特定都市河川浸水被害対策法は重説にどう書く?対象区域と許可の調べ方
特定都市河川浸水被害対策法について、重説には何を書けばよいですか?
対象地が特定都市河川流域にある場合、指定区域、雨水貯留浸透施設、過去の許可、買主が予定する造成・建築について、何を調べて、どこまで書けばよいのでしょうか。ハザードマップの浸水想定区域との違いも知りたいです。
ハザードマップと指定流域は別です
ハザードマップに色が付いていることだけでは、この法律の制限に該当するとは判断できません。まず、対象地が特定都市河川流域に入るかを公式の指定図で確認します。流域内なら、雨水浸透阻害行為の許可、雨水貯留浸透施設・保全調整池の有無と管理協定、貯留機能保全区域・浸水被害防止区域の指定と、それぞれに関係する手続を調べます。
全日版の書式では、『法令に基づく制限』の一覧に特定都市河川浸水被害対策法があります。該当する場合は法令名にチェックを付け、後記欄に区域・施設・行為・許可又は届出の内容を書きます。『流域内』だけで終わらせず、売買後の利用に関係する制限まで確認します。
2026年9月22日には台風25号により千葉県の北印旛沼、角川、長門川で堤防の決壊と大規模な浸水被害が発生しました。東京でも2025年9月11日に23区西部を中心とする大雨で床上・床下浸水が発生しています。水害が起きた事実は物件調査で確認すべきですが、被害があった場所が自動的に特定都市河川流域や浸水被害防止区域になるわけではありません。指定は告示と指定図で確認します。
特定都市河川浸水被害対策法の重説記載フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 確認2対象地は、貯留機能保全区域内か浸水被害防止区域内ですか?
- 結論貯留機能保全区域の30日前届出
- 結論浸水被害防止区域の開発・建築許可
- 確認3雨水浸透阻害行為の許可履歴か、雨水貯留浸透施設・保全調整池はありますか?
- 結論許可の内容と施設の管理方法
- 結論流域内であることと、照会の結果
- 結論流域外(浸水想定区域の調査は必要)
- 結論自治体へ雨水の排水先を示して確認
- 確認1指定図では、対象地は特定都市河川流域内ですか?結論流域外(浸水想定区域の調査は必要)結論自治体へ雨水の排水先を示して確認
- 確認2対象地は、貯留機能保全区域内か浸水被害防止区域内ですか?結論貯留機能保全区域の30日前届出結論浸水被害防止区域の開発・建築許可
- 確認3雨水浸透阻害行為の許可履歴か、雨水貯留浸透施設・保全調整池はありますか?結論許可の内容と施設の管理方法結論流域内であることと、照会の結果
- 貯留機能保全区域の30日前届出
重説には区域の指定日を書き、区域図と公示を別添にします。盛土・塀・止水壁などを設けるときは、原則として着手日の30日前までに届出が要ります。
- 浸水被害防止区域の開発・建築許可
重説には基準水位を書きます。住宅や要配慮者施設などの開発・建築には法57条か66条の許可が要る場合があるので、買主の計画について所管の窓口から受けた回答も、日付と合わせて書きます。
- 許可の内容と施設の管理方法
許可の日付・番号、設置された施設、完了検査の結果、管理者と維持管理の方法を書きます。施設を埋め立てる、改築する、除却するときは、許可や届出が要る場合があります。
- 流域内であることと、照会の結果
重説には、流域名と、調べた資料・照会した窓口を書きます。許可履歴、施設、区域の指定は、その範囲では確認できなかったと書き、今後の雨水浸透阻害行為には許可等が要る場合があることも伝えます。
- 流域外(浸水想定区域の調査は必要)
特定都市河川浸水被害対策法の制限はかかりません。水害リスクがないという意味ではないので、水害履歴、洪水・内水ハザードマップ、水防法の浸水想定区域を調べます。
- 自治体へ雨水の排水先を示して確認
流域は地形と雨水の排水先で決まり、住所検索だけでは判断できません。土地所在地の自治体に、流域内かどうかを確認します。
貯留機能保全区域内や浸水被害防止区域内の土地でも、雨水浸透阻害行為の許可履歴と施設は調べて書きます。
重説では、流域と5種類の制限を確認します
特定都市河川流域
特定都市河川へ雨水が流れ込む範囲として国又は都道府県が指定した区域です。行政界ではなく、地形や雨水の排水先で決まります。同じ市区町村でも、指定流域に入る場所と入らない場所があります。
雨水浸透阻害行為
農地や林地等を宅地・駐車場・資材置場等に変え、雨水が地中へ浸透しにくくなる行為です。政令上は1,000㎡以上が許可対象ですが、都県等の条例で500㎡以上1,000㎡未満まで引き下げられる制度があります。2026年10月2日時点で東京都・埼玉県の公式案内は1,000㎡以上としており、調査時にも許可窓口へ確認します。
雨水貯留浸透施設
許可に伴って設けた調整池、貯留槽、浸透ます、浸透トレンチ等です。完成検査後も、雨水貯留浸透施設の機能を阻害する行為をしようとするときは、法39条の許可が必要となる場合があります。通常の管理行為等の適用除外は、所管窓口へ確認します。
保全調整池
一定規模以上の防災調整池のうち、都道府県知事等が指定したものです。埋立てや池の敷地での建築等は、着手日の30日前までに届出が必要となる場合があります。
貯留機能保全区域
河川沿いの低地や窪地等で、一時的に水をためて浸水の拡大を抑える土地について、所有者の同意を得て指定する区域です。盛土、塀、止水壁等を設ける場合は、原則として着手日の30日前までに届出が必要です。
浸水被害防止区域
洪水や雨水出水により、建物の損壊又は浸水で生命・身体に著しい危害が生じるおそれがある土地に指定されます。住宅や要配慮者施設等の開発・建築には許可が必要となる場合があります。
| 重説対象となる主な条文 | 売買前に確認すること |
|---|---|
| 法24条・52条 | 公告済みの雨水貯留浸透施設又は保全調整池の管理協定があり、買主にも効力が及ぶか |
| 法30条・37条 | 1,000㎡以上の雨水浸透阻害行為の許可、変更許可、対策工事、完了検査の状況 |
| 法39条・46条 | 雨水貯留浸透施設又は保全調整池の埋立て、建築、改築、除却等に必要な許可・届出 |
| 法55条 | 貯留機能保全区域の指定と、盛土・塀・止水壁等の行為に必要な30日前までの届出 |
| 法57条・62条・66条・71条 | 浸水被害防止区域内で予定する住宅・要配慮者施設等の開発又は建築に必要な許可・変更許可 |
宅地建物取引業法施行令3条は、上表の各条文を売買の重要事項説明の対象にしています。指定流域内であっても、対象地にどの制限がかかるかは、現在の土地利用、過去の許可、施設の有無、個別区域の指定、買主の利用計画によって変わります。
指定流域と許可履歴を確認する
- 売買対象の全筆と利用計画を確認する
登記事項証明書、公図、地積測量図、契約案を照合し、対象地番と面積を一覧にします。現況と買主の予定用途、舗装・造成・建築の予定範囲も確認します。
- 公式の指定図で特定都市河川流域を確認する
国土交通省又は都県が公表する流域図で全筆を確認します。流域界付近は、土地所在地の自治体へ雨水排水先を示して確認します。住所検索だけで判断しません。
- 現況土地利用と過去の土地利用を調べる
農地、林地、原野等が宅地、駐車場、資材置場等へ変わっていないか、航空写真、農地資料、造成図、現況写真で確認します。既に宅地等となっている部分は雨水浸透阻害行為の面積に含まれないため、許可対象面積は売買面積と一致するとは限りません。
- 雨水浸透阻害行為の許可履歴を照会する
許可、変更許可、工事完了届、完了検査、設置された施設、標識、維持管理者を確認します。指定日前に着手した行為や、他法令の許可を受けた行為には経過措置があるため、着手日と許可日も照合します。
- 雨水貯留浸透施設と保全調整池を確認する
対象地内や、許可図面上で対象地と一体として扱われる開発区域に、調整池、貯留槽、浸透施設がないか確認します。管理協定の公示の有無、維持管理者、法令上の機能阻害行為の制限を調べます。
- 貯留機能保全区域と浸水被害防止区域を確認する
貯留機能保全区域と浸水被害防止区域について、指定の公示、地番、区域図、標識を確認します。流域水害対策計画に指定方針が書かれているだけでは、個別の区域指定を受けたことにはなりません。
- 買主の計画に必要な許可・届出を照会する
造成、舗装、盛土、塀、建築、既存施設の撤去等について、どの条文の許可又は届出が必要か所管へ確認します。都市計画法の開発許可や自治体の雨水条例も別に確認します。
- 根拠資料と回答を重説へ反映する
指定流域、個別区域、施設、許可・届出番号、完了検査、管理義務、買主の利用制限を記載します。指定図、許可図面、公示、照会日時、部署、担当者、回答内容を調査資料として保存します。
『地番○○番○ほか○筆について、売買の重要事項説明書を作成しています。特定都市河川流域への該当を確認してください。法30条の許可・変更許可・完了検査、雨水貯留浸透施設、保全調整池、管理協定、貯留機能保全区域、浸水被害防止区域の指定はありますか。買主は○○の造成・舗装・建築を予定しています。必要な許可・届出と閲覧できる図書も教えてください』と、全筆一覧、公図、案内図、現況図、利用計画図を示して質問します。
重説には指定、施設、許可、買主の制限を書きます
| 調査結果 | 重説への記載例 |
|---|---|
| 流域内・許可対象行為なし | 『対象地は利根川水系中川・綾瀬川等の特定都市河川流域内です。○年○月○日現在、法30条の許可履歴、対象地内の雨水貯留浸透施設・保全調整池の有無、貯留機能保全区域・浸水被害防止区域の指定を、○○資料と○○課への照会で確認しました。確認できた範囲では、法30条の許可履歴及び個別区域の指定はありません。将来、法令所定の雨水浸透阻害行為等を行う場合は、事前の許可等が必要となる場合があります。』 |
| 雨水浸透阻害行為の許可あり | 『対象地を含む区域では、法30条の許可(○年○月○日・許可番号○号)を受けた雨水浸透阻害行為が行われています。対策工事として○○が設置され、完了検査は○年○月○日に合格しています。施設の位置、管理者、維持管理方法は別添図書のとおりです。雨水貯留浸透施設の機能を阻害する埋立て、改築、除却等には、法39条の許可が必要となる場合があります。』 |
| 貯留機能保全区域内 | 『対象地は○年○月○日付で指定された貯留機能保全区域内です。区域内で盛土、塀、止水壁その他雨水等の貯留機能を阻害する行為を行う場合は、原則として着手日の30日前までに届出が必要です。区域図、公示及び標識の内容は別添のとおりです。』 |
| 浸水被害防止区域内 | 『対象地は浸水被害防止区域内で、基準水位は○mです。住宅又は要配慮者施設等を目的とする開発・建築には法57条又は66条の許可が必要となる場合があります。買主の予定する○○について、○年○月○日に○○課から○○との回答を受けています。』 |
公式地図で流域内と確認できても、地番別の許可履歴や地下の貯留施設まで分かるとは限りません。『許可なし』ではなく、『○○資料と○○課への照会では確認されなかった』と、調べた範囲を書きます。
東京23区は3区、埼玉県は24市町に指定範囲があります
東京23区
中川・綾瀬川流域の指定範囲があるのは、足立区、葛飾区、江戸川区です。流域図で対象地を確認し、流域界付近は雨水排水先も確認します。法30条の事前相談・許可申請は東京都都市整備局都市基盤部調整課施設計画担当が案内しています。
埼玉県
2024年3月29日に指定された中川・綾瀬川等の流域は、埼玉県内24市町にまたがります。さいたま市、熊谷市、川口市、行田市、加須市、羽生市、鴻巣市、上尾市、草加市、春日部市、越谷市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、三郷市、蓮田市、幸手市、吉川市、白岡市、伊奈町、宮代町、杉戸町、松伏町です。自治体の一部だけが流域に入る場合があります。
埼玉県の許可窓口
さいたま市・川口市・越谷市と権限移譲を受けた市町は各自治体が窓口です。鴻巣市、北本市、伊奈町、蓮田市、幸手市、白岡市、杉戸町は埼玉県が許可事務を行います。1ha以上の開発等では県雨水条例の手続も確認します。
流域は行政界ではなく、中川・綾瀬川等へ雨水が流出する範囲です。さいたま市は見沼区・岩槻区・緑区に指定範囲があり、熊谷市、川口市、加須市、鴻巣市、上尾市、桶川市、北本市にも流域外となる場所があります。指定図と雨水排水先で対象地を確認します。
流域内という一文だけでは、買主が受ける制限が分かりません
この法律で見落としやすいのは、過去の開発で設置された調整池や地下貯留施設です。土地の一部を駐車場にする、既存施設を撤去する、盛土や塀を設けるといった計画が、許可や届出の対象になることがあります。売主の保管資料と行政の許可図書を照合し、施設の位置、管理者、完了検査、維持管理方法を買主へ示します。
水害履歴、洪水・内水ハザードマップ、水防法の浸水想定区域も別に確認します。特定都市河川法に該当しないことは、水害リスクがないという意味ではありません。
指定図、許可図書、施設、買主の利用計画まで確認します
- 売買対象全筆の特定都市河川流域・個別区域の確認
- 雨水浸透阻害行為の許可、変更許可、完了検査の照会
- 雨水貯留浸透施設・保全調整池・管理協定の確認
- 東京都23区・埼玉県の窓口照会と重要事項説明書ドラフト作成
埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応します。標準料金は1物件88,000円(税込)です。
法令名へのチェックだけでなく、買主が受ける具体的な制限まで記載します。
重要事項説明書の作成代行を相談する物件調査から重要事項説明書ドラフト作成まで対応特定都市河川浸水被害対策法のよくある質問
流域内の戸建て売買は、すべて法30条の許可対象ですか?
いいえ。法30条は、指定流域内の宅地等以外の土地で行う雨水浸透阻害行為を対象とします。政令上の規模は1,000㎡以上ですが、条例で500㎡以上1,000㎡未満まで引き下げられる制度があります。2026年10月2日時点で東京都・埼玉県の公式案内は1,000㎡以上です。過去の許可で設置された雨水貯留浸透施設や個別区域の制限がある場合は、敷地面積が1,000㎡未満でも確認が必要です。
ハザードマップに色がなければ、調査は不要ですか?
不要とはいえません。ハザードマップと特定都市河川流域の指定は根拠法令と目的が異なります。特定都市河川の指定図で流域内外を確認し、洪水・内水の浸水想定は別に調べます。
買主が造成を予定していなくても、許可履歴を調べますか?
調べます。許可に伴って設置された雨水貯留浸透施設があれば、買主が維持管理を引き継ぐことや、将来の撤去・改変に許可が必要となることがあります。
埼玉県の1,000㎡未満の土地なら手続はありませんか?
特定都市河川法30条の面積基準だけでは決まりません。都市計画法の開発許可、市町村の条例・要綱、既存施設の改変、貯留機能保全区域等の届出を別に確認します。