不動産売買の契約解除はどう書く?重説の解除条項と確認事項【簡単診断】
売買契約を解除すると、必ず違約金を払う?
契約をやめるときは、手付金をあきらめるのか、違約金を払うのか、それとも手付金を返してもらえるのか。解除という言葉だけでは、金銭の扱いまでは分かりません。重要事項説明書を作る際は、売買契約書にある解除条項を確認し、理由ごとに条件を説明します。
解除の理由によって、手付金と違約金の扱いは異なる
重要事項説明書の『契約の解除に関する事項』では、どのような場合に、誰が、いつまでに、どの方法で解除できるかを説明します。手付金の放棄・返還、違約金等の扱いも、関係する欄と照合します。
買主の手付解除であれば手付金を放棄しますが、適用条件を満たすローン特約による解除なら、支払済みの手付金を返還する取扱いがあります。債務不履行による解除では、損害賠償や違約金の問題が生じることがあります。『解除=手付金没収』『解除=代金の20%』と一律に説明しないでください。
契約前の説明と、契約成立後の書面:宅建業法35条1項8号・9号(説明)37条1項7号・8号(書面交付)ローン特約の解除と手付金返還
契約解除で確認する条項を簡単診断
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論融資特約の条件と期限を確認
- 結論催告・解除・違約金条項を確認
- 結論手付解除等の条件を確認
- 確認2確認したい条件・事情はどれか?
- 結論引渡し前の滅失等の条項を確認
- 結論契約不適合の責任条項を確認
- 結論特約・合意解除の内容を確認
- 確認1契約を解除する理由は何か?結論融資特約の条件と期限を確認結論催告・解除・違約金条項を確認結論手付解除等の条件を確認
- 確認2確認したい条件・事情はどれか?結論引渡し前の滅失等の条項を確認結論契約不適合の責任条項を確認結論特約・合意解除の内容を確認
- 融資特約の条件と期限を確認
金融機関・融資額・申込条件と、不承認時に自動で解除されるのか、期限内の通知が必要なのかを契約書で確認します。
- 催告・解除・違約金条項を確認
何の義務が履行されていないか、催告が必要か、解除と損害賠償の条件は何かを確認します。遅れだけで直ちに解除できるとは限りません。
- 手付解除等の条件を確認
手付解除の期限・相手方の履行着手・手付金の額を確認します。売主業者の取引では、クーリング・オフ等の適用も別途確認します。
- 引渡し前の滅失等の条項を確認
修復の可否、契約目的を達成できるか、解除の手続と受領済み金銭の返還を確認します。火災等があればすべて同じ扱いになるわけではありません。
- 契約不適合の責任条項を確認
合意した物件の内容、追完請求・催告・解除の条件、通知期間と免責特約の有効性を確認します。不具合の発見だけで解除を決めません。
- 特約・合意解除の内容を確認
測量、許認可、建築条件などの特約と、双方の合意内容を確認します。返金・費用負担・通知期限も対象です。
確認する条項を探すための図です。1つの事情に複数の条項が関係することもあります。解除できるか、違約金が必要かは、契約内容と具体的な事実を調べて判断します。
不動産売買では、どのような解除がある?
まず、契約で認められた一方からの解除、民法等に基づく解除、双方で合意する解除を区別します。実務で確認する主な内容は、次のとおりです。
| 解除の種類・場面 | 主に確認すること | 金銭の扱い |
|---|---|---|
| 手付解除 | 手付金の交付、解除期限、相手方が履行に着手していないかを確認します。 | 買主は手付放棄、売主は手付の倍額を現実に提供するのが民法557条の原則です。 |
| ローン特約による解除 | 対象の金融機関・融資額・申込義務・承認期限・解除期限と、自動解除か通知が必要かを確認します。 | 特約の適用条件を満たせば手付金等を返還する取扱いがあります。単にローンが通らなければ必ず返金、ではありません。 |
| 債務不履行による解除 | 残代金の不払い、引渡義務の不履行などです。催告、履行状況、解除要件を確認します。 | 受領済み金銭の返還と、損害賠償・違約金の有無や額を別々に確認します。 |
| 引渡し前の滅失・損傷等 | 天災等で建物が失われた場合などです。修復の可否・契約目的・危険負担と解除の条項を照合します。 | 返還する金銭、利息、損害賠償等の取扱いを条項と法律に照らして確認します。 |
| 契約不適合に関係する解除 | 種類・品質等が契約内容と違う場合です。追完の催告等、解除の要件、通知期間、免責の範囲を確認します。 | 不具合があれば直ちに白紙解除、ではありません。代金減額・損害賠償など他の請求との関係も確認します。 |
| 独自の特約・合意解除 | 測量や許可を条件とする特約、建築条件付土地、双方の合意等です。対象条件を特定します。 | 受領済み金銭、測量費等の負担、違約金を請求するかを明確にします。『白紙』だけで済ませません。 |
双方が同意しないと解除できない?
契約や法律に基づく解除権があり、その要件を満たす場合は、相手方の同意がなくても解除の意思表示ができます。これに対し、解除権の有無とは別に、売主・買主が話し合って契約を終了させるのが合意解除です。合意解除では、返金額や費用負担も合意書等で確かめます。
解除条項は、何を見て、誰に確認する?
この欄は、役所の地図や登記情報から埋める欄ではありません。今回の売買契約書案、特約、当事者が合意した条件が中心資料です。過去の案件の重説をそのまま使うと、期限や条件が違ってしまいます。
- 契約書案と特約を一式確認
本文だけでなく、特約、融資利用の欄、手付解除期限、違約金の欄、別紙も確認します。書式の版と最終更新日を記録し、共同仲介なら双方が同じ案を使っているか確かめます。
- 解除条項の一覧と確認
手付、債務不履行、融資、引渡し前の滅失等、契約不適合、反社会的勢力排除、独自特約など、解除条件を定めた条項を確認します。『解除』という見出しの条文だけを対象にしません。
- 未確定の条件を当事者・関係先へ確認
売主・買主へ期限と負担条件を確認します。ローンは買主の同意を得て金融機関の審査状況等も照合します。測量や許可の特約は、担当する専門家・所管の資料と実現可能な日程を確認します。
- 重説へ記載し、契約前に再照合
解除の理由・権利者・期限・手続・金銭の扱いを記載します。相手方との調整で条件が変わった場合は、重説と契約書案の両方を更新し、説明後の変更も放置しません。
『この契約書案にある解除条項は、特約と別紙を含めてこれで全部でしょうか。手付解除期限、融資承認期限、ローン解除期限はそれぞれ何月何日ですか。解除には誰へ、どの方法で通知しますか。受領済みの金銭はいくら返還し、測量費などはどちらが負担しますか。違約金の有無も確認したいです。』
『対象の金融機関と融資額は契約書に記載した内容でよいでしょうか。減額承認の場合も特約の対象ですか。不承認なら自動で解除されますか、それとも解除通知が必要ですか。通知の相手と期限、申込みや資料提出が遅れた場合の扱いも確認したいです。』
条項の記載漏れ・融資条件の確認:大阪府・解除条項の記載漏れと不一致の注意例不動産適正取引推進機構・ローン特約
民法の解除と、売買契約書の特約はどう違う?
約束を守らない相手なら、すぐに解除できる?
民法541条では、相手方が債務を履行しない場合、相当な期間を定めて履行を求め、その期間内に履行がなければ解除できるとしています。これが催告による解除です。ただし、その時点の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であれば、解除できません。
履行の全部が不能、全部の履行を明確に拒絶した場合など、民法542条には催告をせずに解除できる場合も定められています。契約書に無催告解除の特約がある場合は、その文言と有効性を確認します。支払期限を1日過ぎたという事実だけを理由に、解除が成立したと断定するのは避けてください。
相手に落ち度がなければ解除できない?
現在の民法では、債務不履行による解除に、履行しない側の帰責事由が常に必要なわけではありません。一方、解除を求める側の責めに帰すべき事由で不履行が生じた場合は、民法543条により541条・542条の解除はできません。
解除できることと、損害賠償を請求できることは同じではありません。損害賠償は民法415条等の要件も確認します。『相手が悪くないので解除できない』『解除できるので当然に違約金も請求できる』とまとめないようにします。
解除通知は、期限までに送ればよい?
解除権の行使は、原則として相手方への意思表示で行います。民法97条の到達主義も踏まえ、通知の相手、到達を要する期限、契約で指定した方法を確認します。期限の日に郵便を出せばいつでも間に合う、という意味ではありません。クーリング・オフには書面を発した時に効力が生じる特則があり、通常の解除通知と区別します。
解除・催告・帰責事由・通知:民法97条・415条・540〜543条宅建業法37条の2第2項
重説の解除欄には、どこまで記載する?
手付解除だけを書けばよい欄ではありません。売買契約書で定めた解除の内容を、特約も含めて記載します。各条項について次の項目を照合すると、期限や金銭の説明漏れを見つけやすくなります。
| 確認項目 | 照合する内容 |
|---|---|
| 解除の理由・条件 | どの出来事があれば適用されるのか。融資の減額、許可の不取得などが対象か。 |
| 解除できる人 | 買主のみ、売主のみ、双方のどれか。別の人の同意・通知を要するか。 |
| 期限 | 承認を得る期限と解除通知の期限を区別します。年月日を記載し、履行着手等の条件も確認します。 |
| 催告・通知 | 催告の要否、猶予期間、通知先、書面等の方法、自動解除か解除権行使が必要か。 |
| 手付金・既払金 | 放棄、倍額提供、返還の別、返還額・時期・利息の扱い。名称だけで判断しません。 |
| 違約金・費用 | 違約金等の有無・金額・算定方法、測量費等の負担。重説の違約金欄や契約書の該当条項と一致させます。 |
『売買契約書による』とだけ書けば足りる?
その一言だけで、説明を省けるわけではありません。今回適用される解除条件と期限を具体的に示します。別紙で説明するなら、今回の契約条件を反映した別紙を特定し、重説と一体で交付して内容を説明します。未完成の契約書案を参照させるだけにはしません。
契約書の条件から、どのように記載文を作る?
以下は、個人売主・非宅建業者の買主の取引で、売主・買主が次の解除権留保型の融資特約を合意したと仮定する独自例です。実際の契約書をそのまま置き換える条項ではありません。
| 契約書案で確認した条件(架空) | 重説へ記載する内容(独自例) |
|---|---|
| 融資条件 | 『対象融資はA金融機関の住宅ローン1,800万円。全部又は一部の承認が得られない場合を対象とする。』金融機関名・融資額の欄とも一致させます。 |
| 承認期限と解除期限 | 『融資承認期限は令和8年11月20日。買主は同日までに対象融資の承認を得られないとき、同年11月25日までに売主に到達する書面で解除の意思表示をすることにより、本契約を解除できる。』この例は通知を要する型です。 |
| 返金と違約金 | 『本融資特約による解除が適用される場合、売主は受領済みの手付金100万円を解除成立日から5営業日以内に無利息で返還し、双方は違約金を請求しない。』利息・返還期限も、この架空の合意に基づくものです。 |
融資申込みへの協力義務や、買主の事情による不承認をどう扱うかなど、契約に適用除外がある場合はその内容も記載します。この3行だけを抜き出して、どの取引にも当てはめないでください。
重説と契約書の一致・ローン特約:宅建業法35条・37条大阪府・解除条項の説明漏れ防止ローン特約の型と確認事項
埼玉・東京で不明な解除条項は、どこへ相談する?
民法の解除制度や、重説へ解除条項を記載する基本は全国共通です。物件所在地だけで手付解除期限や違約金の割合が決まるわけではありません。まず契約書案と特約を照合し、業法上の説明方法と、個別契約の解除・返金を争う相談を区別します。
| 相談する内容 | 確認先と注意点 |
|---|---|
| 埼玉県の業法相談 | 埼玉県都市整備部建築安全課・宅建相談/指導担当、048-830-5488。重説と契約書、業者の免許番号、具体的な疑問を用意して相談します。民事上の費用請求等は法律相談へ案内される場合があります。 |
| 東京23区の業法相談 | 東京都住宅政策本部・不動産業課の指導相談担当、03-5320-5071。都の案内は、業者の免許番号を調べて該当する免許行政庁へ相談するよう案内しています。区役所で解除の有効性を判定してもらう調査ではありません。 |
| 解除・返金・違約金の紛争 | 契約書、時系列、支払記録、通知文と到達を示す資料を整理し、弁護士等へ相談します。行政窓口の案内を、そのまま相手方に対する解除成立の証明として扱いません。 |
県や都が案内する無料法律相談には対象者の制限があります。埼玉県の弁護士相談は県民向けで宅建業者は対象外、東京都の不動産取引特別相談は都民個人向けで宅建業者・法人は対象外です。仲介会社が利用する相談先は、所属団体や顧問弁護士等も含めて確認してください。
『売買契約書案の第○条に、この解除条件があります。重要事項説明書には条件と期限、返金の扱いをこのように記載する予定ですが、説明事項として不足している点はありますか。個別の解除の有効性については、法律相談が必要な内容でしょうか。』
相談先・対象者の確認:埼玉県・不動産取引の相談方法と弁護士相談東京都・業法相談と無料法律相談の対象
解除条項の説明で、どのような食い違いが起きる?

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
『解除したら手付金はどうなるの?』という疑問には、どの条項による解除なのかを確かめて答えたいところです。ローンの承認期限と解除通知の期限も違います。契約前に、日付と金銭の扱いまで確認しておきましょう。
- 手付解除だけを記載し、特約を説明しない融資不承認や許可の不取得などの解除条件が契約書だけにあると、買主が必要な期限・手続を知らないまま契約するおそれがあります。特約・別紙も照合します。
- 手付金と違約金を二重に請求する説明手付解除時の手付放棄と、債務不履行による違約金は同じではありません。既払手付金を違約金に充当する契約なら、控除せずに満額を追加請求する説明は金額が合いません。
- 期限が違う書類を交付する重説では11月25日、契約書では11月20日という不一致を残すと、いつまでに何をすればよいか判断できません。変更後の書面を照合し、当事者へ説明します。
手付100万円の『倍返し』は、いくら渡す?
民法557条による売主の手付解除で、受領済み手付金が100万円なら、現実に提供するのは合計200万円です。受領した100万円の返還分と、追加の100万円という関係で、返還100万円に200万円を足して300万円、ではありません。手付金の額・目的は、売買代金以外に授受する金銭の記事とも照合してください。
違約金は、必ず売買代金の20%になる?
20%は、どの売買にも自動で発生する違約金ではありません。宅建業者が自ら売主となり、買主が宅建業者でない取引では、宅建業法38条により、債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計は代金の20%が上限です。実際の定めが10%なら、一律に20%へ書き換えません。
同じ取引では、手付解除について買主に不利な特約を制限する39条、契約不適合責任についての40条等も確認します。個人売主の仲介取引と、買主も宅建業者である業者間取引を同じ条件として扱わないでください。業者間取引では、78条2項により37条の2〜43条の適用が除外されます。
手付と自ら売主の制限:民法557条宅建業法38〜40条・78条2項
契約条件の照合から、重要事項説明書の作成まで
- 売買契約書案・特約と、解除条件・期限・金銭の扱いを照合
- 現地・役所・法務局等の物件調査から重要事項説明書ドラフトを作成
解除の有効性を争う交渉、紛争の代理、損害賠償請求の判断を代行するサービスではありません。必要に応じて弁護士等へご相談いただきます。
解除条項の記載で分からないところがあれば、分かる範囲でご相談ください。契約書案と照らし合わせて確認します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼する標準的な1物件88,000円(税込)/公的資料取得実費別契約解除と重説についてよくある質問
契約書と重説の解除条件が違うとき、どちらが優先?
どちらかを一律に優先すると説明して済ませず、契約前なら当事者が合意した条件を確認して両方を修正します。契約後は、合意内容や説明経緯等も関係するため、食い違いだけを根拠に仲介担当者が解除や違約金を断定せず、必要に応じて弁護士等へ確認してください。
ローンの承認期限と解除期限は、同じ日?
同じとは限りません。審査結果を得る期限と、不承認の場合に解除権を行使する期限を別に定める契約があります。自動解除の型か、買主からの通知が必要な型かも含め、契約書の具体的な日付と文言を確認します。
相手方の仲介会社に伝えれば、解除通知になる?
仲介会社が当然に相手方の解除通知を受け取る権限を持つとは限りません。契約で指定した通知先と、通知を受け取る代理権の有無を確認します。相手方本人への通知が必要な場面で、担当者に伝えたことだけをもって到達済みと扱わないようにしてください。
不動産売買なら、契約後8日以内はクーリング・オフできる?
どの売買でもできる制度ではありません。宅建業者が売主であることに加え、申込み・契約の場所、法定の告知、引渡しと代金全額支払いの状況等を確認します。業者間取引には適用されません。『契約日から必ず8日間』とも限らないため、宅建業法37条の2の条件を確認してください。