重要事項説明書 B 売主・占有|21

他人物売買の重要事項説明|売主が登記名義人でない場合の調査と書き方

登記名義人ではない売主と、売買契約を結んでよいですか?

転売業者から『現在の所有者との仕入契約は済んでおり、買主への決済日に同時に所有権を移す』と言われました。登記はまだ現在所有者のままです。他人物売買として、何を確認し、重要事項説明書と売買契約書へどう書けばよいでしょうか。

現在の所有者から買主へ権利が移る道筋を確認して記載します

民法は、他人の権利を売買の目的とすることを前提に、売主へその権利を取得して買主へ移転する義務を負わせています。重説では、現所有者、売主の取得根拠、取得条件・期限、買主への移転方法を明らかにし、取得できない場合の契約処理を売買契約書と一致させます。

現在所有者から売主、売主から買主へ所有権を移す他人物売買の確認経路と、先行取得契約の条件を示す図
登記名義人と売主の間に先行取得の根拠があるか、その効力・期限・解除条件まで確認します。売主が宅建業者なら、宅建業法33条の2の制限を別に判定します。

他人物売買だから直ちに無効という整理ではありません。ただし、売主が最終的に権利を取得できなければ、買主への移転義務を履行できません。『取得予定』という説明だけでなく、先行取得契約が成立しているか、条件付きでないか、代金・解除・移転時期はどうかを資料で確認します。

売主が宅建業者で自ら売主となる場合は、宅建業法33条の2の確認が必要です。同条は原則として自己の所有に属しない宅地・建物の売買契約を制限し、取得契約を締結している場合等の例外を定めています。ただし、取得契約でも効力発生が条件にかかるものは例外から外れます。買主も宅建業者である取引には同法78条2項の適用関係があります。

他人物売買の確認と書き方の診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

売主が登記名義人でない物件を売買する
確認1売主は、登記名義人とどういう関係ですか?
  • 確認2売主と買主は、宅建業者ですか?
    • 結論取得の根拠と期限を重説に書く
    • 確認3売主は、現所有者と取得契約を結んでいますか?
      • 結論取得契約を根拠に重説へ書く
      • 結論33条の2の例外に当たらない
      • 結論33条の2で原則として制限
    • 結論78条2項の適用関係を確認
  • 結論相続人・遺産分割を確認
  1. 確認1売主は、登記名義人とどういう関係ですか?
    結論相続人・遺産分割を確認
  2. 確認2売主と買主は、宅建業者ですか?
    結論取得の根拠と期限を重説に書く
    結論78条2項の適用関係を確認
  3. 確認3売主は、現所有者と取得契約を結んでいますか?
    結論取得契約を根拠に重説へ書く
    結論33条の2の例外に当たらない
    結論33条の2で原則として制限
  • 取得の根拠と期限を重説に書く

    現所有者、売主が取得する根拠、取得の条件・期限、買主への移転方法を重説に書きます。取得できない場合の解除と返金は、売買契約書の特約に書きます。

  • 取得契約を根拠に重説へ書く

    現所有者と取得契約を結んでいれば、宅建業法33条の2の例外に当たります。重説には、取得契約の日付、取得・移転の予定日、取得できない場合の処理を書きます。

  • 33条の2の例外に当たらない

    取得契約の効力が条件付きなので、宅建業法33条の2の制限を受けます。条件の内容を取得契約書で確かめ、売買契約の前に弁護士等に相談します。

  • 33条の2で原則として制限

    取得契約がまだなら、買主との売買契約は宅建業法33条の2で原則として制限されます。取得契約が結ばれてから、その契約書で物件、当事者、代金、条件を確認します。

  • 78条2項の適用関係を確認

    買主も宅建業者のときは、宅建業法78条2項の適用関係を確認します。取得の根拠・期限と、取得できない場合の処理は、重説と特約に書きます。

  • 相続人・遺産分割を確認

    相続で取得した相続人が売主なら、相続登記がまだでも他人物売買ではありません。だれが相続したのかと登記の順序の確認は、登記名義人と売主が違うときの確認で説明しています。

現所有者から売主、売主から買主への登記の原因と申請の方法は、登記担当の司法書士に確認します。

売主が登記名義人でない売買の判断です。民法561条、宅地建物取引業法33条の2・78条に基づき当事務所作成。

他人物売買と分かったら最初に確認する8点

  • 現在の登記名義人と権利内容対象不動産全部の最新登記を確認し、現所有者、持分、差押え、抵当権、仮登記等を把握します。
  • 売主と現所有者の関係売買、交換、競売、相続等、売主が取得する根拠を特定し、代理や単なる媒介と混同しません。
  • 先行取得契約の成立締結済み契約書、対象物件、当事者、代金、署名、手付金等を確認し、口頭の予定だけで進めません。
  • 停止条件・解除条件等契約の効力や履行が融資、転売先確保、許認可等の条件にかかっていないか確認します。
  • 取得代金と支払方法売主が現所有者へ支払える資金と、買主代金を用いる場合の同時決済の順序を確認します。
  • 取得・移転登記の順序中間省略登記を当然の前提にせず、登記原因と申請方法を登記担当司法書士へ確認します。
  • 占有・引渡しの権限現所有者、賃借人等の占有状況と、売主が買主へ現実に引き渡せる条件を確認します。
  • 取得不能時の契約処理解除、手付金等の返還、損害、期限、通知方法を売買契約書へ具体化します。

登記と先行取得契約を確認する順番

  • 売買対象全部の最新登記を取る

    土地、建物、私道持分等ごとに現所有者・持分・負担を一覧化します。

  • 先行取得契約の原本・全条項を確認する

    物件、当事者、価格、支払、条件、解除、所有権移転・引渡時期を確認します。

  • 売主属性と宅建業法の適用を判定する

    売主が宅建業者として自ら売主となるか、買主が宅建業者かを分け、33条の2と78条2項を確認します。

  • 資金・登記・引渡しの同時履行表を作る

    誰から誰へ、いつ、代金・書類・鍵・所有権が動くかを時系列で整理します。

  • 重説と特約へ事実・条件を記載する

    現在の登記、他人物であること、取得根拠、取得期限、移転方法、取得不能時の処理を相互に一致させます。

  • 契約前・決済前に登記と条件を再確認する

    先行契約の解除、新たな負担、現所有者の意思変更等がないかを確認します。

事実の説明と契約条件を分けて書きます

書く場所記載する内容避けたい書き方
重説の売主・登記関係現在の登記名義人と契約上の売主が異なる事実・理由『売主が取得予定』だけで根拠を示さない
重説の備考・その他先行取得契約、取得・移転予定日、登記と引渡しの方法未確認の将来事実を確定したように書く
売買契約の特約取得期限、取得不能時の解除・返金、費用・損害、通知方法『万一取得できない場合は協議』だけで終える
決済手順書現所有者への支払、権利移転、買主支払、鍵・書類の流れ中間省略登記が当然にできる前提で組む

架空例:本物件の登記名義人は山田花子であり、売主 青葉不動産株式会社は2026年8月20日付売買契約により本物件を取得する予定である。売主は2026年10月30日までに所有権を取得し、同日買主へ移転する。期限までに取得できない場合の解除・受領金返還等は売買契約書第○条による――というように、事実説明と契約上の処理を分けます。実案件では契約内容に合わせて作り直します。

相続登記未了は一律に他人物売買ではありません

登記名義人が死亡していても、相続により権利を取得した相続人が売主となる場面があります。相続人・遺産分割・持分・登記順序を確認し、単に登記が未了という理由だけで他人物売買に分類しません。

東京23区・埼玉県でも、最新登記と決済の再確認が中心です

他人物売買の民法・宅建業法上の基本は全国共通です。東京23区・埼玉県の案件でも、通常調査には登記情報提供サービスを用い、先行取得契約と対象不動産を照合します。決済直前には最新の登記状況を確認し、現所有者から売主、売主から買主への登記・代金・引渡しの順序を司法書士、金融機関、当事者と共有します。

『取得できるはず』を、重説の一文で埋めないことが重要です

資料確認できることさらに確認すること
最新登記現所有者、持分、登記された負担売主が取得できる契約・資金・条件
先行取得契約売主の取得根拠、期限、条件契約が存続し、現所有者が履行できるか
決済案代金・登記・書類の予定金融機関・司法書士・現所有者の了承
特約取得不能時の当事者間処理事実上返金・原状回復できる仕組み

主な公式資料:民法宅地建物取引業法国土交通省の宅建業法解釈・運用国土交通省の現行重説様式例民事執行法

登記名義人と売主が異なる取引では

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

最新登記、先行取得契約、売主属性、決済・移転手順を整理し、未確定事項を分けた重説ドラフトを作成します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

他人物売買でよくある質問

他人物売買の契約は無効ですか?

直ちに無効というわけではありません。民法は売主に他人の権利を取得して買主へ移転する義務を負わせています。ただし、取得できる根拠・条件と取得不能時の処理を確認する必要があります。

売主が宅建業者なら自由に他人物売買ができますか?

できません。宅建業者が自ら売主となる場合は宅建業法33条の2の制限と例外を確認します。買主も宅建業者の場合は78条2項の適用関係も確認します。

現所有者との売買契約書があれば十分ですか?

契約書の存在に加え、効力・条件・解除、代金支払、所有権移転、占有・引渡し、契約の存続を確認します。

競売の売却許可決定が出れば売主は所有者ですか?

民事執行法上、買受人が不動産を取得するのは代金を納付した時です。売却許可決定だけで所有権取得済みとは扱いません。

重説に書けば、取得できなくても契約上問題ありませんか?

説明しただけで売主の権利移転義務がなくなるわけではありません。取得不能時の解除・返金等を売買契約書へ具体化し、履行可能性そのものも確認します。

この記事は2026年9月8日時点の民法、宅地建物取引業法、民事執行法および国土交通省の公開資料を確認して作成しています。他人物売買の可否・契約条項・取得見込みは当事者の属性、先行取得契約の条件、目的物、決済方法等により変わります。宅建業者が自ら売主となる取引や取得不能時の処理は、契約前に弁護士等へ確認してください。