重要事項説明書の標題部|06

重要事項説明書の買主・売主欄は誰が署名する?交付・説明・受領の残し方

買主・売主の欄には、登記名義人を書いて署名してもらえばよいですか?

重要事項説明書の1ページ目には、買主・売主の表示と、説明を受けて書面を受領した旨の住所・氏名欄があります。登記名義人と売主が違う場合や、相続・住所変更の登記が未了の場合は、誰を記載し、誰から署名を受ければよいのでしょうか。

契約当事者、買主への交付・説明、任意の署名確認を分けます

上段の買主・売主欄には、実際の売買契約の当事者を表示します。売買の35条書面は買主へ契約前に交付し、宅地建物取引士が説明します。買主の署名・押印は35条の法定要件ではなく、交付・説明・受領の記録として利用書式が設けているものです。

重要事項説明書の上段にある買主・売主の当事者表示、買主への35条書面の交付・説明、下段にある買主の受領記録と売主の任意確認、登記名義人と売主が違う場合の別調査を分けた図
ユーザー提供の全日書式を基に、欄の役割だけを抽象化した図です。売主の署名は書式上の内容確認であり、登記名義人との不一致や売却権限を解消する手続ではありません。

売主は、売買における35条の法定説明・交付先ではありません。書式に売主の署名欄がある場合は、物件の客観的状況や取引条件を当事者間で共有するための任意の内容確認として扱います。売主署名がなければ常に35条違反になる、という関係ではありません。

一方、登記名義人と売主が違う場合は、署名欄の問題ではありません。相続、住所・氏名の変更、代理、他人物売買、第三者のためにする契約のどれに当たるかを分け、誰が契約当事者で、誰が所有権を移転できるのかを資料から確認します。

買主・売主欄に誰を書き誰が署名するかの診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

重説の買主・売主欄を書き、署名をもらう
確認1登記名義人と売主は、同じ人ですか?
  • 確認2署名は、買主・売主の本人がしますか?
    • 確認3買主は、一般の方ですか、宅建業者ですか?
      • 結論買主の署名は受領の記録、売主は任意
      • 結論買主全員を書き、全員の記録を残す
      • 結論署名欄の文言を「交付を受けた」に
    • 結論当事者欄は本人、代理人は委任状で確認
  • 結論署名の前に、違う理由を調べる
  1. 確認1登記名義人と売主は、同じ人ですか?
    結論署名の前に、違う理由を調べる
  2. 確認2署名は、買主・売主の本人がしますか?
    結論当事者欄は本人、代理人は委任状で確認
  3. 確認3買主は、一般の方ですか、宅建業者ですか?
    結論買主の署名は受領の記録、売主は任意
    結論買主全員を書き、全員の記録を残す
    結論署名欄の文言を「交付を受けた」に
  • 署名の前に、違う理由を調べる

    買主・売主欄には実際の契約当事者を書きます。名義人と違う理由(相続登記や住所・氏名の変更登記がまだ、代理、他人物売買など)を確かめ、売却できる権限の資料がそろってから署名をもらいます。

  • 当事者欄は本人、代理人は委任状で確認

    当事者欄には本人の名前を書き、代理人の書き方(代理人欄や別紙)は使う書式に合わせます。委任状で委任された内容を確認し、本人と代理人の本人確認、本人の意思の確認も記録に残します。

  • 買主の署名は受領の記録、売主は任意

    買主・売主欄には売買契約書案と同じ名前を書き、買主には、書面を受け取って説明を受けたという署名をもらいます。売主の署名は任意です。

  • 買主全員を書き、全員の記録を残す

    共有で買う買主は全員書き、誰にいつ交付して説明したかが買主ごとに分かるように記録します。代表者1人が受け取る場合は、ほかの買主から委任を受けているかと、その範囲を確認します。

  • 署名欄の文言を「交付を受けた」に

    買主欄には法人の正式名称を書きます。買主が宅建業者の場合は説明と宅建士証の提示を省略できるので、署名欄の文言は「説明を受けた」から「交付を受けた」に直します。

宅建士の記名は、買主・売主の署名があっても必要です。

買主・売主欄と署名欄の扱いの判断です。宅地建物取引業法35条と国土交通省の重要事項説明の様式例に基づき当事務所作成。

署名をもらう前に確認する5点

  • 売買契約の買主・売主は誰か申込書と売買契約書案で、契約当事者の氏名・名称を確定します。登記名義人や、説明当日に出席する人を自動的に当事者欄へ入れません。
  • 買主は一人か、複数か共有取得等で買主が複数なら、35条書面の提供先・説明相手も複数であることを前提に、各買主の受領・説明記録を追跡できるようにします。
  • 買主は宅建業者か買主が宅建業者なら口頭説明と宅建士証の提示は省略できますが、35条書面の交付は残ります。「説明を受けた」とする確認文をそのまま使わず、実際の手続に合う欄・文言を確認します。
  • 本人以外が出席・署名するか代理人が出席するなら、本人名を消して代理人だけを当事者欄へ書くのではなく、委任状、本人確認、委任事項、本人意思を確認します。
  • 登記名義と売主が一致するか最新の登記と売主情報を照合します。不一致なら、署名へ進む前に相続、表示変更、代理、他人物売買等の分岐へ回します。

当事者の確定から受領記録を残すまでの順番

  • 契約書案から当事者を確定する

    個人は本人確認資料、法人は法人登記事項証明書・代表権資料と照合し、売買契約の買主・売主を確定します。支店担当者や代理人を契約当事者と混同しません。

  • 最新登記と売主を照合する

    土地・建物の登記名義人、住所・氏名、共有持分を確認します。異なる場合は理由と権限資料が揃うまで、通常案件と同じ署名処理へ進めません。

  • 35条書面の提供先と説明方法を決める

    一般の買主には契約成立前に書面を交付し、宅建士が説明します。紙、IT重説、電子書面のどれを使うか、買主が宅建業者か、複数当事者かを先に分けます。

  • 完成版と添付資料を交付する

    説明に使う確定版を添付資料と一緒に交付します。電子提供では、買主の承諾、出力可能性、改変防止、到達・表示の確認を残します。画面共有だけで事前交付を済ませたことにはなりません。

  • 実際に行った手続と同じ内容で確認を受ける

    一般の買主は交付・説明・受領の記録、買主宅建業者は35条書面の交付記録を残します。説明者、説明日時、交付版、訂正の有無を案件記録と一致させます。

  • 売主確認と権限資料を別に保存する

    売主から任意の内容確認を受けた場合も、本人確認、登記名義、委任状、相続資料等を別に保存します。署名があることだけで権利・権限を確認済みとは扱いません。

当事者ごとの書き方と確認記録

以下は欄の役割を説明する当サイト独自の整理です。氏名・住所の配置や「署名」「記名」の指定は、実際に利用する最新版の書式と社内手順へ合わせてください。

上段の当事者表示下段の受領・確認記録保存する資料
一般の個人間売買売買契約書案と同じ買主・売主を記載買主は交付・説明・受領の記録。売主欄は利用書式に基づく任意の内容確認本人確認記録、完成版35条書面、添付資料、説明日時・担当宅建士
買主が複数共有取得する買主全員を表示各買主の提供・説明・受領を確認できる形で残す各人の本人確認と交付・説明記録。代表者処理なら権限資料
買主が宅建業者買主法人の正式名称を表示「説明を受けた」ではなく、35条書面の交付を受けた事実と整合する欄・文言を使う宅建業免許の確認資料と35条書面の交付記録
代理人が出席本人を当事者として表示し、代理人の資格を別に示す代理人名だけの署名で本人の受領・理解を当然視しない委任状、本人・代理人の本人確認、委任事項、本人意思の確認記録
登記名義人と売主が異なる実際の契約当事者を表示。登記名義人への置換で済ませない署名を受ける前に不一致の原因と売却権限を調査最新登記と、相続・住所沿革・代理権・取得見込み等の類型別資料
買主が宅建業者の場合の確認文

買主宅建業者については、35条書面の交付は必要ですが、口頭説明と宅建士証の提示は省略できます。利用書式が「宅建士証の提示を受け、説明を受けた」と一体で印刷されている場合は、実際にしていない手続まで確認させず、書式の記載要領に従って交付記録へ整えます。

上段の買主・売主欄

契約当事者の表示です。登記名義人、代理人、出席者の氏名を機械的に入れる欄ではありません。売買契約書案と一致させます。

買主の署名・受領欄

35条書面を受け取り、説明を受けたことを後から確認するための証拠です。買主の署名・押印自体は宅建業法35条の法定要件ではありません。

売主の署名・確認欄

業界書式が、売主にも物件状況・取引条件を共有するために設けることがある任意欄です。35条の法定説明先を売主へ広げるものではありません。

宅建士の記名

買主・売主の署名とは別の法定事項です。35条書面には担当宅建士の氏名を記名します。2022年の改正後、宅建士の押印は不要です。

埼玉県・東京23区で署名ルールは変わりません

35条書面の交付・説明先、宅建士の記名、買主・売主の署名欄の位置づけは全国共通です。区役所・市役所へ署名方法を調べに行く項目ではなく、売買契約関係と自社が利用する書式から判定します。

最初に見る資料

売買契約書案、申込書、本人確認記録、法人登記事項証明書、代理権資料を照合します。買主が宅建業者なら、免許証番号と商号・本店も確認します。

登記名義との照合

登記情報提供サービス等で最新の所有者・住所・持分を確認します。登記情報は内容確認に使い、証明書が必要な場面では登記事項証明書を取得します。

東京23区の物件

不動産登記の申請・手続案内は、物件所在区を管轄する東京法務局本局・出張所へ接続します。23区すべてを本局が直接管轄するわけではありません。

埼玉県の物件

不動産登記の申請・手続案内は、物件所在市町村を管轄するさいたま地方法務局本局・支局・出張所へ接続します。県内すべてを本局で処理するわけではありません。

確認した公式・業界団体資料:宅地建物取引業法35条(e-Gov)民法537条等(e-Gov)重要事項説明の様式例(国土交通省)電子書面の提供FAQ(国土交通省)売主署名欄の取扱い(大阪宅建協会)相続登記の申請義務化Q&A(法務省)住所等変更登記の義務化(法務省)東京法務局の不動産登記管轄さいたま地方法務局の不動産登記管轄

登記名義人と売主が違うときは、理由ごとに記事を分けます

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

今回の欄で一番危ないのは、登記名義人と売主が違うことを見つけた後、どちらかの名前を署名欄へ入れて処理したことにしてしまうことです。署名は受領・確認の記録で、所有権や代理権の証明ではありません。

不一致の理由何が違うか別記事で確認する中心資料
相続登記未了登記名義人が死亡し、所有権を承継した相続人が未登記戸籍、遺言・遺産分割、相続人と持分、相続登記から売却登記までの順序
住所・氏名変更登記未了所有者本人は同じだが、登記上の住所・氏名が現在と異なる住所・氏名の沿革、同一人性、変更登記と所有権移転登記の段取り
代理契約当事者本人に代わり、代理人が意思表示・署名する委任状、本人・代理人確認、委任事項、代理権の有効性と本人意思
他人物売買売主が契約時点で目的物の所有権を持っていない売主の権利取得契約、取得条件、履行可能性、宅建業者が自ら売主となる場合の規制
第三者のためにする契約契約当事者とは別の第三者が給付を受け、直接所有権を取得する構造を含む契約当事者、受益者、登記権利者、代金・所有権移転の流れ、必要な特約
住所変更登記未了は「別の売主」とは限りません

登記上の旧住所と現在住所が違っても、同一人物と確認できるなら、所有者と売主が別人という話ではありません。もっとも、2026年4月1日から住所・氏名変更登記は変更日から2年以内の申請義務となりました。本人確認と同一人性の資料、所有権移転までの登記手順を別に整えます。

相続登記未了は、さらに別です。法務省は、相続人申告登記は権利関係を公示するものではなく、相続不動産を売却する場合には相続登記が必要と案内しています。亡くなった登記名義人の氏名を売主欄に書いたり、代表相続人一人の署名だけで済ませたりせず、相続関係と処分権限から確認します。

そのため、今後の制作台帳には「相続登記未了」「住所・氏名変更登記未了」「第三者のためにする契約」を独立記事として追加しました。記事06では、署名へ進む前にどの分岐へ回すかまでを扱います。

当事者・登記・交付記録まで重説全体を整えたいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

売買契約の当事者と最新登記を照合し、交付・説明・受領の記録が実際の手続と一致するように重説ドラフトを整えます。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

買主・売主の署名欄でよくある質問

買主の署名や押印がないと、重要事項説明書は無効ですか?

買主の署名・押印は宅建業法35条が定める法定要件ではありません。ただし、交付・説明・受領の証拠がなくなるわけではないため、利用書式の確認欄、交付記録、説明日時・担当宅建士等を社内手順に沿って残します。

売主にも必ず署名・押印してもらいますか?

売主は売買の35条説明・交付の法定対象ではなく、売主署名は利用書式上の任意確認です。売主の了承を得て内容を共有する実務上の意味はありますが、法定義務であるかのように強要しません。

共有で買う場合、代表者一人の署名でよいですか?

買主が複数なら、各買主が35条書面の提供・説明対象となることを前提に記録します。代表者だけで受領・説明を処理する場合は、委任の有無と範囲、各本人の意思を個別に確認し、代理人欄や別紙の使い方を利用書式に合わせます。

買主が宅建業者でも「説明を受けた」と署名してもらいますか?

買主宅建業者には35条書面の交付が必要ですが、口頭説明と宅建士証提示は省略できます。実際に省略した手続まで「受けた」と確認させず、交付記録と書式の記載要領に合う処理をします。

登記名義人が亡くなった親のままでも、相続人が売主欄へ署名すればよいですか?

署名だけでは足りません。相続人の範囲、遺言・遺産分割、売却権限、相続登記から所有権移転登記までの順序を確認します。相続人申告登記は権利関係を公示する制度ではなく、売却には相続登記が必要です。

登記の旧住所と売主の現住所が違うと、他人物売買ですか?

同一人物と確認できるなら、通常は所有者と売主が別人という問題ではありません。住所の沿革資料で同一人性を確認し、2026年4月1日から義務化された住所等変更登記と所有権移転登記の段取りを整えます。

この記事は2026年8月31日時点の宅地建物取引業法、国土交通省・法務省・法務局・業界団体の公開資料と、ユーザー提供の全日売買用書式に基づきます。署名・確認欄の文言は利用書式で異なります。代理、相続、他人物売買等を含む個別案件は、契約当事者、権限、登記手順を別途確認してください。