盛土規制法は重説にどう書く?規制区域・許可履歴の調べ方
規制区域内なら、危険な盛土がある土地という意味ですか?
東京都内の土地を調べたところ、盛土規制法の宅地造成等工事規制区域内でした。重要事項説明書では法令名にチェックを付ければよいでしょうか。区域内というだけで、危険な盛土がある土地と説明するのでしょうか。
区域内であることと、危険な盛土があることは別です
対象地が規制区域内なら、重説の法令制限欄で盛土規制法の適用内容を説明します。ただし、区域内というだけで、その土地に危険な盛土があるとはいえません。区域の種類、現在又は過去の許可・届出、工事の完了状況、既存の盛土・切土・擁壁の状態を分けて調べます。
全日版の書式では、『法令に基づく制限』の一覧に宅地造成及び特定盛土等規制法があり、これとは別に『造成宅地防災区域』の外・内を選ぶ欄があります。前者は盛土・切土等の工事に対する許可・届出等、後者は都道府県等が特に指定した区域に入るかという確認です。
東京23区は全域が宅地造成等工事規制区域です。埼玉県では、県内全域が宅地造成等工事規制区域又は特定盛土等規制区域のいずれかに指定されています。ただし、2026年10月1日時点で東京都・埼玉県とも造成宅地防災区域の指定はありません。そのため、盛土規制法の制限に該当していても、造成宅地防災区域欄は『外』となります。
盛土規制法の重説記載フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論許可番号と検査の状況
- 結論開発許可の番号と、みなし許可の確認
- 確認2対象地か隣接地に、盛土・切土・擁壁・のり面はありますか?
- 結論擁壁などの現況と、資料がないこと
- 結論区域内の制限と、照会の結果
- 確認1対象地番に、盛土規制法の許可や開発許可の記録はありますか?結論許可番号と検査の状況結論開発許可の番号と、みなし許可の確認
- 確認2対象地か隣接地に、盛土・切土・擁壁・のり面はありますか?結論擁壁などの現況と、資料がないこと結論区域内の制限と、照会の結果
- 許可番号と検査の状況
許可の日付・番号と工事内容を書きます。変更許可、中間検査、完了検査の状況は所管の窓口へ照会し、確認した日付と合わせて書きます。
- 開発許可の番号と、みなし許可の確認
開発許可の日付・番号を書き、盛土規制法の許可を受けたものとみなされる工事かを所管の窓口へ確認します。中間検査と定期報告の実施状況、完了公告の日も書きます。
- 擁壁などの現況と、資料がないこと
擁壁などの位置・高さと、現地で確認した状態を書きます。許可図書と検査記録は、照会先と照会日を書いたうえで確認できなかったと書き、買主には、専門家の調査や補修に費用がかかる可能性を説明します。
- 区域内の制限と、照会の結果
重説には、規制区域の種類と、一定規模以上の盛土・切土・土石の堆積に原則として要る許可等を書きます。許可・届出の履歴は、調べた公表資料と照会した窓口を書いたうえで、確認できなかったと書きます。
造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域とは別です。重説では、造成宅地防災区域の内・外も書きます。
最初に3つの区域を区別します
宅地造成等工事規制区域
市街地、集落、その周辺など、盛土等が行われると人家等に危害が生じるおそれがある区域です。区域内で一定規模以上の盛土・切土・土石の堆積を行う場合、原則として事前の許可が必要です。
特定盛土等規制区域
市街地等から離れていても、地形等の条件から盛土等により人家等へ危害が生じるおそれがある区域です。工事規模により届出又は許可を確認します。
造成宅地防災区域
既存の造成宅地について、災害防止措置が必要となる土地を都道府県知事等が指定する制度です。上の二つの工事規制区域とは別の指定です。重説でも独立した内・外の確認欄があります。
| 重説で確認すること | 区域に入っていた場合に追加で調べること | |
|---|---|---|
| 法令制限欄 | 宅地造成等工事規制区域か、特定盛土等規制区域か。今回又は将来の工事にどの許可・届出が必要か | 許可・変更許可・届出・開発許可のみなし許可、中間検査、定期報告、完了検査、行政処分の有無 |
| 造成宅地防災区域欄 | 対象地が造成宅地防災区域の内か外か | 内なら、指定理由、勧告・命令、災害防止措置、所有者等の対応状況 |
| 物件固有の安全確認 | 盛土・切土・擁壁・のり面が実際に存在するか。区域指定だけでは答えは出ない | 造成時期、工事図書、確認・検査、ひび割れ、はらみ、排水、越境、所有・維持管理、専門家の調査結果 |
国土交通省は、宅地造成等工事規制区域内の許可、特定盛土等規制区域内の許可・届出等を、重説の法令に基づく制限として示しています。法令名へのチェックだけでは、買主が受ける制限の内容を説明したことにはなりません。
区域・許可履歴・現況をこの順で調べます
- 売買対象の全筆を確定する
登記事項証明書、公図、地積測量図、契約案を照合し、対象地番と対象範囲を一覧にします。隣接する擁壁やのり面が別筆の場合は、その所有者と管理範囲も確認します。
- 公式地図で規制区域を確認する
東京都は都市計画情報等インターネット提供サービス、埼玉県所管区域は県の盛土等データベースと市町村別図を使います。規制区域の種類、境界、指定日を保存します。
- 区域指定日と工事時期を照合する
東京都は2024年7月31日、埼玉県所管区域は2025年7月1日、さいたま市・川越市・川口市・越谷市は2025年5月26日に規制を開始しました。指定日前から続く工事には経過措置の届出があるため、着手日を確認します。
- 許可・届出の公表資料を検索する
地番、工事所在地、許可番号、工事主、許可日、着手・完了予定日を検索します。都市計画法29条の開発許可を受けた工事は盛土規制法の許可を受けたものとみなされる場合があるため、開発登録簿も照合します。
- 許可図書と検査状況を所管へ照会する
許可の公表一覧に載っていても、工事が完了し、許可内容どおりに施工されたとは限りません。変更許可、中間検査、定期報告、完了検査、検査済証、是正指導・監督処分の有無を確認します。
- 既存の盛土・擁壁を資料と現地で確認する
古い造成図、開発登録簿、確認申請図書、地形図、空中写真、既存盛土等分布マップと現地を照合します。擁壁のひび割れ、はらみ、傾き、排水穴、湧水、補修跡を撮影します。
- 造成宅地防災区域を別に確認する
規制区域の地図とは別に、造成宅地防災区域の指定有無を確認します。2026年10月1日時点で東京都・埼玉県はいずれも指定していませんが、確認日と根拠にした公式資料を調査記録へ残します。
- 確認できた事実を重説と契約条件へ反映する
区域、適用条文、工事の有無、許可・届出番号、検査状況、資料の不足、既存擁壁の状態を区別して書きます。専門調査が必要なら、実施時期、費用負担、結果による解除・補修・引渡条件も契約で定めます。
『地番○○番○ほか○筆の売買に伴う重要事項説明書を作成しています。規制区域の種類と指定日を確認したいです。この地番又は周辺で、盛土規制法の許可・変更許可・届出、都市計画法の開発許可によるみなし許可はありますか。中間検査、定期報告、完了検査の対象と実施状況、行政指導・監督処分、閲覧又は取得できる図書も教えてください』と、全筆一覧・公図・案内図・現況写真を示して質問します。
重説には区域名だけでなく、工事と確認結果を書きます
| 調査結果 | 重説への記載例 |
|---|---|
| 規制区域内・今回の造成工事なし | 『対象地は宅地造成等工事規制区域内です。区域内で法令所定の規模の盛土、切土又は土石の堆積を行う場合は、原則として事前の許可等が必要です。本件売買に伴う当該工事の予定はありません。○年○月○日、○○区公表資料および○○課への照会により、対象地番に係る盛土規制法の許可・届出は確認されませんでした。』 |
| 盛土規制法の許可工事がある | 『対象地は宅地造成等工事規制区域内です。対象地では、盛土規制法12条1項に基づく許可(○年○月○日・許可番号○号)を受けた工事が行われています。工事内容は別添許可図書のとおりで、○年○月○日時点の完了検査の状況は○○です。変更計画の有無と引渡しまでの手続は売買契約書第○条に定めます。』 |
| 開発許可によるみなし許可 | 『対象地の造成工事は、○年○月○日付・開発許可番号○号の都市計画法29条の開発許可を受け、盛土規制法の許可を受けたものとみなされます。盛土規制法上の中間検査・定期報告の対象と実施状況は○○です。開発行為の完了公告は○年○月○日です。』 |
| 古い擁壁があり、許可履歴を確認できない | 『対象地南側に高さ約○mの擁壁があります。売主保管資料および○年○月○日の所管照会では、造成・擁壁に関する許可図書と検査記録を確認できませんでした。現地では○○を確認しています。現行基準への適合性および安全性を保証する資料はなく、買主は必要に応じて専門家による調査・補修・再築造費用を要する可能性があります。』 |
公表一覧に見当たらないだけでは、過去に許可がないと断定できません。旧法時代の記録、開発許可のみなし、地番変更、保存期間、所管変更が影響することがあります。調査した資料・照会先・確認日と、確認できなかった範囲を書き分けます。
東京23区・埼玉県の区域図と許可履歴は、所在地ごとの窓口で確認します
東京23区
2024年7月31日から盛土規制法による規制が始まり、23区は宅地造成等工事規制区域に指定されています。東京都のインターネット地図で予備調査し、許可・届出・検査については土地所在地の区の担当課へ確認します。東京都の窓口一覧には23区ごとの担当課が掲載されています。
杉並区の調べ方
杉並区全域は宅地造成等工事規制区域です。区は許可一覧を公表し、『すぎナビ』で開発登録簿・盛土規制法調書を閲覧できると案内しています。対象地の許可区域と調書を確認し、市街地整備課へ検査・指導等を照会します。
埼玉県所管区域
2025年7月1日から県内全域を二つの規制区域のいずれかに指定しています。県GISと市町村別図で区域を確認し、盛土規制法の申請・相談は所在地を管轄する県環境管理事務所へ確認します。都市計画法の開発許可によって盛土規制法の許可を受けたものとみなされる工事では、中間検査等の照会先が市町村の開発許可窓口又は県都市計画課となる場合があります。
さいたま市・川越市・川口市・越谷市
4市は県とは別に権限を持ち、2025年5月26日から各市が規制を開始しました。区域、許可・届出の公表、検査・指導は各市の担当課へ確認します。さいたま市は北部・南部に分けて許可一覧と位置図を公表しています。
区域・許可・窓口を調べる公式ページ:東京都|盛土規制法に基づく規制東京都|規制区域図東京都|都市計画情報等インターネット提供サービス東京都|23区の申請・相談窓口東京都|許可・届出の公表杉並区|盛土規制法許可と調書の閲覧埼玉県|規制区域と盛土等データベース埼玉県|申請・相談窓口さいたま市|許可・届出の公表
区域図を確認した後、許可図書と現地の状態を照合します
| 確認漏れ | 買主に生じ得る不利益 | 追加確認 |
|---|---|---|
| 区域内だけを書き、許可工事を調べない | 未完了工事、変更許可、検査、定期報告、是正対応を引き継ぐ可能性 | 許可一覧・開発登録簿・調書・検査済証・行政照会を確認 |
| 分布マップを安全証明として扱う | マップ外の盛土・擁壁を見落とす、又はマップ内を危険と断定して取引判断を誤る可能性 | マップは位置把握の資料とし、安全性は図書・現地・必要な専門調査で確認 |
| 古い擁壁を現行許可済みとみなす | 補修・再築造、建築計画の変更、融資・保険・売却への影響が生じる可能性 | 築造時期、旧法許可、開発許可、建築確認図、構造、排水、越境を確認 |
| 所有者と擁壁の管理者を確認しない | 隣地擁壁の補修交渉、費用負担、越境、工事立入りを巡る紛争の可能性 | 境界資料、売主聴取、隣地関係、覚書、維持管理の実績を確認 |
熱海の土石流災害等を踏まえ、土地の用途を問わず規制する制度に改められました
2021年7月の静岡県熱海市の土石流災害等を踏まえ、旧宅地造成等規制法が2022年に抜本改正され、盛土規制法が2023年5月26日に施行されました。宅地だけでなく、農地・森林等も含め、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する制度です。実際の規制は、都道府県等が区域を指定した日から始まります。
杉並区では2025年に擁壁の倒壊事故がありました
杉並区は、2025年9月に区内で擁壁の倒壊事故があったとして、所有者へ点検と適切な維持管理を呼びかけています。この事故について、盛土規制法違反が原因だったと断定できる公式資料は確認できません。取引調査では、杉並区全域が規制区域という事実とは別に、対象地の擁壁の築造時期、許可図書、現況、維持管理を確認します。
東京都の既存盛土等分布マップは、既存盛土等の位置を把握する分布調査の結果です。東京都は、分布調査で把握した箇所について、安全性把握調査を優先して実施する箇所を評価すると説明しています。地図への表示・非表示だけで、個別土地の安全・危険を判断しません。
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 規制区域と許可・届出の履歴を調べ、開発登録簿・検査記録・現地の盛土や擁壁を確認して重説ドラフトへ反映
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費、測量・建築士等による専門調査費用は別途です。
区域図だけでなく、許可図書、検査記録、現地の盛土・擁壁まで確認します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。盛土規制法の調査・記載でよくある質問
東京23区の平坦な宅地でも、盛土規制法を説明しますか?
対象地が宅地造成等工事規制区域内なら、法令に基づく制限として説明します。平坦に見えることや今回工事をしないことを理由に、区域の確認を省略しません。ただし、区域指定は土地ごとの盛土や擁壁の安全性を判定したものではありません。
許可公表一覧に地番がなければ、過去の盛土はないですか?
そうとは限りません。区域指定前の工事、旧法許可、開発許可、地番変更、公表対象外の小規模工事、無許可工事等が考えられます。古い地形図、空中写真、開発登録簿、売主資料、所管照会、現地を併用します。
開発許可があれば、盛土規制法は調べなくてよいですか?
調べます。区域指定後の都市計画法29条の開発許可は盛土規制法の許可を受けたものとみなされる場合がありますが、中間検査・定期報告等の対象となることがあります。開発許可番号、工事内容、検査・完了状況を確認します。
造成宅地防災区域が『外』なら、盛土規制法の問題はありませんか?
造成宅地防災区域が外でも、宅地造成等工事規制区域又は特定盛土等規制区域に入ることがあります。法令制限欄と造成宅地防災区域欄を別々に確認し、既存擁壁等の物件固有の状態も調べます。
擁壁にひび割れがあれば、違反擁壁と書いてよいですか?
ひび割れだけで法令違反とは断定しません。現況を客観的に記録し、許可図書、築造時の基準、構造、排水、変形、補修歴を確認します。必要に応じて建築士・宅地防災の専門家等による調査を買主へ案内します。