玉県知事免許・1事務所は、会社設立から選択した保証協会1団体の入会手続まで事務所報酬99,000円(税込)です。登録免許税、定款認証費用、免許申請手数料、証明書・郵送等の実費、保証協会費用等は別途です。契約内容の変更や所有者との調整が必要な場合は、対応範囲をご案内します。
契約する前の事務所でも、図面と契約案から確認できます。
宅建業免許申請代行の内容を見る会社設立から保証協会への入会手続まで、一つの予定で進めます。事務所を使用する権原に関する書面についてよくある質問
賃貸借契約書の用途が「事務所」なら十分ですか?
用途欄だけで判断しません。禁止業種、来客、看板、登記、電話、営業時間等の制限も確認します。宅建業に使えることが読み取れない場合は、貸主の承諾書を用意します。
契約書に「宅地建物取引業」と書かなければ申請できませんか?
全国一律に、その文字がなければ申請できないという様式ではありません。ただし、宅建業の利用が契約上認められていることを確認できなければ、具体的な承諾を求められることがあります。
代表者個人が所有する部屋を会社の事務所にできますか?
使用できますが、法人申請では自己所有として扱いません。代表者と法人の間の賃貸借又は使用貸借として、契約書や使用承諾書を用意します。
会社設立前に、代表者個人で契約してもよいですか?
契約後に法人名義へ変更でき、法人が宅建業の事務所として使うことを貸主が承諾するなら進められます。契約前に、法人への名義変更方法と必要書類を確認しておく方が安全です。
転貸借でも宅建業免許を申請できますか?
転貸借そのものが一律に不可ではありません。申請者の転貸借契約だけでなく、建物所有者が転貸と宅建業利用を了承していることまで確認できる資料が必要です。
東京都では賃貸借契約書を提出しないのですか?
通常の免許申請では権原書面を作成し、使用関係に疑義がある場合やレンタルオフィス等で契約書等を追加提出します。保証協会への入会や事務所確認でも求められることがあるため、契約書を用意しなくてよいという意味ではありません。
レンタルオフィスは24時間365日利用できなければいけませんか?
24時間365日という文言は、法律上の一律の条件ではありません。届け出る営業時間中に専用区画を継続して使用できることが必要です。夜間や休日に入館できない契約は、営業時間との関係を含めて申請先へ確認し、利用時間の証明を求められた場合は実際の契約内容に沿って運営会社に証明してもらいます。
レンタルオフィスの利用証明書には何を書いてもらいますか?
建物名・所在地・階・区画番号、申請者名、契約期間、専用区画を独占して使えることを基本に、宅建業への使用、来客対応、商号表示、電話、ポスト、利用可能時間も確認します。必要な項目と押印の有無は、申請先と保証協会の取扱いに合わせます。
使用承諾書だけで申請できますか?
契約書がない使用貸借では、所有者の使用承諾書を使うことがあります。転貸借やレンタルオフィスなど使用関係が複雑な場合は、承諾書だけでなく、所有者までの契約関係や専用区画が分かる資料も必要です。