重要事項説明書 B 売主・占有|19

登記名義人と売主が違うときの確認|真の権利者・本人確認・処分権限

登記名義人と売主の氏名・住所が違うとき、何を確認しますか?

売却を申し出た人は運転免許証と印鑑証明書を持っていますが、登記には別の住所・氏名が載っています。親族が資料を持参した場合や、法人・相続・信託が関係する場合、どこまで確認してから重要事項説明書を作ればよいでしょうか。

登記・本人・取得経緯・売却意思を別々に確認します

最新登記は出発点ですが、それだけで真の権利者や本人意思まで確定しません。登記名義、本人の同一性、所有権の取得経緯、処分権限、売却意思を別々の資料と直接確認で照合し、不一致理由を確定してから重説へ記載します。

最新登記、本人確認資料、所有権取得資料、本人への直接確認を照合し、住所変更・相続・代理・他人物売買等へ分ける流れ
資料を一つ足すのではなく、確認目的を分けます。表示の不一致、権利帰属、契約権限、本人意思のどこが未確認かを記録します。

犯罪収益移転防止法上の取引時確認は、顧客の本人特定事項、取引目的、法人の事業内容・実質的支配者等を確認する制度です。一方、売主が対象不動産を処分できるかという確認は、登記・取得経緯・相続・代理権等を調べる作業です。片方を行っても、もう片方が自動的に完了するわけではありません。

法人の「実質的支配者」はマネー・ローンダリング対策上の法人支配者を指し、対象不動産の「真の権利者」とは別概念です。用語を混ぜず、法人顧客の確認と不動産の所有・処分権限を別項目で管理します。

登記名義人と売主が違うときの診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

登記名義人と売主の住所・氏名が違う
確認1売却を申し出た人は、登記名義人本人ですか?
  • 結論現在の住所・氏名で書く
  • 結論相続人と登記の順序を書く
  • 確認2申し出た人は、名義人とどういう関係ですか?
    • 結論本人を売主、代理人を別に書く
    • 結論他人物売買として取得条件を書く
    • 結論売る権限のある人と許可を書く
  • 結論契約を見合わせて専門家へ確認
  1. 確認1売却を申し出た人は、登記名義人本人ですか?
    結論現在の住所・氏名で書く
    結論相続人と登記の順序を書く
    結論契約を見合わせて専門家へ確認
  2. 確認2申し出た人は、名義人とどういう関係ですか?
    結論本人を売主、代理人を別に書く
    結論他人物売買として取得条件を書く
    結論売る権限のある人と許可を書く
  • 現在の住所・氏名で書く

    売主欄には現在の住所・氏名を書き、決済までに住所・氏名の変更登記をすることを備考に書きます。登記の住所から現在の住所までが住民票や戸籍の附票でつながらないときは、司法書士に確認します。

  • 相続人と登記の順序を書く

    売主欄には、相続で取得する人を書きます。相続人は戸籍で、取得する人は遺言・遺産分割の書類で確認し、相続登記と買主への移転登記の順序を備考に書きます。

  • 本人を売主、代理人を別に書く

    売主は名義人本人で、代理人は資格を付けて別に書きます。委任状で見る権限の範囲と、本人の意思の確かめ方は、代理人が不動産売買契約をする場合で説明しています。

  • 他人物売買として取得条件を書く

    現所有者と売主が違う理由と、売主が取得する条件・期限を書きます。取得契約の確認と特約の書き方は、他人物売買の重要事項説明で説明しています。

  • 売る権限のある人と許可を書く

    重説には、売る権限のある人と、売るのに必要な許可・同意を書きます。信託の登記や後見の審判の内容は、司法書士・弁護士に確認します。

  • 契約を見合わせて専門家へ確認

    本人と直接会えない、取得したときの契約書などが出てこないというときは、契約を見合わせて弁護士・司法書士に確認します。

免許証や印鑑証明書がそろっていても、売却の意思は本人に直接確認し、売る権限は取得したときの契約書や相続の書類で確かめます。

登記名義人と売主が違うときの判断です。民法、宅地建物取引業法35条・47条、犯罪収益移転防止法に基づき当事務所作成。

不一致を見つけたら最初に分ける7項目

  • 同一人の旧住所・旧氏名か住民票、戸籍の附票、戸籍等で登記から現在までの同一性が連続して確認できるかを見ます。
  • 登記名義人が死亡しているか相続人、遺言、遺産分割、相続持分、相続登記の見込みを確認します。死亡者を契約当事者として表示しません。
  • 本人ではなく代理人が動いているか委任状の所持だけでなく、代理権の範囲と本人の売却意思を確認します。
  • 売主がまだ所有権を取得していないか先行取得契約、条件、代金、移転時期を確認し、他人物売買の分岐へ送ります。
  • 信託・成年後見等があるか登記上の受託者、後見登記、裁判所許可、利益相反等を確認し、本人だけで処分できると決めません。
  • 共有者・法人の権限が揃っているか共有者全員の意思、法人代表権、担当者への委任、社内承認を確認します。
  • なりすましを疑う事情がないか連絡先や振込先の急な変更、面談拒否、資料間の不一致等があれば通常案件と同じ速度で進めません。

登記名義の照合から重説記載までの順番

  • 最新登記と過去の登記原因を確認する

    物件全部の甲区・乙区を確認し、現在名義、住所氏名、持分、取得原因、信託・差押え等を記録します。

  • 来訪者と契約上の売主を分ける

    誰が相談し、誰が契約当事者となり、誰が署名・決済・登記手続きを行うかを別々にします。

  • 本人特定事項を現行方法で確認する

    個人・法人・代理人ごとに犯罪収益移転防止法と社内規程に沿って確認し、確認日時・方法・担当者を残します。

  • 所有権取得と処分権限を裏付ける

    登記識別情報等、取得契約、相続資料、法人・信託・後見資料から、今回の売却を有効に行えるか確認します。

  • 本人意思を直接確認する

    対象物件、売買価格、手取金、代理人、引渡条件を本人へ確認します。書類所持者の説明だけで済ませません。

  • 不一致理由と解消期限を記載する

    確認済みの事実だけを重説・契約書へ記載し、変更・相続・取得等の登記をいつまでに終えるか整合させます。

登記名義人と売主が違う理由ごとに処理します

確認する事実重説の基本整理次の確認先
同一人の住所・氏名変更住所・氏名の連続性、現在表示売主は現在表示。不一致理由と変更登記予定を記載登記担当司法書士、住所沿革資料
相続登記未了死亡、相続人、遺言・遺産分割、取得者被相続人を売主とせず、相続と移転登記の順序を説明司法書士・弁護士、戸籍・相続資料
任意代理本人、代理人、委任状、権限範囲、本人意思本人を売主、代理人を資格付きで別記本人への直接確認、代理記事
他人物売買現所有者、先行取得契約、取得条件・期限現所有者と売主が異なる理由、取得・移転条件を説明所有者、司法書士・弁護士、他人物売買記事
信託・成年後見等処分権限者、登記・審判、必要許可・同意名義だけから売主を決めず、権限者と条件を個別記載司法書士・弁護士、家庭裁判所等
理由を裏付けられない資料不一致、本人連絡、権利証拠『問題なし』と書かず、完成扱いにしない取引停止を含め専門家へ照会

架空例:登記には『例示市青葉一丁目5番6号 山田花子』、本人確認資料には『例示市中央二丁目7番8号 山田花子』とある。住民票・戸籍の附票で住所沿革が連続し同一人と確認できた場合は、売主欄へ現在住所を記載し、備考に住所変更登記未了と決済までの変更登記予定を記載します。沿革がつながらない場合は、この例を使いません。

東京23区・埼玉県では物件所在地ごとに登記を確認します

本人・権利者・処分権限を確認する法的枠組みは共通です。東京都23区の物件は東京法務局、埼玉県の物件はさいたま地方法務局の管轄一覧で所在を確認します。通常調査は登記情報提供サービスを第一選択とし、証明書が必要な提出・登記場面では登記事項証明書を使います。

東京都23区

不動産の所在区ごとに東京法務局本局・出張所の管轄を確認します。法人本店が別地域でも、不動産登記と法人登記を分けて取得します。

埼玉県

所在市町村ごとにさいたま地方法務局本局・支局・出張所を確認します。私道持分など所在が異なる不動産も漏らしません。

本人確認ルール

犯罪収益移転防止法の確認方法は全国共通です。2027年4月施行予定の変更が公表されているため、契約時点の国交省・警察庁案内を再確認します。

資料が多いことより、確認目的が分かれていることが重要です

資料・確認主に分かることそれだけでは分からないこと
最新登記登記名義、持分、登記された負担来訪者が本人か、実体上の権利帰属、現在の意思
本人確認書類氏名・住所・生年月日等対象不動産の所有権、契約権限、売却意思
登記識別情報・印鑑証明登記手続や本人確認の重要資料所持経緯の正当性、委任状の真正、本人意思の全て
本人への直接確認売却意思、価格・条件、代理人の認識登記・相続・信託等の法的処理が完了すること
疑義が残るとき

資料間の住所・氏名・連絡先・振込先がつながらない、本人との直接確認を拒まれる、権利取得資料が出ない場合は、重説の文言でリスクを埋めず、契約を止めて専門家へ確認します。

主な公式資料:宅地建物取引業法民法犯罪収益移転防止法国土交通省の本人確認・マネロン対策警察庁JAFICの法令・改正資料登記情報提供サービス東京法務局の管轄一覧さいたま地方法務局の管轄一覧

売主と登記名義人の関係が一資料で確定しないときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

登記名義、契約当事者、本人確認、取得経緯、代理・相続等を整理し、未確認事項を分けた重説ドラフトを作成します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

真の権利者と本人確認でよくある質問

登記名義人なら、必ず真の所有者と考えてよいですか?

登記は重要な出発点ですが、本人の同一性、取得経緯、相続・信託・代理等に疑義があれば追加確認が必要です。登記だけで調査を終了しません。

印鑑証明書と実印があれば本人確認は終わりますか?

終わりません。書類の真正・有効性、本人の同一性と意思、対象不動産を処分する権限を目的別に確認します。

相続登記未了なら他人物売買ですか?

相続人は相続により権利を取得し得るため、未登記だけで一律に他人物売買と決めません。相続人・遺産分割・持分と登記順序を確認します。

法人の実質的支配者が不動産の真の権利者ですか?

別概念です。実質的支配者は犯罪収益移転防止法上の法人支配者であり、不動産の登記名義・処分権限とは分けて確認します。

本人が海外にいる場合は代理人の委任状だけで足りますか?

足りるとは限りません。本人確認、署名・証明の真正、準拠法、権限範囲、本人意思を確認し、登記担当司法書士等と必要書類を決めます。

この記事は2026年9月8日時点の民法、宅地建物取引業法、不動産登記法、犯罪収益移転防止法および国土交通省・警察庁・法務局の公開資料を確認して作成しています。犯罪収益移転防止法上の本人確認方法は2027年4月施行予定の改正が案内されているため、実際の取引時点の現行ルールを再確認してください。権利帰属・本人意思に疑義が残る案件は弁護士・司法書士等へ確認してください。