重要事項説明書 取引条件|76

売買代金以外に授受する金銭とは?手付金・清算金と重説の書き方【計算ツール付き】

手付金や固定資産税の清算金は、売買代金とは別に払う?

『売買代金以外に授受する金銭』という欄に手付金があると、代金とは別料金のようにも見えますよね。一方で、固定資産税の清算金やマンションの管理費等は、残代金とは別に支払うことがあります。支払う理由と、売買代金に含まれるかどうかを確かめると、重説に何を書くかが分かります。

手付金は通常代金に充当。清算金は合意に基づき別途授受

この欄で説明するのは、売買代金以外に売主・買主の間で授受する金銭の額と目的です。代表例は、手付金、固定資産税・都市計画税の清算金、管理費・修繕積立金等の清算金です。名称だけでなく、何のために、誰から誰へ支払う金銭なのかを記載します。

手付金はこの欄で説明しますが、通常は残代金の支払い時に売買代金へ充当します。売買代金3,000万円、既払手付金100万円なら、残代金は2,900万円です。『代金3,000万円に手付金100万円を追加する』という意味ではありません。

固定資産税等や管理費等の日割りは、精算金計算ツールでも計算できます。

説明する金銭の額と目的:宅建業法35条1項7号・37条1項6号国交省・重説様式例のⅡ1

手付金・中間金・清算金は、どう違う?

金銭の種類何のために払うか代金・重説との関係
手付金契約時に手付として売主へ交付する金銭で、手付解除等の取扱いに関係します。本欄に額と目的を記載します。通常は残代金支払時に代金へ充当するため、購入代金への追加料金ではありません。
内金・中間金売買代金を契約から決済までに分けて支払うものです。純粋な代金の分割払いなら、売買代金の支払内訳で説明します。手付金とは性質が違うため、名前を取り違えません。
固定資産税・都市計画税清算金売主が納税義務を負う年税について、当事者が決めた負担額を買主から売主へ支払うものです。額と清算の目的を記載します。起算日や負担期間は法律上一律ではなく、合意した条件を確認します。
管理費・修繕積立金等清算金売主が先に納付した月額費用等を、引渡し後の負担分について清算するものです。対象月、既払・未払の別、日割り等の合意を確認して記載します。管理組合への毎月の支払いとは区別します。
その他の負担金・承継する預り金等施設の負担金、賃貸中物件の敷金の承継など、物件と契約によって生じます。一律に必要とはしません。支払根拠・負担者・支払先と、既に代金へ含めたかを確認します。

仲介手数料や登記費用も、この欄に全部書く?

この欄では、売主・買主間で授受する金銭を確認します。仲介手数料は仲介会社へ、登記費用は司法書士等へ、融資費用は金融機関等へ支払うため、通常は支払先ごとの見積り等で説明します。本欄の記載額とは別に、買主の資金計画へ含めます。

売主が費用をまとめて受領する契約もあります。『登記費用』『施設負担金』といった名前だけで扱いを決めず、受領者と支払目的、代金への算入の有無を確かめてください。

手付金は代金に充当するのに、なぜ別に説明する?

手付金は、手付解除等の取扱いに関係するため、単に代金の一部を先払いする内金と同じではありません。重説では手付金としての額・目的を説明し、契約書では、いつ代金へ充当するかや手付解除の条件も照合します。重説には『契約の解除に関する事項』『手付金等の保全措置の概要』の欄もあるため、該当する内容を確認します。

手付金と保全措置:国交省・不動産取引に関するお知らせ宅建業法35条・37条・39条

金額を決めるには、誰に何を確認する?

  • 売主・買主の取引条件を確認

    手付額、代金への充当、内金・残代金、清算する費用、引渡予定日を確認します。手付金は物件資料から決まる数字ではなく、当事者が合意する取引条件です。

  • 売主から当年度の納税通知書・課税明細書を取得

    売買する土地・建物に対応する税額を確認します。売主の別の土地・家屋が同じ通知書に含まれていないか、私道持分等が漏れていないかを調べます。評価額と年税額を取り違えないでください。

  • マンションは管理会社等へ費用を照会

    対象住戸の管理費・修繕積立金、専用使用料等の月額、引落しが当月分か翌月分か、既払額・滞納額、所有者変更後の請求を確認します。増額や一時金の決議があれば、その内容も調べます。

  • 計算条件を合意し、重説・契約書・清算書を照合

    対象期間、起算日、引渡し当日の負担者、日数と端数処理、税額未確定時の対応を決めます。誰がいつ支払うか、売主への残代金と相殺するか等も、資料間で一致させます。

売主への質問例

『売買対象の土地・建物について、当年度の納税通知書と課税明細書を確認できますか。この通知書には、今回売らない物件も含まれていますか。私道持分も清算対象にしますか。清算の起算日と、引渡し当日をどちらの負担にするかも相談させてください。』

管理会社への質問例

『○棟○号室を○月○日に引き渡す予定です。管理費・修繕積立金・専用使用料等の月額と適用月、支払済みの月、未払・滞納の有無を教えてください。引落しは何月分ですか。所有者変更後に売主へ引き落とされる分や、買主の初回請求、増額・一時金の決議も確認したいです。』

税額と管理費等の確認資料:東京都・課税明細書と固定資産証明国交省・マンション管理状況の確認

固定資産税は、引渡し日から買主の税金になる?

年の途中で売買しても、その年度の納税義務者は原則として1月1日時点の登記簿等の所有者です。売主・買主間で日割り清算をしても、納税通知書の宛先や納税義務者が買主へ替わるわけではありません。買主が売主へ支払う清算金は、当事者間の合意に基づくものです。

固定資産税は、法律上『何月から何月まで所有した分』と分けて課税される税金ではなく、年税です。その年税を当事者の間でどう負担するかを決めます。税金の賦課期日である1月1日と、契約で清算のために設定する起算日は別です。

起算日は1月1日か、4月1日か?

清算の起算日を1月1日とする契約も、4月1日とする契約もあります。埼玉県や東京23区にあることだけで、法律上どちらかに決まるわけではありません。使用する売買契約書案の公租公課条項を確認し、対象となる税の年度と、清算に使う期間を具体的に記載します。

  • 対象となる年税額と物件どの年度の土地・家屋の固定資産税・都市計画税を清算するかを特定します。納税済額や評価額ではなく、対象物件に対応する額を確認します。
  • 起算日と、引渡し当日の負担者引渡し日から買主負担なのか、翌日からなのかを決めます。同じ日を双方で重複して数えたり、どちらも負担しない日を作ったりしないようにします。
  • 年の日数・端数・税額が未確定のとき合意した期間の365日・366日等、計算の分母と端数処理を確認します。当年度額がまだ分からない場合は、概算の根拠と、税額確定後に再清算するかを決めます。

実際にはいくらになる?日割り清算の計算例

次は、個人が自宅のマンションを売却する架空の例で、消費税の別途加算がない取引とします。当年度の対象物件の固定資産税・都市計画税の合計を365,000円、清算起算日を令和8年1月1日、引渡しを同年10月20日とします。引渡し当日から買主負担、1年365日という合意です。

計算項目この例の条件・金額
買主の負担期間令和8年10月20日〜12月31日。10月の12日分+11月の30日分+12月の31日分=73日です。
固定資産税等の清算金365,000円×73日÷365日=73,000円。買主から売主へ支払います。
マンション管理費等の清算金別途、10月分31,000円を売主が全額納付済みで、10月20日から買主負担の日割りと合意した場合、31,000円×12日÷31日=12,000円です。

この計算方法が全物件のルールという意味ではありません。起算日や引渡し日の負担が違えば金額も変わります。また、税金の年額を日割りする計算と、管理費等の月額を日割りする計算では分母が違います。

納税義務と当事者間の清算:東京都主税局・年の途中の売買と清算さいたま市・Q1売却後の課税、Q2年税

重説の金額・授受目的には、どう書く?

国交省の様式例では、『Ⅱ 取引条件に関する事項』の1に、金額と授受目的の欄があります。以下は前記の架空例による独自の記載例です。実際は使う協会書式・業務ソフトの欄に合わせ、収まらない計算条件は備考や別紙に記載します。

金額欄の例授受目的・備考の例
手付金 1,000,000円『売買契約締結時に、買主から売主へ手付金として交付する。残代金支払時に売買代金の一部へ充当する。』手付解除の条件は、契約解除の欄と契約書の条項を照合します。
固定資産税・都市計画税清算金 73,000円『令和8年度の対象物件の年税額365,000円につき、清算起算日を令和8年1月1日とし、同年10月20日から12月31日までの73日分を買主負担として清算する。引渡し日に買主から売主へ支払う。』
管理費等清算金 12,000円『売主が納付済みの令和8年10月分の管理費・修繕積立金合計31,000円につき、10月20日から31日までの12日分を買主負担として清算する。引渡し日に買主から売主へ支払う。』実際の費目別月額は管理資料でも説明します。

決済日に売主へ払う金額は、どう確認する?

内訳前記の例での金額
売買代金30,000,000円
既に支払った手付金1,000,000円。残代金から控除します。
残代金29,000,000円
固定資産税等清算金73,000円を加算します。
管理費等清算金12,000円を加算します。
決済日に買主から売主へ払う額29,085,000円。手付金はここでもう一度加算しません。仲介手数料・登記費用等は別です。

税額や引渡し日が未確定なら、『未定』だけでよい?

『未定』『別途清算』だけでは、買主が負担額を判断できません。資料から算出できる概算額と根拠、対象年度・物件、日割りの条件、いつ確定するか、確定後の差額をどう扱うかを説明し、双方で協議します。未確定であることを、負担なしや0円と記載しないでください。

当年度税額が未確定の場合の備考例

『固定資産税・都市計画税清算金は概算○円。当年度税額が未確定のため、前年度の対象物件の税額○円を仮に用い、○月○日起算・引渡し当日から買主負担として算出した。売主は当年度課税明細書を受領後に写しを買主へ交付し、双方は当年度税額に基づく差額を○日以内に清算する。』これは、この方法を双方で合意する場合の架空例です。

宅建業法35条は額と目的の説明を求めています。概算のままで買主が負担額を判断できない場合や、重要な算定条件が未合意の場合は、契約前に協議してください。金額が確定したら、説明済みの条件に基づく計算書と確定額を当事者へ示し、重説・契約書との不一致がないか確認します。

金額・目的と、契約書との照合:国交省・現行様式例Ⅱ1宅建業法35条・37条

埼玉県・東京23区で、税額資料はどこに聞く?

まず売主の手元の納税通知書・課税明細書を確認します。不足があれば、課税内容の担当窓口へ、対象年度・地番・家屋番号を示して照会します。評価証明書だけでは実際の年税額や納付状況まで分かるとは限りません。仲介担当者が代理で取得する場合は、所有者の委任状等の必要書類を窓口へ確認してください。

所在地確認先と用件
さいたま市・西・北・大宮・見沼・岩槻区北部市税事務所・資産課税課。土地・家屋の課税内容を照会します。市の窓口一覧は土地と家屋で担当係を分けて掲載しています。
さいたま市・中央・桜・浦和・南・緑区南部市税事務所・資産課税課。例えば浦和区の土地は土地第1係048-829-1570、家屋は家屋第1係048-829-1572です。管理費の窓口ではありません。
埼玉県内のほかの市町村物件所在地の市町村の固定資産税担当へ確認します。県税事務所へ一律に問い合わせる税ではありません。証明書の種類と取得要件は所在地で確かめます。
東京都23区23区内の土地・家屋の固定資産税・都市計画税は東京都が課税します。東京都主税局の固定資産証明・閲覧案内から、都税事務所等の窓口と代理申請の条件を確認します。各区の区民税担当と取り違えないようにします。
管理費・修繕積立金等市役所・都税事務所ではなく、管理組合・管理会社へ、対象住戸と引渡予定日を指定して照会します。地域ではなく、そのマンションの規約・請求方法により確認します。

東京23区で課税明細書を紛失していたら?

東京都は、送付済みの納税通知書・課税明細書を再発行できないと案内しています。税額の確認には、固定資産関係証明や土地・家屋名寄帳等について、必要な記載が得られるかを相談します。固定資産評価証明は評価額・課税標準額等を示すのに対し、固定資産関係証明は相当税額や軽減・減免税額も記載する資料です。

当年度の固定資産関係証明は、原則6月1日から発行されます。休日に当たる場合は翌開庁日です。4月に評価証明が取れても、同じ時期に当年度の税額資料までそろうとは限りません。税額が未確定の取引では、どの資料を基に概算し、後日清算するかを事前に協議します。

課税窓口での質問例

『重要事項説明書作成のため、○年度の○番○の土地、家屋番号○の建物について課税内容を確認したいです。所有者の委任により、対象物件の固定資産税・都市計画税額を確認できる資料は取得できますか。資料名、対象年度、必要な委任状・本人確認書類を教えてください。』

課税窓口では、税の内容と資料の取得方法を確認します。売主・買主の清算の負担割合は、当事者間で合意します。

地域の課税窓口・資料取得:さいたま市・市税事務所の担当区と係東京都・固定資産証明と課税明細書東京都・委任を受けた代理人の申請東京都・23区の課税と納税義務者

清算を間違えると、どんな負担が生じる?

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

『別途清算します』だけでは、決済日にいくら必要か分かりませんよね。税額がまだ分からない場合も、何を基に計算し、いつ確定させるかまで相談しておきたいところです。

  • 管理費等の二重払い・清算漏れ売主の口座から翌月分まで引き落とされる場合があります。既払・未払と請求対象月を調べず、当月分だけ清算すると、売主が買主分を負担したままになったり、買主が重複して支払ったりするおそれがあります。
  • 滞納管理費等の買主への請求区分所有法8条により、管理組合は管理費等の債権を買主などの特定承継人に行使できる場合があります。売買契約で『売主が負担する』と決めただけで、管理組合から買主への請求を当然に排除できるわけではありません。滞納額、清算方法、完済を確認する資料を調べます。
  • 一時金・施設負担金の追加請求決議済みの修繕一時金や施設整備負担金等がある場合、誰がいつ負担するかを確認します。通常の管理費月額や年税額に含まれているとは限りません。

税金の清算金なら、消費税もかからない?

税金という名前だけでは判断できません。国税庁は、未経過固定資産税等の相当額を代金と別に受領しても、資産の譲渡金額に含めるとしています。課税事業者による課税対象の建物の売却では、建物に対応する清算金の消費税の扱いも確認します。土地分まで一律に消費税を加算するわけではありません。

重説で売買代金とは別の清算金として説明することと、税務上の譲渡対価・収入として扱うことは区別します。個人の居住用住宅の売却か事業上の売却か、土地・建物の内訳、売主の課税関係により確認事項が異なるため、分からない場合は税理士等へ照会してください。

滞納と税務上の取扱い:区分所有法7条・8条国税庁・消費税基本通達10-1-5・10-1-6国税庁・譲渡収入に含める金額

埼玉県全域・東京都23区の売買物件

物件資料と取引条件の確認から、重要事項説明書の作成まで

  • 税額資料・管理会社の回答と、売主・買主が合意する取引条件を確認
  • 現地・役所・法務局等の物件調査から重要事項説明書ドラフトを作成

当事者間の未合意条件は協議が必要です。税務判断や紛争への対応は、それぞれ税理士・弁護士等へ確認します。

金額や清算方法がまだ分からない場合も、分かる範囲でご相談ください。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼する標準的な1物件88,000円(税込)/公的資料取得実費別
固定資産税を清算しない契約もできる?

清算は当事者間の合意によるため、清算しない条件を合意することもあります。売買代金にその負担を織り込んだのか、単に清算を行わないのかを契約上明確にします。清算しない合意でも、課税庁に対する売主の納税義務がなくなるわけではありません。

中間金を払ったら、残代金からも差し引く?

売買代金の一部として支払った中間金なら、既払手付金とともに残代金の計算で控除します。例えば代金3,000万円、既払手付金100万円、既払中間金400万円なら、残代金は2,500万円です。清算金や第三者への費用は、その後に別途確認します。

納税証明書だけで固定資産税の清算額を計算できる?

納付状況を示す資料と、今回の対象物件の年税額を確認する資料は、目的が違います。証明の記載内容を確認し、対象年度・土地・家屋・税額が分かる納税通知書や課税明細書等を照合してください。納付した期別の金額をそのまま清算の年額にしないようにします。

引渡し日が変更になったら、清算額も変わる?

引渡し日を基準に日割りする合意なら、対象日数が変わるため再計算します。固定資産税等と管理費等は対象期間が異なるので、それぞれ確認します。日程変更により新年度税額や翌月の引落しが判明した場合も、契約条件に従って清算書を更新し、双方へ説明します。

2026年10月29日に国・東京都・さいたま市の公式資料を確認しました。金額・計算・記載例は架空の条件による独自例です。清算方法は当事者間の合意によって異なります。個別の契約条件、税務上の取扱い、滞納への対応は、それぞれの専門家・所管へ確認してください。計算ツールは合意した条件で精算金を計算するもので、負担義務や課税額を自動判定するものではありません。