市街化調整区域の中古住宅は再建築できる?|開発許可の調べ方
市街化調整区域でも、家が建っていれば買主も建て替えられますか?
市街化調整区域にある中古住宅を仲介します。現に住宅があり、建築確認の記録も見つかりました。買主も将来、同じような住宅へ建て替えられると説明してよいでしょうか。開発許可は何を見れば分かりますか。
建物があることと、買主が再建築できることは別です
現に建物があるだけでは、買主による再建築まで確認できません。先に、誰が、何の用途で、どの許可を受けたかを調べます。そのうえで、買主の利用と将来の建替えが同じ許可内容に収まるかを、所在地の許可権者へ確認します。
市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域です。ただし、一定の開発・建築まで一律に禁止する制度ではありません。土地の区画形質を変える開発行為なら都市計画法29条の開発許可と34条の立地基準、開発許可を受けた区域内なら42条、開発許可区域外で開発行為を伴わない建築等なら43条を切り分けます。
特に分家住宅、農家住宅、自己用住宅など、特定の人の使用を前提に立地が認められた建物は要注意です。埼玉県の公式解説では、A氏の分家住宅をB氏へ売却してB氏が住むことを、建築基準法上は同じ専用住宅でも、都市計画法42条上の「用途変更」として扱う例が示されています。売買による名義変更だけを見て、許可上の利用条件も当然に引き継げるとは判断しません。
市街化調整区域の中古住宅を重説にどう書くかの診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 確認2予定建築物に、分家住宅など使う人の限定はありますか?
- 結論使用者限定の経緯と用途変更を記載
- 結論開発許可の内容と42条の制限を記載
- 確認3建築許可に、使う人を限る条件は付いていますか?
- 結論使用者限定の経緯と用途変更を記載
- 結論建築許可の対象と条件を記載
- 結論許可履歴を未確認と記載し追加照会
- 確認1いまの建物は、都市計画法のどの許可で建てられていますか?結論許可履歴を未確認と記載し追加照会
- 確認2予定建築物に、分家住宅など使う人の限定はありますか?結論使用者限定の経緯と用途変更を記載結論開発許可の内容と42条の制限を記載
- 確認3建築許可に、使う人を限る条件は付いていますか?結論使用者限定の経緯と用途変更を記載結論建築許可の対象と条件を記載
- 開発許可の内容と42条の制限を記載
重説には、許可番号と年月日、開発区域、予定建築物、完了の状況、42条の制限と、その後に受けた42条の許可を書きます。買主の使い方と建替えが許可の内容に合うか、敷地が許可の時から変わっていないかを許可権者へ確認します。
- 建築許可の対象と条件を記載
重説には、許可番号・年月日、許可の対象になった建物・用途・使用者、許可条件を書きます。買主が使う場合や再建築する場合に新しい許可が要るかを、許可権者へ確認します。
- 使用者限定の経緯と用途変更を記載
分家住宅などとして許可された経緯と、第三者が使うと用途変更になり得ることを重説に書きます。一般の買主が住む場合や建て替える場合に許可が要るかを許可権者へ確認し、要るなら申請する人、期限、不許可のときの扱いを売買契約書に定めるかを検討します。
- 許可履歴を未確認と記載し追加照会
照会した資料と窓口、いまの時点で許可の根拠を確認できていないことを重説に書きます。開発登録簿に載っていなくても43条の許可や規則60条の適合証明があることがあるので、地番、建築時期、建築主を示して窓口へ照会し、契約前に回答をもらいます。
許可の基準は許可権者ごとに違います。買主の計画を具体的に示して所在地の許可権者へ確認し、重説には許可が出るとは書きません。
29条・34条・42条・43条は、同じ役割ではありません
| 条文 | 役割 | 売買調査で確認すること |
|---|---|---|
| 29条 | 土地の区画形質の変更を伴う開発行為について、許可の要否を定める入口 | 過去に開発許可を受けたか。今後の造成・区画変更を伴う計画か |
| 34条 | 市街化調整区域で開発許可を受けるため、33条の技術基準に加えて満たす立地基準 | 何号・どの条例・どの審査会基準を根拠に許可されたか |
| 42条 | 開発許可を受けた区域で、完了公告後に予定建築物以外の新築・改築・用途変更を制限 | 許可時の予定建築物、使用者の限定、後の42条許可、現在の利用との一致 |
| 43条 | 市街化調整区域のうち開発許可区域外で、開発行為を伴わない新築・改築・用途変更等を制限 | 過去の建築許可・適合証明、現在の建物、買主の利用・再建築計画 |
- 売買対象の全地番と現在の敷地開発許可の区域と現況敷地が一致するとは限りません。公図、地積測量図、配置図から私道・増減した敷地を含めて照合します。
- 現在の建物と利用者建物登記、建築計画概要書、確認済証・検査済証、現地から、用途・構造・規模・使用者を確認します。
- 過去の都市計画法上の許可・証明29条の開発許可、42条許可、43条許可、都市計画法施行規則60条の適合証明、完了公告・検査の履歴を分けて探します。
- 買主の利用目的と将来計画自宅、賃貸、店舗、事務所などの用途、誰が使うか、建替え・増改築・敷地変更の希望を確認します。『住宅として使う』だけでは質問が足りません。
- 現在の許可権者と現行基準過去の許可庁と現在の相談先が同じとは限りません。所在地ごとの現行窓口、条例、審査基準で確認します。
開発登録簿だけで終わらせず、許可書と買主の計画まで照合します
- 区域区分と売買対象を確定する
公式都市計画地図と担当窓口で市街化調整区域であることを確認し、土地・建物の登記、公図、測量図から全地番と現況敷地を一覧にします。
- 建物が建った時期と根拠資料を集める
建築年月日だけでなく、確認済証・検査済証、建築計画概要書、売主保管の開発許可書・建築許可書・適合証明書、過去の契約書・重説を集めます。建築確認があることだけでは、都市計画法上の許可内容は分かりません。
- 開発登録簿の有無を地番で調べる
29条の開発許可がある場合、開発登録簿の調書と土地利用計画図から、許可年月日・番号、許可を受けた者、区域、予定建築物の用途、完了検査、後の42条許可等を確認します。必ず写しを取得できるか聞きます。
- 登録簿に出ない許可履歴を別に照会する
開発登録簿は開発許可の台帳です。登録簿に見当たらなくても、開発行為を伴わない43条の建築許可や60条適合証明等が存在する可能性があります。許可番号が不明でも、地番・建築時期・建築主を示して照会します。
- 許可区域・予定建築物・現況を重ねる
許可時の土地利用計画図と現在の公図・配置図を比較し、敷地の拡張縮小、建物用途、構造、規模、使用者の限定、未完了や変更許可の有無を確認します。
- 買主の具体的な利用を許可権者へ示す
『一般の買主が自己居住する』『既存建物を除却し、同じ敷地に木造2階建て専用住宅を建築する』など、使用者・用途・規模・構造・敷地変更の有無を具体化して質問します。
- 回答の条件と限界を記録する
回答日、部署、担当者、提示資料、適用条文・基準、追加資料、許可申請の要否、許可を保証する回答か否かを記録します。可能なら制度案内、許可書、登録簿、基準、照会回答等を保存します。
- 重説と売買契約の条件をそろえる
重説には区域、許可履歴、制限、確認できた範囲を具体的に書きます。買主の利用に許可や確認が必要なら、申請者、期限、不許可時の処理を売買契約の停止条件・解除条件等へ反映するか、専門家を交えて検討します。
窓口では、物件の過去と買主の将来を分けて質問します
- 許可履歴『地番○○番○と現存建物について、29条の開発許可、42条・43条の許可、60条適合証明の履歴はありますか。許可番号が不明でも地番と建築時期から調査できますか』
- 許可区域と予定建築物『開発許可区域は現在の敷地全体と一致しますか。予定建築物の用途、規模、構造、使用者に条件はありますか。完了公告・完了検査済みですか』
- 買主による使用『許可を受けた者と異なる一般買主が、この建物を自己居住用住宅として使うことは、都市計画法上の用途変更に当たりますか。事前の42条または43条許可等が必要ですか』
- 買主による再建築『一般買主が既存建物を除却し、同一敷地・同一用途・おおむね同規模の住宅へ建て替える場合、どの条文・現行基準で判断しますか。申請前に追加で必要な資料は何ですか』
- 敷地・用途を変える計画『敷地の一部売却、隣接地の追加、住宅から店舗・賃貸住宅への変更をすると、現在の許可内容から外れますか。新たな開発許可または用途変更許可が必要ですか』
- 回答の根拠『重説の調査記録として取得・保存できる開発登録簿、許可書、適合証明、審査基準、回答書はありますか』
| 確認結果 | 重説に書く要点 | 契約前に残る課題 |
|---|---|---|
| 29条の開発許可あり | 許可番号・年月日、区域、予定建築物、完了状況、42条上の制限と後の変更許可 | 買主の使用・再建築が許可内容と一致するか。敷地変更の有無 |
| 43条の建築許可あり | 許可番号・年月日、許可対象の建物・用途・使用者、許可条件 | 買主への使用変更や再建築で新たな許可が必要か |
| 使用者を限定した許可 | 分家住宅等として許可された経緯と、第三者使用が用途変更になり得ること | 一般買主による使用・再建築の許可見込み。契約条件への反映 |
| 許可履歴を確認できない | 照会した資料・窓口と、現時点で許可根拠を確認できていない事実 | 建物の適法性と再建築可否を未確認のまま断定しない。追加照会を完了する |
本物件は市街化調整区域内にあります。対象土地のうち○○番○は、都市計画法第29条に基づく開発許可(○年○月○日・第○号)の区域内で、予定建築物は自己用専用住宅です。開発登録簿、土地利用計画図および○○市○○課への照会により、現所有者以外の者による居住は同法第42条上の用途変更に該当し、事前許可が必要との回答を得ています。買主による使用・再建築について許可取得を保証するものではありません。
本物件は市街化調整区域内にあり、現存建物に関する都市計画法上の許可履歴を○○市○○課へ照会中です。現時点では、買主による使用、増改築または再建築に必要な許可の要否を確定していません。契約締結前に照会結果を取得し、重説および売買契約の条件へ反映します。
埼玉県は所在地の市町、東京23区は所在地の区が入口です
埼玉県では、開発許可事務を51市町がそれぞれの条例・審査基準・解釈により行い、県は残る12町村を所管しています。県の解説書、いわゆる赤本は県所管12町村の審査基準であり、他の51市町へそのまま当てはめられません。まず埼玉県の許可権者一覧で所在地の窓口を確定し、その自治体の現行基準を確認します。
さいたま市では、西区・北区・大宮区・見沼区・岩槻区は北部都市計画指導課、中央区・桜区・南区・浦和区・緑区は南部都市計画指導課が相談窓口です。開発登録簿は調書と土地利用計画図で構成され、許可年月日・番号、許可を受けた者、開発区域面積、予定建築物用途、工事施行者等を確認できます。閲覧は無料、写しは有料と案内されています。
34条11号・12号に基づく指定区域でも、区域内なら無条件で建築できるわけではありません。区域、予定用途、災害リスク区域の除外、技術基準などを現行条例で確認します。『昔から宅地』『線引き前から家がある』『既存宅地の確認を受けたらしい』という説明だけでも、現在の買主による再建築は確定しません。
東京23区では、市街化調整区域は主要河川・河川敷・海面等に限られるという地域特性があります。ただし、対象地が実際に市街化調整区域なら一般論で省略せず、東京都が公開する一覧から所在地の区の開発許可担当へ確認します。開発許可の相談部署は区ごとに名称が異なります。
許可基準と地域別の公式確認先:国土交通省|開発許可制度の概要埼玉県|開発許可事務の許可権者と窓口埼玉県|開発許可制度の解説埼玉県|11号区域・12号区域の指定状況さいたま市|都市計画法に基づく開発許可等手引書さいたま市|開発登録簿の閲覧方法東京都|開発許可制度東京都|特別区ごとの申請・相談窓口
解体してから再建築できないと分かるのが、最も避けたい順番です

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
調整区域では『建物がある』より、『なぜこの建物を、この人が使えるのか』を調べます。
中古住宅としては利用できても、除却後の新築が同じ扱いになるとは限りません。買主が建替え前提なら、売買前に具体的な建築計画を許可権者へ示します。建築士による建築基準法・接道・インフラ等の確認も別に必要です。
| 見落とし | 起こり得る不利益 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 現存建物だけ見て再建築可と説明 | 除却後に新築許可を得られず、買主の建替え計画、融資、契約目的へ影響する可能性 | 許可履歴と具体的な再建築計画を所管窓口へ示す |
| 分家住宅等の使用者条件を見落とす | 一般買主の居住が用途変更と扱われ、事前許可が必要または利用計画の変更が必要となる可能性 | 許可書、42条・43条履歴、許可時の使用者・資格を確認する |
| 開発登録簿だけで履歴なしと判断 | 43条建築許可や60条適合証明を見落とし、適法性・再建築条件の説明を誤る可能性 | 許可種類を分け、地番・建築時期・建築主から別途照会する |
| 口頭で『たぶん建てられる』とだけ確認 | 前提条件が違う、担当者が変わる、申請時に追加要件が判明するなど、回答を再現できない | 提示資料・質問・回答・根拠基準・回答の限界を記録する |
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 開発登録簿・許可資料の確認、行政窓口への照会、重要事項説明書ドラフト作成
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。
区域区分、許可区域、予定建築物、使用者条件、買主の利用・再建築計画をつなげて調査します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。市街化調整区域と開発許可でよくある質問
市街化調整区域では、土地や中古住宅を売買できませんか?
売買そのものと、買主が予定どおり使用・再建築できるかは別問題です。許可内容や使用者の条件によっては、所有権移転後の使用が都市計画法上の用途変更として扱われる場合があるため、契約前に確認します。
建築確認済証や検査済証があれば、再建築できる証拠になりますか?
それだけではなりません。既存建物の建築基準法上の記録と、買主の将来の再建築に必要な都市計画法上の許可は別に確認します。
開発登録簿に載っていなければ、無許可建築ですか?
直ちには判断できません。開発行為を伴わない43条許可、適合証明、許可不要の行為、古い記録などを別に確認する必要があります。
同じ敷地・同じ専用住宅なら、必ず建て替えられますか?
必ずとはいえません。許可時の用途・使用者、現在の基準、建替えが改築か新築か、規模・構造、接道、敷地変更、他法令の制限を具体的に確認します。
分家住宅を一般の買主へ売ると、何が問題になりますか?
特定の人の自己居住を前提に許可された建物では、別の人が住むこと自体が都市計画法上の用途変更として扱われ、42条または43条の許可が必要となる場合があります。許可書と所在地の現行基準で確認します。
都市計画法43条は、接道義務の43条と同じですか?
違います。この記事の43条は都市計画法の市街化調整区域における建築等の許可です。接道に関する認定・許可は建築基準法43条で、別の部署・基準を確認します。
売買すれば、開発許可の地位も自動的に買主へ移りますか?
一律にはいえません。都市計画法44条の一般承継は相続・法人合併等、45条の特定承継は開発行為を施行する権原の取得と承認に関する制度です。完成済み建物の売買では、所有権移転だけで判断せず、買主の使用・再建築が42条または43条上どう扱われるかを確認します。