重要事項説明書 法令上の制限|43

日影規制はどう調べる?対象建築物・測定面・規制時間と重説の書き方

都市計画図に「日影規制あり」とあれば、重説も「あり」でよいですか?

用途地域図に日影規制の表示があります。対象となる建物の高さ、測定面4m、4時間・2.5時間という数字も見かけますが、それぞれ何を意味するのでしょうか。土地だけの売買、既存建物がある売買、対象区域の境界付近では、どこまで調べて何を書けばよいのか分かりません。

対象区域・対象建築物・測定面・二つの規制時間を確認します

日影規制は、地方公共団体が条例で指定した区域内の一定規模以上の建築物について、冬至日に生じる日影時間を制限する制度です。重説では、対象区域、対象建築物、測定面、5m超10m以内と10m超の規制時間を確認し、根拠となる条例・指定図とともに整理します。

日影を測る場所は実際の地表とは限りません。平均地盤面から1.5m・4m・6.5m等の高さに水平な面を想定し、冬至日の真太陽時で午前8時から午後4時までに、その面が日影になる合計時間を判定します。測定面と規制時間は所在地の条例表から選びます。

日影規制は、道路・隣地・北側斜線や高度地区とは別の制限です。また、建築基準法の日影規制に適合しても、周辺に日影がまったく生じないことや、民事上の日照紛争が起こらないことまで保証する制度ではありません。

日影規制の欄に何を書くかの診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

都市計画図に日影規制の表示がある
確認1敷地は、日影規制の対象区域に入っていますか?
  • 確認2敷地に、日影規制の対象になる規模の建物はありますか?
    • 結論対象建築物・測定面・規制時間を記載
    • 結論既存建物は対象規模未満と記載
    • 確認3その建物の日影図付きの確認申請図書や、許可書はありますか?
      • 結論確認した図書と許可の内容を記載
      • 結論既存建物の適合性は未確認と記載
  • 結論区域ごとの規制値を記載
  • 結論区域外と記載し、周辺の区域を確認
  1. 確認1敷地は、日影規制の対象区域に入っていますか?
    結論区域ごとの規制値を記載
    結論区域外と記載し、周辺の区域を確認
  2. 確認2敷地に、日影規制の対象になる規模の建物はありますか?
    結論対象建築物・測定面・規制時間を記載
    結論既存建物は対象規模未満と記載
  3. 確認3その建物の日影図付きの確認申請図書や、許可書はありますか?
    結論確認した図書と許可の内容を記載
    結論既存建物の適合性は未確認と記載
  • 対象建築物・測定面・規制時間を記載

    対象になる建物の規模、測定面の高さ、5m超10m以内と10m超の規制時間を、条例表で確認して書きます。買主が建てる建物は、建築士が日影図を作って所管へ確認することも書きます。

  • 既存建物は対象規模未満と記載

    日影規制の対象区域であることと、既存建物は確認資料上、対象建築物の規模に当たらないことを書きます。増築や建替えで対象の規模になるときは、現行規定に合うかを建築士と所管行政庁へ確認します。

  • 確認した図書と許可の内容を記載

    区域・測定面・規制時間のほか、確認した図書と、許可があればその年月日・番号を書きます。増改築や建替えのときは、許可条件と現行規定を所管行政庁へ事前に確認します。

  • 既存建物の適合性は未確認と記載

    日影図と確認申請図書を確認できていないときは、区域・測定面・規制時間を書いたうえで、既存建物が適合しているかは未確認と書きます。確認先は所管行政庁と建築士です。

  • 区域ごとの規制値を記載

    敷地の過半が入る区域だけでなく、建物がある区域と日影が生じる区域の、それぞれの規制値を書きます。

  • 区域外と記載し、周辺の区域を確認

    敷地は対象区域外と書きます。高さ10mを超える建物が冬至日に対象区域内へ日影を生じさせる場合は法56条の2第4項の適用を受けるので、周辺の区域も確認して書きます。

測定面と規制時間は、所在地の条例表の該当する行で確認します。

日影規制の欄に何を書くかの判断です。建築基準法56条の2・別表第4に基づき当事務所作成。

5m線・10m線と測定面の意味を先に整理します

敷地境界から5mと10mの測定線、平均地盤面からの測定面、冬至日に建物が生じさせる日影を示した模式図
敷地境界から5m以内は法56条の2の時間規制を判定する範囲から外れ、5m超10m以内と10m超で許される日影時間が分かれます。図は仕組みを示す模式図で、数値は所在地の条例で確認します。
確認項目意味主な確認資料
対象区域建築基準法別表第4の地域・区域のうち、地方公共団体が条例で指定した区域。用途地域名だけでは確定しない。公式都市計画図、日影規制指定図、条例表、区域の除外・追加指定。
対象建築物低層住居系では軒高7m超または地階を除く3階以上、その他の対象地域では原則として高さ10m超。用途地域未指定区域は、条例で定められた区分を確認する。条例表、建物登記、確認申請図書、概要書、配置図、立面図。
測定面平均地盤面から一定の高さに想定する水平面。低層住居系は1.5m、中高層住居専用・住居・準住居・近隣商業・準工業地域は4mまたは6.5mを条例で指定。用途地域未指定区域は条例表の区分を確認。条例表、平均地盤面の算定資料、確認申請の日影図。
5m超10m以内敷地境界から5mを超え10m以内の範囲。条例で指定されたこの範囲の規制時間を確認する。敷地境界、日影図の5m・10m測定線、条例の規制値。
10m超敷地境界から10mを超える範囲。5m超10m以内より短い規制時間が通常指定される。敷地境界、日影図の10m測定線、条例の規制値。
  • 土地が区域内かを確認する用途地域、指定容積率、高度地区等によって規制値が分かれるため、敷地全体がどの区域に入るかを指定図で確認します。区域境界付近は地番図・測量図を示して窓口で確定します。
  • 建物が対象規模かを別に確認する区域内でも、通常の2階建戸建て等が対象建築物に当たらない場合があります。土地売買では、将来どの規模から規制を受けるかを説明します。
  • 区域外の建物から対象区域内に生じる日影も確認する対象区域外にある高さ10m超の建築物でも、冬至日に対象区域内へ日影を生じさせる場合は規制を受けます。敷地の用途地域だけで対象外と決めません。

指定図、建物資料、日影図を確認する調査手順

  • 対象筆・建築上の一敷地・敷地境界を特定する

    登記事項、公図、地積測量図、確定測量図、建築確認配置図をそろえます。5m・10mは売買対象筆の線ではなく、建築物の敷地境界線を基準にするため、一敷地の範囲を先に確認します。

  • 公式地図の指定と条例表を照合する

    Web地図で用途地域・容積率・高度地区を予備調査し、日影指定が条例表のどの行に該当するかまで確認します。東京都では同じ用途地域でも容積率・高度地区により規制値や測定面が変わる区域があります。

  • 対象建築物の条件を確認する

    低層住居系の軒高・階数、その他の対象区域の高さ、用途地域未指定区域の条例区分を確認します。既存建物は登記だけでなく確認申請図書・概要書・立面図・現況も照合します。

  • 測定面と二つの規制時間を条例表で確認し、記録する

    平均地盤面からの測定面、5m超10m以内、10m超の各規制時間を転記します。『4時間・2.5時間』のような数字だけを他地域から流用しません。

  • 区域外、区域境界をまたぐ敷地、複数棟を確認する

    区域外の高さ10m超の建物が対象区域に日影を生じさせる場合、異なる規制区域に日影が生じる場合、同一敷地内に複数棟がある場合を、それぞれ確認します。複数棟は一つの建築物として判定します。

  • 道路・川・高低差・許可・既存不適格を確認する

    道路・川等に接する敷地や著しい高低差には政令上の緩和があります。条例指定前から存在する建物、増改築、法56条の2ただし書許可は、許可書・確認図書・基準時の日影図を確認します。

  • 重説には指定と個別建物の確認結果を分けて書く

    法令上の区域・対象条件・測定面・規制時間と、既存建物の確認資料・許可・適合確認の有無を分けます。買主の計画建物については、建築士による日影図の作成と所管確認が必要であることを記載します。

窓口での質問例

『地番○番○ほか○筆を一つの建築敷地として、重要事項説明書作成のため確認します。この敷地の日影規制の対象区域、条例表の区分、対象建築物、測定面、5m超10m以内と10m超の規制時間を教えてください。区域境界にかかる部分、敷地外の別区域へ生じる日影、道路・川・高低差による扱いはありますか。既存建物について法56条の2ただし書許可、既存不適格、日影図を含む確認申請記録はありますか。回答の根拠となる指定図・条例・取扱いも教えてください』と、公図・測量図・配置図・立面図を示します。

日影規制の公式根拠:建築基準法56条の2・別表第4建築基準法施行令135条の12・135条の13埼玉県建築基準法施行条例と解説東京都日影条例

確認結果に応じた重説の書き分け

以下は書き分け方を示す架空例です。実際には使用する書式、所在地の条例表、所管回答、建築確認資料に合わせて調整します。

確認結果判断するときの注意独自の記載例
対象区域内・土地売買現時点の建物の有無ではなく、将来建築する建物が対象規模に達した場合の制限を説明。『本物件は日影規制対象区域です。対象建築物は高さ○m超(または軒高○m超・地階を除く○階以上)、測定面は平均地盤面から○m、規制時間は敷地境界から5m超10m以内○時間、10m超○時間です。』
区域内・既存建物は対象規模未満区域指定と、既存建物が現時点で対象規模に達しないことを分ける。『本物件は日影規制対象区域です。既存建物は確認資料上、対象建築物の規模に該当しません。増築・建替えにより対象規模となる場合は、現行規定による確認が必要です。』
区域外・対象区域へ日影を生じ得る敷地が区域外という理由だけで適用なしにしない。建物高さと影が及ぶ区域を確認。『敷地は日影規制対象区域外ですが、高さ10mを超える建築物が冬至日に隣接する対象区域内へ日影を生じさせる場合、法56条の2第4項の適用を受けます。計画時に日影図による確認が必要です。』
異なる規制区域へ日影が及ぶ敷地の過半の区域だけで決めず、建物がある各区域・日影を生じさせる各区域の規制を確認。『本物件は、日影時間の制限が異なる複数の区域にまたがります。建築計画は、建物が位置する各区域および日影を生じさせる各区域の規制値により確認を要します。』
既存建物に許可・既存不適格の可能性現況だけで違反と断定しない。基準時、許可、増改築、日影図を確認。『既存建物について、法56条の2ただし書許可(許可年月日・番号○○)を確認しています。増改築・建替えは当該許可条件および現行規定について所管行政庁への事前確認が必要です。』
資料不足で適合性未確認区域・規制値という一般条件と、既存建物の適合性を分けて留保。『本物件は日影規制対象区域です。既存建物の日影図・確認申請図書を確認できていないため、現況建物の適合性は未確認です。所管行政庁および建築士へ別途確認してください。』
「4時間・2.5時間」は、建物が4時間しか日影を作れないという意味ではありません

冬至日の指定時間帯に、所定の測定面上で、敷地境界から5m超10m以内の地点を4時間以上、10m超の地点を2.5時間以上日影にしないという意味です。敷地内や境界から5m以内を含む全ての影の継続時間を一律に制限する数字ではありません。

埼玉県と東京23区では、条例表と所在地の窓口を確認します

地域オンラインでの予備調査窓口で確定すること
埼玉県内市町村の公式都市計画図で用途地域・容積率・日影指定を確認し、県条例8条の2の表と照合します。越谷市のように独自指定がある市は市の条例も確認します。所在地・建物規模から建築行政の窓口を特定し、対象建築物、測定面、規制時間、区域境界、緩和・許可履歴を質問します。
さいたま市都市計画の調査案内から予備調査し、県条例の区分と照合します。既存建物の特例許可は市の認定・許可案内も確認します。都市計画の指定は北部・南部都市計画指導課に、個別建物の日影図・適用・許可履歴は所管の建築指導・建築行政担当に、それぞれ確認します。
東京23区東京都の都市計画情報サービスと各区の用途地域図で予備調査し、東京都日影条例の別表で用途地域・容積率・高度地区に対応する規制値と測定面を確認します。通常は物件所在地の区の都市計画・建築指導担当へ照会します。大規模建築物等では東京都と区の所管区分も確認します。

東京都では、同じ用途地域でも容積率・高度地区により、測定面4m・6.5mや規制値が分かれる区域があります。新宿区の用途地域等都市計画図のように日影規制を図示する区もありますが、地図の略号だけで判断せず、東京都条例の該当行まで確認します。足立区も都市計画図に日影規制を掲載しています。

埼玉県所管では、日影図の測定線の閉鎖方式・発散方式や、建設地の緯度の扱いについて建築安全センターの取扱いがあります。越谷建築安全センターのQ&Aの回答を他の特定行政庁へそのまま当てはめず、所在地の所管へ確認します。

埼玉県・東京23区の公式確認先:埼玉県|建築基準法施行条例埼玉県|建築行政の窓口さいたま市|都市計画の調査案内東京都|日影条例新宿区|日影規制の解説足立区|都市計画情報の提供

「日影規制あり」だけでは、建築への影響を説明できません

調査・記載の誤り起こり得る不利益防ぎ方
地図の「あり・なし」だけを転記対象建築物、測定面、規制時間が分からず、買主が予定する高さ・階数への影響を判断できない。条例表の該当行と対象条件を保存し、数値まで記載。
他地域の4時間・2.5時間を流用所在地に適用される規制値・測定面と異なり、建築計画の前提を誤る可能性。用途地域・容積率・高度地区を条例表で照合し、所管へ確認。
敷地が区域外なので適用なしと説明区域内へ影を生じさせる高さ10m超の計画を見落とし、設計変更・取引紛争につながる可能性。周辺の対象区域と、冬至日に日影が生じる範囲を確認。
敷地の過半が入る区域だけで判断異なる規制区域に適用される測定面や規制時間を誤る可能性。建物がある各区域と日影を生じさせる各区域を確認。
現況建物があるから適法・再建築可と説明指定変更、既存不適格、許可条件、複数棟、増改築履歴を見落とし、同じ規模で建て替えられない可能性。建築時期、確認図書、日影図、許可書、現行指定を分けて調査。
法適合なら日照問題はないと説明実際の日影や民事上の紛争可能性を過小に説明するおそれ。公法上の規制適合と、実際の日照・近隣関係は別であると説明。
  • 都市計画・条例の証拠用途地域、容積率、高度地区、日影規制指定図、条例表の該当行、指定日、地番位置図。
  • 敷地・地盤の証拠公図、確定測量図、建築上の敷地範囲、敷地境界、平均地盤面、高低差、道路・川等の位置。
  • 建物の証拠建物登記、確認申請図書、建築計画概要書、配置図、立面図、軒高・建物高さ、各階、増改築資料。
  • 日影・許可の証拠時刻日影図・等時間日影図、5m・10m測定線、真北・緯度、許可書、既存不適格の基準時資料。
  • 照会記録照会日、部署、担当者、提示した図面、条例表の区分、回答内容、未確認事項。
日影規制を条例表・建築資料から整理したいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 指定図・条例、建築資料、所管照会の整理から重要事項説明書ドラフト作成まで

標準的な料金は、1物件88,000円(税込)です。公的資料取得実費は別途です。

「あり・なし」だけでなく、対象建築物・測定面・規制時間・未確認事項まで整理します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

日影規制の調査でよくある質問

日影規制とは、隣地に生じる日影を一律に禁止する制度ですか?

影そのものを禁止する制度ではありません。冬至日の指定時間帯に、所定の測定面上で、敷地境界から5mを超える範囲が条例所定の時間以上日影にならないよう、建物の高さを制限する制度です。

日影規制区域内なら、すべての建物が対象ですか?

いいえ。低層住居系では軒の高さ7m超または地階を除く3階以上、その他の対象地域では原則として高さ10m超など、対象建築物の条件があります。用途地域未指定区域は、条例で定められた区分を確認します。

測定面4mとは、建物の高さを4m以下にする意味ですか?

違います。平均地盤面から4mの高さに水平な面を想定し、その面上で日影になる時間を測るという意味です。建物高さの上限を4mとする規定ではありません。

4時間・2.5時間はどこで使い分けますか?

一般に4時間は敷地境界から5mを超え10m以内、2.5時間は10mを超える範囲の限度です。ただし、適用される数字は所在地の条例表で確認します。

商業地域なら日影規制は関係ありませんか?

敷地が商業地域にあるという理由だけで、日影規制の適用なしとは判断できません。対象区域外にある高さ10m超の建築物が、冬至日に隣接する対象区域内へ日影を生じさせる場合は法56条の2第4項が適用されます。周辺区域も確認します。

既存建物がある土地なら、同じ高さで建て替えられますか?

一律にはいえません。建築後の条例指定・変更、既存不適格、ただし書許可、平均地盤面、複数棟、増改築履歴を確認し、現行規制で建替え可能か、建築士および所管行政庁に確認します。

日影規制に適合していれば、日照トラブルは起こりませんか?

適合は建築基準法上の一つの判断です。実際の日影、周辺建物の状況、民事上の受忍限度、自治体の中高層建築物紛争予防条例等は別に検討されます。法適合だけで日照紛争がないとは断定できません。

この記事は2026年9月22日時点の法令と自治体公式資料を確認して作成しています。記載例は説明用の架空例です。日影規制の区域・規制値・測定面、既存建物の適合性、建築計画の可否は、物件所在地の現行条例・指定図・建築確認資料を確認し、所管行政庁および建築士へ照会してください。