破産・競売・差押えがある不動産|重説前の調査と契約条件
登記に差押えがあっても、決済で抹消できれば契約できますか?
売主から任意売却の相談を受けました。登記には抵当権と差押えがあり、競売開始決定も届いているようです。さらに売主会社について破産の話もあります。誰と契約し、何を確認して重要事項説明書へ書けばよいでしょうか。
破産・差押え・競売を分け、処分権者と完了条件を確認します
三つは同じ状態ではありません。破産は誰が処分できるか、差押えはどの処分制限・抹消条件があるか、競売は裁判所手続がどこまで進んだかを分けます。最新登記、裁判所資料、債権者・管財人等の書面を確認し、期限までに必要な許可・解除・登記・引渡しが実行できる場合だけ契約条件へ落とします。
破産手続開始後、破産財団に属する財産の管理・処分権は破産管財人に専属します。不動産の任意売却等は裁判所許可が必要となる手続があるため、登記名義人である元の所有者だけと契約を進めません。管財人、裁判所許可、担保権者との調整、売却代金の取扱いを確認します。
差押えが登記された物件では、売主名義のままでも、差押え後の処分を差押債権者や競売の買受人へ対抗できない問題があります。抵当権だけでなく、強制競売の差押え、税・社会保険料等の滞納処分による差押えを区別し、解除・抹消に必要な金額、同意、期限、担当機関を確認します。
裁判所の競売で買い受ける場合、売却許可決定が確定しただけでは所有権を取得せず、代金納付時に取得します。物件明細書、現況調査報告書、評価書のいわゆる三点セット、最新登記、売却基準価額、占有関係を確認し、通常の仲介売買とは別の手続として扱います。
破産・競売・差押え物件の確認先の診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論執行裁判所と三点セットで確認
- 確認2売主の破産手続や、物件の差押えはありますか?
- 結論破産管財人との契約と裁判所の許可
- 結論債権者へ抹消に必要な金額と期限を確認
- 結論差押えをした役所へ納付額と解除を確認
- 確認1買主は、裁判所の競売で買いますか、売主側から買いますか?結論執行裁判所と三点セットで確認
- 確認2売主の破産手続や、物件の差押えはありますか?結論破産管財人との契約と裁判所の許可結論債権者へ抹消に必要な金額と期限を確認結論差押えをした役所へ納付額と解除を確認
- 執行裁判所と三点セットで確認
物件明細書・現況調査報告書・評価書と最新の登記で権利と占有の関係を確認し、競売がどの段階かは執行裁判所へ照会します。買受人が所有権を取得するのは、売却許可決定の時ではなく代金納付の時です。
- 破産管財人との契約と裁判所の許可
契約の相手は登記名義人ではなく破産管財人です。裁判所の許可が出ているか、担保権者との調整がついているかを管財人に確認し、重説には登記名義、破産手続、処分権者、許可の状況を書きます。
- 債権者へ抹消に必要な金額と期限を確認
差押債権者と担保権者から、差押えと担保権の抹消に必要な金額、入金の期限、書類、競売を取り下げる期限を書面でもらいます。重説には差押え・担保権の登記、抹消の予定、競売がどの段階かを書き、期限までにそろわないときの契約の解除と受領金の返還を売買契約書に定めます。
- 差押えをした役所へ納付額と解除を確認
登記の嘱託者と通知書から、差押えをした税務署、都税事務所、県税事務所、市区町村などの担当部署を特定し、いくら納付すれば差押えが解除され、抹消の登記が嘱託されるかを確認します。重説には、差押えをした役所、対象の税等、解除・抹消の予定を書きます。
破産と差押えの両方があるときは、破産管財人にも、差押えをした債権者や役所にも確認します。
異常登記・破産情報を見つけたら最初に確認する9点
- 対象不動産全部の最新登記土地・建物・私道持分等の甲区・乙区を確認し、受付日・順位番号・登記原因・債権者を記録します。
- 破産手続の有無と管財人開始決定、事件番号、裁判所、破産管財人、財団所属、売却方針と許可の要否・状況を確認します。
- 差押えの種類強制執行・担保権実行の競売か、国税・地方税・社会保険料等の滞納処分かを分けます。
- 競売事件の進行事件番号、開始決定、現況調査、期間入札、開札、売却許可、代金納付のどの段階か確認します。
- 抵当権・根抵当権等の残高登記の債権額だけで抹消必要額を決めず、債権者の最新回答を取得します。
- 解除・抹消の条件誰が、いくらの入金で、いつ書類を出し、どの登記を抹消するかを書面で確認します。
- 売買代金の配分・支払先売主へ直接全額を渡さず、管財人・担保権者・差押官署等への支払順序を決済表へ落とします。
- 占有者と明渡し所有者、賃借人、元所有者、第三者の占有と、競売・任意売却後の引渡方法を確認します。
- 契約・決済の中止条件許可、同意、解除、抹消、競売取下げ等が期限までにそろわない場合の処理を具体化します。
登記確認から契約・決済までの順番
- 最新登記を取得し、登記を時系列化する
所有権、抵当権、差押え、仮差押え、競売開始等を受付順に並べ、関係者を一覧にします。
- 手続の種類と確認相手を特定する
破産管財人、執行裁判所、担保権者、税務署・自治体等、権限を持つ相手へ分けます。
- 処分・解除・取下げ条件を文書化する
口頭の見込みでなく、許可、必要額、入金期限、抹消書類、競売取下げ等を確認します。
- 占有・引渡しを別に調査する
債務処理ができても空渡しできるとは限らないため、占有権原、明渡し、残置物、鍵を確認します。
- 重説と売買契約へ現在事実・条件を記載する
登記された負担、手続状況、抹消・許可等の期限、中止・解除・返金の処理を一致させます。
- 決済直前に登記と各同意を再確認する
新たな差押え・配当要求等がないか確認し、司法書士を含む全関係者で入出金と書類授受を最終確認します。
破産・差押え・競売では確認先と記載が異なります
| 主な確認先・資料 | 重説で示す事実 | 契約・手続の条件 | |
|---|---|---|---|
| 破産・管財物件 | 破産管財人、裁判所、開始決定・売却許可、担保権者 | 登記名義、破産手続、処分権者、許可等の状況 | 管財人との契約、裁判所許可、代金配分、抹消 |
| 強制競売・担保不動産競売 | 執行裁判所、事件記録、三点セット、最新登記 | 開始決定、進行段階、権利・占有、売却条件 | 入札・代金納付、登記、引渡命令等の手続 |
| 任意売却中の差押え | 差押債権者、担保権者、司法書士、競売事件 | 差押え・担保権と解除予定、競売進行 | 同時解除・抹消、取下げ期限、未了時の解除 |
| 滞納処分による差押え | 税務署、都税事務所、市区町村等の差押官署 | 差押官署、対象税等、解除・抹消予定 | 納付・配分、解除通知、登記嘱託の確認 |
架空例:対象不動産には2026年6月10日受付の差押登記および抵当権設定登記がある。売主は決済日に売買代金から差押債権者・抵当権者へ支払い、所有権移転登記と同時に各登記を抹消する予定である。必要同意・書類が決済日までにそろわない場合の解除・受領金返還は売買契約書第○条による――というように、登記上の事実と将来の解除条件を分けます。
媒介受託時の登記がきれいでも、その後に差押えや競売開始決定が入ることがあります。少なくとも調査開始、重要事項説明・契約前、決済直前で最新状態を確認し、受付中事件の有無も司法書士と共有します。
東京23区・埼玉県では裁判所・差押官署を事件ごとに特定します
破産・民事執行の法的枠組みは全国共通ですが、担当する裁判所・執行係や差押官署は物件・債務者・手続により異なります。東京23区の都税に関する差押え、埼玉県内市町村税・県税に関する差押えも、登記の嘱託者と通知書から担当部署を特定します。一般窓口へ抽象的に問い合わせず、事件番号・受付番号・不動産表示を準備して権限ある担当へ確認します。
通常の内容確認
登記情報提供サービスで全物件の最新登記情報を取り、異常登記の受付日・順位・債権者を一覧化します。
競売物件
BITや執行裁判所で公告・三点セット・入札期間等を確認します。公開資料が最新状況の全てとは限らないため裁判所へ照会します。
任意売却
裁判所競売とは別に、所有者・管財人等が関係債権者の調整を得て通常の売買形式で処分する取引です。『任意』でも差押解除等は必要です。
抹消予定ではなく、抹消できる条件を確認します
| 確認段階 | 最低限そろえるもの | 止める事情 |
|---|---|---|
| 調査開始 | 最新登記、事件・債権者一覧、占有状況 | 処分権者や事件番号が特定できない |
| 契約前 | 許可・同意の見込み、解除必要額、契約条件 | 口頭同意だけ、売買代金で不足、期限不明 |
| 決済準備 | 許可書、解除・抹消書類、入出金表、司法書士確認 | 一件でも同時処理できない負担が残る |
| 引渡し | 占有解消、鍵、残置物、競売手続の終了確認 | 所有権移転できても占有を渡せない |
主な公式資料:破産法民事執行法東京地方裁判所の不動産執行手続裁判所の不動産執行手続の概要不動産競売物件情報サイト BIT登記情報提供サービス
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。
登記、処分権者、裁判所・債権者等の確認先、抹消・引渡条件を整理し、未確定事項を明示した重説ドラフトを作成します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。破産・競売・差押え物件でよくある質問
登記名義が売主なら、破産後も売主本人と契約できますか?
破産財団に属する不動産の管理・処分権は破産管財人に専属します。管財人、裁判所許可等を確認し、名義だけで契約相手を決めません。
差押登記があっても所有権移転登記はできますか?
形式上の処分ができる場合でも、差押債権者や競売の買受人へ対抗できない問題があります。解除・抹消と競売取下げ等を決済条件にし、専門家へ確認します。
抵当権の登記額を払えば抹消できますか?
登記上の債権額と実際の抹消必要額は一致するとは限りません。遅延損害金・費用等を含む最新金額と抹消条件を債権者へ確認します。
競売の売却許可決定で買受人は所有者になりますか?
所有権取得は代金納付時です。売却許可決定と代金納付、登記、占有の引渡しを分けて確認します。
三点セットに書かれていれば追加調査は不要ですか?
不要ではありません。三点セットは重要資料ですが、基準時後の登記・占有・手続進行を含まない場合があります。最新登記と裁判所の現在状況を確認します。