重要事項説明書の標題部|04

買主が宅建業者の場合、重要事項説明書はどうする?説明省略と特約の書き方

買主が宅建業者の場合、重説はどうすればいいですか?

売買契約の買主は宅建業免許を持つ不動産会社です。この場合も、通常どおり重要事項説明書を作成して宅建士が説明するのでしょうか。それとも、省略できる手続があるのでしょうか。

説明は省略できますが、35条書面の交付は省略できません

買主そのものが宅地建物取引業者であれば、宅建業法35条6項により、宅建士による口頭説明と宅建士証の提示は省略できます。しかし、重要事項を記載した35条書面は契約成立前に交付し、同条7項により宅建士が記名しなければなりません。

買主となる主体の宅建業免許を確認し、免許があれば契約前の35条書面交付と宅建士の記名を行い、売主も宅建業者なら78条2項を別に確認する判断フロー
35条6項は重要事項説明の手続を簡素化する規定です。売主も宅建業者である場合に契約条件へ影響する78条2項とは、分けて判定します。

特記事項へ35条6項の適用を書かなければ省略できない、という規定ではありません。ただし、買主の免許、説明を省略した根拠、35条書面を契約前に交付した日を残すと、後から実施状況を確認できます。一般用書式の受領文に、実際には行っていない「宅建士証の提示を受けた」「説明を受けた」という趣旨の文言を残さないことも重要です。

買主が宅建業者のとき重説をどうするかの診断フローチャート

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買主が不動産会社の売買で重説を作る
確認1契約書の買主は、宅建業者ですか?
  • 確認2売主は宅建業者ですか、一般の方ですか?
    • 結論35条書面を交付し、契約条項を確認
    • 結論媒介業者が35条書面を交付
    • 結論一般の売主へ供託所等を説明
  • 結論通常どおり説明して交付
  1. 確認1契約書の買主は、宅建業者ですか?
    結論通常どおり説明して交付
  2. 確認2売主は宅建業者ですか、一般の方ですか?
    結論35条書面を交付し、契約条項を確認
    結論媒介業者が35条書面を交付
    結論一般の売主へ供託所等を説明
  • 通常どおり説明して交付

    親会社や代表者個人に免許や宅建士資格があっても、説明は省略できません。宅建士が宅建士証を提示して説明します。

  • 35条書面を交付し、契約条項を確認

    売主業者と媒介業者は、宅建士が記名した35条書面を契約前に買主へ交付します。業者間の売買では手付や契約不適合責任の制限が適用されないので(78条2項)、契約不適合責任・違約金・手付は売買契約の条項で具体的に決めます。

  • 媒介業者が35条書面を交付

    媒介業者は、宅建士が記名した35条書面を契約前に買主へ交付します。供託所等は、媒介業者と買主業者がそれぞれ一般の売主へ説明します(35条の2)。

  • 一般の売主へ供託所等を説明

    この場合、買主業者が35条書面を作って交付する義務はありません。一般の売主への供託所等の説明は必要です(35条の2)。

買主が宅建業者のときに省略できるのは、口頭の説明と宅建士証の提示です。35条書面に書く事項と物件調査は、一般の買主のときと同じです。

買主が宅建業者である売買の重要事項説明の判断です。宅地建物取引業法35条・35条の2・78条に基づき当事務所作成。

説明を省略する前に確認する5点

  • 契約上の買主そのものが宅建業者か買主の担当者や代表者が宅建士であるかではありません。契約書の買主欄に記載される法人・個人事業者そのものが宅建業免許を受けているかを確認します。
  • 免許が契約時点で有効か免許行政庁、免許証番号、商号又は名称、主たる事務所、有効期間を免許証と公開情報で照合します。関連会社や旧商号の免許を流用しません。
  • 誰が35条書面の交付義務を負うか売主が宅建業者なら売主業者、媒介業者が関与するならその媒介業者が義務主体になります。買主側の不動産会社が自分自身へ重説をするという整理ではありません。
  • 利用書式の受領文が通常取引用のままか宅建士証の提示と口頭説明を受けたことまで確認する文章になっている場合は、実際の手続に合う受領文・特記事項へ直します。
  • 売主も宅建業者か売主も宅建業者なら、35条6項とは別に78条2項の業者間取引となります。売買契約の契約不適合責任、違約金、手付等を個別に確認します。

免許確認から書面交付までの順番

  • 売買契約書案の買主を確定する

    申込者、買主候補、関連会社をまとめず、最終的に契約当事者となる法人・個人事業者を確定します。法人番号も併用すると同名会社の取り違えを防げます。

  • 買主の宅建業免許を照合する

    免許証の写しを受領し、国土交通省の宅地建物取引業者検索等で照合します。不一致や更新直後の場合は、最新の免許証・変更届控え等を取り直します。

  • 重要事項の調査と35条書面の作成を完了する

    説明を省略できても、記載事項を減らせる規定ではありません。登記、法令制限、インフラ、契約条件など、取引に必要な調査と記載を通常どおり行います。

  • 義務を負う業者と宅建士の記名をそろえる

    売主宅建業者や媒介業者など、今回の35条義務を負う業者を確定し、35条7項に従って宅建士が書面へ記名します。

  • 受領文・特記事項を実際の手続に合わせる

    説明や宅建士証提示をしていないのに、したと読める受領文を残しません。買主免許、35条6項の適用、交付日を確認できる形にします。

  • 契約成立前に交付し、証拠を保存する

    紙なら受領日が分かる控え、電子提供なら承諾と送信・閲覧記録を保存します。売買契約書の調印と同時でも、書面交付が契約成立後にならないよう順序を管理します。

重説の特記事項と売買契約の特約は分けて書きます

確認項目買主が一般買主が宅建業者
35条書面契約成立前に交付契約成立前に交付
宅建士の記名必要35条7項により必要
口頭説明必要35条6項により省略可
宅建士証の提示必要35条6項により省略可
重説の特記事項に残す参考文例

買主は宅地建物取引業者(免許証番号:〇〇)である。本件の重要事項説明義務を負う宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法第35条第6項に基づき、宅地建物取引士による説明及び宅地建物取引士証の提示を行わず、同条第7項により宅地建物取引士が記名した同条書面を、契約締結前の〇年〇月〇日に買主へ交付した。

この文例は、説明を受ける権利を買主が放棄する特約ではなく、法定の取扱いと実際の交付を記録するものです。関与業者が複数いる場合、電子提供をする場合、説明を任意に実施した場合は、事実に合わせて書き換えます。

売主が一般、媒介業者がいる

媒介業者は買主宅建業者へ35条書面を契約前に交付し、宅建士が記名します。説明と宅建士証提示は省略できます。これとは反対向きに、媒介業者と買主宅建業者は、35条の2に基づき一般売主へ各自の供託所等を説明します。

売主が一般、媒介業者がいない

買主宅建業者が自分自身へ重説を交付・説明する義務はありません。ただし、買主宅建業者から一般売主への供託所等に関する説明は別に必要です。

売主・買主ともに宅建業者

売主宅建業者と関与する媒介業者は、買主へ35条書面を契約前に交付し、宅建士が記名します。さらに78条2項により、自ら売主に関する規制の適用除外を売買契約側で確認します。

買主の親会社だけが宅建業者

契約上の買主が宅建業者でなければ35条6項を使いません。親会社、子会社、関連会社、代表者個人の免許や宅建士資格で置き換えることはできません。

35条書面の交付と、供託所等の説明は相手が反対です

一般売主・買主宅建業者の取引では、35条書面は買主宅建業者へ交付します。一方、供託所等は、買主宅建業者と媒介業者から一般売主へ説明します。実務では重要事項説明書の「その他の事項」等に設けられた供託所等の専用欄へ、買主宅建業者と媒介業者の情報を記載します。これは35条の重要事項説明とは別に、35条の2が定める手続です。

売主も宅建業者の場合、78条2項により、他人物売買の制限、クーリング・オフ、損害賠償額・違約金の上限、手付の額・性質、契約不適合責任の特約制限、手付金等の保全、割賦販売契約の解除制限、所有権留保等の禁止が適用除外になります。ただし、「8種制限を適用しない」と一括で書いても、実際の契約条件は決まりません。契約不適合責任をどう定めるか、違約金はいくらか、手付解除をどう扱うかなどを、売買契約の各条項へ具体的に反映します。

東京23区・埼玉県では買主の免許をここで確認します

35条6項と78条2項は全国共通の宅建業法です。東京23区と埼玉県で違う記載ルールを作るのではなく、買主となる主体の免許情報を、免許行政庁と最新資料へさかのぼって確認します。

最初の照合

国土交通省の宅地建物取引業者検索で、免許証番号、商号又は名称、代表者、主たる事務所を確認します。検索結果だけでなく、買主から受領した最新の免許証とも突き合わせます。

東京都知事免許の買主

東京都の宅地建物取引業者免許情報提供サービスも併用できます。買主の本店が23区内かではなく、実際の免許行政庁と免許証番号で確認します。

埼玉県知事免許の買主

国土交通省検索で照合し、不一致や変更履歴を確認する必要がある場合は、埼玉県庁第2庁舎1階の建築安全課で名簿等を閲覧できます。2026年4月1日からは対象を限って電子閲覧も案内されています。

更新直後・商号変更直後

公開検索には反映までの時間差があり得ます。旧商号や旧本店のまま処理せず、最新免許証、変更届控え、法人登記事項証明書を追加で受領します。

確認した公式・業界団体資料:宅地建物取引業法35条・35条の2・78条(e-Gov)宅地建物取引業者検索(国土交通省)宅地建物取引業者名簿等の閲覧(埼玉県)宅地建物取引業者免許情報提供サービス(東京都)2017年改正追補(全宅連)

「重説不要」ではなく、残る作業を先に書き出します

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

買主が宅建業者だと分かったとき、最初に「重説なし」と処理すると、35条書面の作成、宅建士の記名、契約前交付まで落としやすくなります。実務では、通常手続から省略できる二つだけを差し引く方が安全です。省略できるのは口頭説明と宅建士証提示で、物件調査と書面作成が省けるわけではありません。

特記事項は、法定要件を増やすためではなく、適用関係と実施記録を後から再現するために使います。買主の免許証写し、公開検索の確認日、35条書面の版、宅建士の記名、交付日時、受領記録を一つの案件ファイルで保存します。

そして売主も宅建業者であれば、重説の省略記録だけで終わりません。78条2項で法律上の制限が外れた後、当事者が何に合意したかは売買契約書に残ります。一般消費者向けの条項を機械的に削るのでも、8種規制という一言で済ませるのでもなく、実際のリスク配分を条項ごとに確認します。

買主の免許確認から業者間取引の特約整理まで

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

買主が宅建業者である場合も、義務主体、35条書面、受領文、売買契約との整合まで確認します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

買主が宅建業者の場合によくある質問

買主が宅建業者なら、重要事項説明書を作らなくてよいですか?

いいえ。売主宅建業者や媒介業者など35条の義務を負う業者は、重要事項を記載した35条書面を作成し、宅建士が記名したうえで契約成立前に買主へ交付します。省略できるのは口頭説明と宅建士証の提示です。

買主の代表者が宅建士なら、説明を省略できますか?

それだけでは省略できません。契約上の買主である法人・個人事業者そのものが宅地建物取引業免許を受けた宅建業者である必要があります。

買主が宅建業者であることは、特約欄へ必ず書きますか?

35条6項の法定要件として特約記載が必須とされているわけではありません。ただし、買主免許、適用条文、35条書面の交付日を残し、通常用の受領文を実際の手続へ合わせる実務には意味があります。

売主も買主も宅建業者なら、35条書面も37条書面も不要ですか?

不要にはなりません。35条6項は説明等を簡素化する規定で、35条書面の契約前交付と宅建士の記名は残ります。78条2項も35条・37条を適用除外にしていません。

業者間取引なら、契約書に『8種制限を適用しない』とだけ書けばよいですか?

それだけでは、契約不適合責任、違約金、手付解除などの具体的な合意内容が決まりません。利用書式の本文と特約が矛盾しないよう、実際の条件を条項ごとに定めます。

売主が一般、買主が宅建業者で、仲介会社がいない場合も重説が必要ですか?

買主宅建業者が自分自身へ35条書面を交付・説明する義務はありません。一方、買主宅建業者から一般売主への供託所等に関する説明は35条の2の別の手続として必要です。

この記事は2026年8月30日時点の宅地建物取引業法と国土交通省・業界団体・東京都・埼玉県の公開資料に基づきます。参考文例は当サイトが作成した一般例であり、実際の当事者、取引態様、書面交付方法、利用書式に合わせて調整してください。