重要事項説明書 法令上の制限|42

高さ制限・斜線制限はどう調べる?道路・隣地・北側斜線と重説の書き方

用途地域が分かれば、建てられる高さも分かるのでしょうか?

都市計画図で用途地域と容積率は確認できました。重説の高さ制限欄は、その用途地域に対応する数字を書けばよいのでしょうか。道路斜線・隣地斜線・北側斜線の違いと、どこへ何を聞けば個別物件の答えが出るのか分かりません。

高さは一つの数字ではなく、適用される制限を一つずつ確認します

用途地域は入口ですが、それだけでは建てられる高さは決まりません。絶対高さ、道路斜線、隣地斜線、北側斜線のうち何が適用されるかを確認します。さらに、高度地区・地区計画・日影規制等の適用も確認します。該当する規定はすべて満たす必要があります。

斜線制限は、建物全体を一律○m以下にする制度ではありません。道路の反対側、隣地境界、真北側境界等を起点に、建築物の各部分が越えてはならない斜めの限界線をつくります。そのため、同じ用途地域でも敷地形状、道路幅員、建物の後退位置、方位、高低差によって建築可能な形が変わります。

なお、高度地区の斜線型制限は、建築基準法56条の北側斜線と似て見えても別の指定です。日影規制も別の判定を行います。名称と根拠を混ぜず、重説では確認した制度ごとに記載します。

適用される高さ制限・斜線制限の診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

用途地域と容積率は確認した
確認1対象地の用途地域は、どれですか?
  • 結論絶対高さ・道路斜線・北側斜線を記載
  • 確認2対象地は、日影規制の対象区域に入っていますか?
    • 結論道路斜線・隣地斜線を記載(北側は除外)
    • 結論道路斜線・隣地斜線・北側斜線を記載
  • 結論道路斜線・隣地斜線を記載
  • 結論道路斜線・隣地斜線を記載(北側は照会)
  1. 確認1対象地の用途地域は、どれですか?
    結論絶対高さ・道路斜線・北側斜線を記載
    結論道路斜線・隣地斜線を記載
    結論道路斜線・隣地斜線を記載(北側は照会)
  2. 確認2対象地は、日影規制の対象区域に入っていますか?
    結論道路斜線・隣地斜線を記載(北側は除外)
    結論道路斜線・隣地斜線・北側斜線を記載
  • 絶対高さ・道路斜線・北側斜線を記載

    都市計画で定めた10mまたは12mの高さの限度と、道路斜線・北側斜線の適用があることを書きます。法56条の隣地斜線は適用されません。

  • 道路斜線・隣地斜線を記載(北側は除外)

    道路斜線と隣地斜線の適用があると書きます。日影規制の対象区域なので、法56条の北側斜線は適用されません。

  • 道路斜線・隣地斜線・北側斜線を記載

    道路斜線・隣地斜線・北側斜線の適用があると書きます。北側斜線は真北側の境界から測るので、測量図か配置図で真北を確認します。

  • 道路斜線・隣地斜線を記載

    道路斜線と隣地斜線の適用があると書きます。北側斜線と法55条の絶対高さは、通常は適用されません。

  • 道路斜線・隣地斜線を記載(北側は照会)

    道路斜線と隣地斜線の勾配・立上り・適用距離を、現行法と自治体の資料で確認して書きます。北側斜線の適用があるかは、敷地図を示して建築指導担当へ照会します。

どの用途地域でも、高度地区や地区計画で決まっている高さ制限がないかを調べて書きます。境界・真北・地盤面が未確定なら、買主が建てる建物が適合するかは、確定測量と設計の後に確認すると書きます。

用途地域ごとに、どの高さ制限・斜線制限が適用されるかの判断です。建築基準法55条・56条・56条の2に基づき当事務所作成。

建物にかかる高さの限界を四つの方向から見ます

建物に対する絶対高さ、前面道路からの道路斜線、隣地境界からの隣地斜線、真北側境界からの北側斜線を示した模式図
絶対高さは水平の上限、各斜線は起点と方向を持つ斜めの上限です。図は制度の違いを示す模式図で、実際の勾配・立上り・適用距離は物件ごとに確認します。
制限何を守る制度か主な確認材料
絶対高さ建物を一定の高さ以下にする。低層住居系では都市計画で10mまたは12m。高度地区・地区計画等にも別の最高高さがあり得る。用途地域、都市計画の指定値、高度地区、地区計画、建築協定等。
道路斜線道路側の採光・通風等を確保するため、前面道路の反対側境界を基準に建物各部分の高さを制限する。用途地域、容積率、前面道路幅員・反対側境界、道路後退、建物の後退距離、複数道路、適用距離。
隣地斜線隣地側の採光・通風等を確保するため、隣地境界から一定の立上りと勾配で制限する。低層住居系には法56条の隣地斜線はない。用途地域、隣地境界、地盤面と高低差、公園・水面等、自治体の指定・緩和。
北側斜線北側隣地の日照等を確保するため、真北方向の境界を基準に制限する。低層住居系と一定の中高層住居系が中心。真北、用途地域、北側境界・北側道路、日影規制の有無、高度地区。
  • 建築上の一敷地を先に確定する売買対象筆と建築敷地は同じとは限りません。複数筆、路地状部分、道路後退部分を含むときは、公図・測量図・配置図で外周と境界を確認します。
  • 前面道路と真北を図面で確認する道路斜線は道路幅員・反対側境界、北側斜線は磁北ではなく真北が重要です。Web地図の見た目だけで測らず、道路資料・測量図・設計図を確認します。
  • 高さに関する制度を一覧にする法55条・56条だけでなく、高度地区、地区計画、日影規制、風致地区、建築協定、総合設計等の特例を分けて一覧にし、未確認の欄を残します。

都市計画図から道路・方位・高低差・建築資料へ進みます

  • 対象筆と建築上の一敷地を特定する

    登記事項、公図、地積測量図、確定測量図、売買対象図、建築確認配置図をそろえます。敷地の一部だけを検索したり、住居表示の一点だけで区域を判定したりしません。

  • 公式都市計画図で用途地域・容積率・高さ関係の指定を拾う

    用途地域、指定容積率、絶対高さ、高度地区、地区計画、日影規制等を確認します。区域境界付近や複数指定にまたがる敷地は、都市計画決定図書と窓口回答で確定します。

  • 前面道路を一本ずつ確認する

    道路種別、現況幅員、法上の幅員、反対側境界、道路後退線、道路との高低差、建物の後退位置を確認します。角地・二方路・三方路では各道路を分け、広い道路だけで判断しません。

  • 用途地域ごとに適用される斜線を選ぶ

    道路・隣地・北側斜線の有無、勾配、立上り、適用距離を現行法と自治体資料で確認します。敷地が複数用途地域にまたがる場合の扱いは、建物位置を示して建築指導担当へ照会します。

  • 真北・境界・地盤面・高低差と緩和条件を確認する

    真北測量、北側道路、隣地との高低差、公園・広場・水面等、建物の道路境界からの後退を図面で確認します。緩和を見込むときは、条文と自治体の取扱いを根拠にします。

  • 高度地区・日影規制・地区計画等を追加確認する

    法56条の斜線が適用されない場合でも、都市計画の高度地区や地区計画による高さ制限が残ることがあります。中高層住居系で北側斜線が除外されるかは日影規制の適用まで確認します。

  • 既存建物と設計上の特例を建築資料で照合する

    確認申請図書、建築計画概要書、検査済証、立面図、配置図、増改築資料を確認します。天空率を使った計画は、一般斜線の図だけで違反と判断せず、検討書・確認図書を建築士と照合します。

  • 根拠・回答・未確認事項を分けて重説へ残す

    適用される制限、数値、根拠資料、窓口回答、添付図、既存建物の確認状況、買主の計画に別途設計確認が必要なことを分けて記載します。

窓口での質問例

『地番○番○ほか○筆を一つの建築敷地として、重説作成のため確認します。用途地域・容積率と絶対高さの指定は何ですか。道路斜線・隣地斜線・北側斜線のうち何が適用され、勾配・立上り・適用距離はどうなりますか。前面道路○本の幅員・反対側境界・後退、高低差、北側道路、日影規制、高度地区による除外・追加制限、公園・水面等による緩和はありますか。回答の根拠となる計画書、条例、取扱い、指定図も教えてください』と、公図・測量図・道路資料・配置図を示します。

高さ制限の公式根拠:建築基準法55条・56条・56条の2・58条建築基準法施行令足立区の斜線制限・高さ制限(用途地域別の確認例)

斜線の意味と重説への書き分けを整理します

絶対高さ:低層住居系では10mまたは12m

第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域では、都市計画で10mまたは12mの限度を定めます。これとは別に、高度地区・地区計画・建築協定等が15m・20m等の最高高さを定めることがあります。『絶対高さなし』を『高さ制限なし』と言い換えません。

道路斜線:前面道路が狭いほど建物上部が制約されやすい

基本は前面道路の反対側境界から建物までの水平距離に用途地域等に応じた勾配を掛けて考えます。ただし、適用距離、容積率、道路幅員12m以上の場合、建物の後退、複数道路、公園・水面、高低差等で扱いが変わります。簡易式だけで重説の結論を出しません。

隣地斜線:一定の高さから上の部分を制限

第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域には、法56条の隣地斜線はありません。その他の地域では、住居系で一般に20mから1.25、商業・工業系等で一般に31mから2.5の形で示されますが、地域指定・緩和・敷地条件を現行資料で確認します。

北側斜線:真北側の境界から測る

低層住居系は一般に5m+水平距離×1.25、中高層住居専用地域は一般に10m+水平距離×1.25です。ただし、中高層住居専用地域で日影規制が適用される場合は北側斜線が除外されます。高度地区の北側型斜線は別に残り得ます。

天空率:斜線制限を単純に消す制度ではない

一定の測定方法で、計画建物が通常の斜線制限による建物と同程度以上の採光・通風等を確保することを示す代替判定です。建築士による計算図書と建築確認資料を確認し、『天空率により道路斜線なし』のように省略して書きません。

確認結果の例欄の整理独自の記載例
低層住居系・絶対高さ10m絶対高さ10m、道路斜線・北側斜線あり、隣地斜線なし。高度地区等を別確認。『第一種低層住居専用地域。建築物の高さの限度10m。道路斜線および北側斜線の適用があります。法56条の隣地斜線は適用されません。詳細は別添都市計画図・斜線確認表参照。』
中高層住居系・日影規制あり道路・隣地斜線あり。日影規制の適用により法56条の北側斜線は除外。高度地区は別。『第一種中高層住居専用地域。道路斜線・隣地斜線の適用があります。日影規制対象区域のため法56条1項3号の北側斜線は適用されません。○種高度地区による高さ制限は別途適用されます。』
商業地域道路・隣地斜線を確認。北側斜線・法55条絶対高さは通常なし。地区独自の高さ制限を別確認。『商業地域。道路斜線および隣地斜線の適用があります。北側斜線および法55条の絶対高さの適用はありません。○○地区地区計画の最高高さ○mは別途適用されます。』
天空率を用いた既存建物一般斜線の数値と、天空率による適合確認を分ける。確認図書の有無を記録。『道路斜線の適用があります。既存建物は建築確認図書上、天空率による適合確認がされています。計算内容および将来の増改築・建替えの可否は建築士・確認検査機関へ別途確認を要します。』
境界・真北等が未確定制度上の指定と、個別建物の適合性を分けて留保。『道路斜線・北側斜線の適用があります。境界、真北、地盤面および建物各部の高さが未確定のため、計画建物の適合性は確定測量・設計後に所管および建築士へ確認してください。』
既存建物が斜線を越えて見えても、直ちに違反とは書きません

天空率、建築時の法令、指定変更、許可・認定、総合設計、一団地認定、屋上部分の算定、地盤面・高低差の扱い等を確認します。確認申請図書や建築計画概要書がなく、現況だけでは結論が出ないときは、その未確認状態を記載します。

埼玉県と東京23区では、都市計画担当と建築担当を分けて確認します

地域最初に見るもの個別物件の確認先
埼玉県内各市町村の都市計画図で用途地域・容積率・高度地区・地区計画・日影規制等を確認し、埼玉県の建築行政窓口一覧で所管を特定します。特定行政庁12市は各市、その他は建築物の規模等により県建築安全センターまたは限定特定行政庁が窓口です。斜線の個別適用は建築担当へ確認します。
さいたま市市の都市計画調査案内から用途地域等を確認し、15m・20m高度地区の指定は高度地区の公式資料へ進みます。所在地を所管する北部・南部の都市計画指導課、建築指導課・建築審査課へ質問を分けます。高度地区の指定値と、道路・隣地・北側斜線の個別適用を一つの回答に混ぜません。
東京23区東京都の都市計画情報サービスで予備調査し、各区の都市計画図・建築制限資料を確認します。通常は物件所在地の区の都市計画・建築指導担当へ確認します。大規模建築物等では東京都と区の所管区分も確認します。

たとえば足立区は用途地域別に道路・隣地・北側斜線、絶対高さ、日影規制、高度地区を一覧化しています。一方、新宿区には北側斜線とは別の高度地区による斜線型・絶対高さ制限があり、道路斜線・隣地斜線を緩和する独自指定もあります。一つの区の表を東京23区全体へ流用できません。

埼玉県・東京23区の公式確認先:埼玉県|建築行政の窓口さいたま市|都市計画の調査案内足立区|斜線制限・高さ制限新宿区|北側斜線の案内新宿区|高度地区新宿区|道路・隣地斜線を緩和する区域

斜線名を並べるだけでは、買主の判断材料になりません

調査・記載の誤り起こり得る不利益防ぎ方
用途地域の一覧表だけを転記高度地区・地区計画・日影規制・地域独自指定を見落とし、予定建物の階数・形状が成立しない可能性。公式地図から計画書・条例・建築担当回答へ進み、適用される制度を一覧化。
道路幅員だけで道路斜線を計算反対側境界、後退、複数道路、容積率、適用距離等を誤り、建築可能範囲を過大・過小評価する可能性。道路台帳・境界資料・測量図・配置図を照合し、道路ごとに確認。
地図の上を北として北側斜線を判断真北方向がずれ、制限を受ける建物部分を誤る可能性。測量図・配置図の真北表示と測定根拠を確認。
北側斜線なしを高さ制限なしと説明高度地区の斜線型制限や日影規制を見落とし、設計変更や取引紛争につながる可能性。法56条、高度地区、日影規制を別行で確認・記録。
現況建物が建っているから再建築可能と説明建築後の指定変更、既存不適格、特例、天空率等を見落とし、同規模の建替えができない可能性。建築時期・確認図書・検査資料・現行指定を分けて説明。
  • 都市計画の証拠用途地域・容積率・絶対高さ・高度地区・地区計画・日影規制の公式図、計画書、条例、指定日。
  • 道路・境界の証拠道路台帳、指定道路図、幅員・反対側境界、道路後退、確定測量図、公図、境界確認資料。
  • 方位・地盤の証拠真北を示す測量図・配置図、地盤面、隣地・道路との高低差、公園・水面等の位置と所管回答。
  • 建物の証拠確認申請図書、建築計画概要書、配置図・立面図、検査済証、天空率検討書、増改築・許可・認定資料。
  • 照会記録照会日、部署、担当者、質問に使用した図面、回答内容、根拠資料、未確認事項。
高さ制限を道路・境界・都市計画資料から整理したいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 都市計画、道路・境界、建築資料、所管照会の整理から重要事項説明書ドラフト作成まで

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

斜線名だけでなく、起点・数値・別制度・未確認事項まで整理します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

高さ制限・斜線制限の調査でよくある質問

用途地域が分かれば、建てられる高さを計算できますか?

用途地域は必要ですが、それだけでは足りません。容積率、道路幅員・反対側境界、建物の後退位置、真北、地盤面・高低差、高度地区、地区計画、日影規制等を確認し、計画建物は建築士による設計検討が必要です。

第一種低層住居専用地域なら高さは10mですか?

10mまたは12mのどちらかを都市計画で定めます。さらに道路斜線・北側斜線、地区計画や建築協定等も適用される場合があるため、10m・12mだけで結論にしません。

北側斜線の『北』は、地図の上側ですか?

基準となるのは真北方向です。Web地図の表示方向や磁北と同一とは限りません。測量図・配置図で真北の表示と測定根拠を確認します。

中高層住居専用地域で北側斜線がないなら、北側の高さ制限もありませんか?

そうとは限りません。日影規制の適用により法56条の北側斜線が除外されても、高度地区の北側型斜線、絶対高さ、地区計画等が適用される場合があります。制度ごとに確認します。

天空率を使えば、斜線制限は気にしなくてよいですか?

天空率は所定の方法で同程度以上の採光・通風等を確保することを示す代替判定です。自由に斜線を無視できる制度ではなく、測定点・計算・図書の確認が必要です。高度地区の斜線等へ同じ特例が使えるとは限りません。

既存建物が斜線を越えて見える場合、違反建築物ですか?

外観だけでは判断できません。天空率、建築時の法令、指定変更、既存不適格、許可・認定、地盤面・高低差、屋上部分の算定等を、確認申請図書や所管回答から確認します。

この記事は2026年9月21日時点の法令と自治体公式資料を確認して作成しています。記載例は説明用の架空例です。個別土地の高さ制限は、用途地域、容積率、道路幅員・境界、真北、地盤面、高低差、高度地区、地区計画、日影規制、緩和・許可等で変わります。設計の可否は建築士および物件所在地の都市計画・建築指導担当へ確認してください。