借地権がある物件の登記調査|土地・建物・借地契約の照合
土地の乙区に賃借権がなければ、借地物件ではありませんか?
売買対象は建物で、土地は地主名義です。土地登記の乙区に賃借権設定が見当たりません。この場合、借地権はないと判断してよいのでしょうか。重説にはどの資料から書けばよいですか。
いいえ。乙区に登記がなくても、契約上の借地権はあり得ます
借地権は土地の地上権または建物所有目的の土地賃借権です。賃借権の登記がない場合でも、借地借家法10条により、借地権者がその土地上に本人名義で登記された建物を所有していれば第三者へ対抗できる場合があります。土地乙区が空欄という一事だけで借地権なしとは書けません。
調査では、土地登記で地主と登記された用益権を、建物登記で建物所有者と建物の所在を、借地契約で権利種類・対象範囲・期間・地代・更新・譲渡条件を確認します。この三つが対応して初めて、重説の土地に関する権利を記載できます。
借地上の建物共有持分と譲渡承諾については、2026年8月28日最高裁判決を扱った記事で詳しく説明しています。同判決は、借地上の建物持分について借地借家法14条の建物買取請求権が成立しないと判断しています。
借地権を重説にどう書くかの診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論登記された借地権として記載
- 確認2建物の登記名義人は、借地契約の借地権者と同じですか?
- 結論建物登記と借地契約に基づく賃借権
- 結論建物名義の経緯を調べ専門家へ確認
- 確認1土地の乙区に、賃借権か地上権の登記はありますか?結論登記された借地権として記載
- 確認2建物の登記名義人は、借地契約の借地権者と同じですか?結論建物登記と借地契約に基づく賃借権結論建物名義の経緯を調べ専門家へ確認
- 登記された借地権として記載
重説の土地に関する権利には、借地権の種類、対象の土地、期間、地代、登記の順位を書きます。乙区の権利者と建物の登記名義人が同じ人かを確認し、原契約と更新の書面もそろえます。
- 建物登記と借地契約に基づく賃借権
重説には「賃借権登記なし。建物登記および借地契約に基づく土地賃借権」と書きます。原契約、更新の書面、地主への照会の回答をそろえ、対抗力について書くときは、根拠にした資料も書きます。
- 建物名義の経緯を調べ専門家へ確認
建物の登記名義人と借地権者が違うときは、共有・相続・移転のどれで名義が違っているのかを調べ、対抗力があるかを弁護士・司法書士等に確認します。重説には、確認できたことだけを書きます。
地主の譲渡承諾が要るのにまだ取れていないときは、取れていないことを重説に書きます。取得の期限、費用の負担、取れなかった場合の解除と返金は売買契約書に定めます。
借地物件で最初に集める10項目
- 土地全部の登記借地対象が一筆全部か一部か、複数筆かを確定し、土地所有者と乙区の地上権・賃借権等を確認します。
- 建物全部の登記建物所有者、共有持分、所在・家屋番号、未登記建物、区分建物かどうかを確認します。
- 借地契約書と更新書当初契約だけでなく更新契約、覚書、条件変更、建替承諾、地代改定資料を時系列で並べます。
- 権利の種類地上権か土地賃借権か、普通借地権・定期借地権等のどの類型かを契約と登記から確認します。
- 借地対象の範囲・面積地番だけでなく一筆の一部なら図面・測量資料で範囲を特定し、建物配置と照合します。
- 期間・更新・終了条件始期、存続期間、更新履歴、更新料、期間満了時の処理、建物買取り等を確認します。
- 地代・保証金・名義変更料現在額、支払日、滞納、敷金・保証金、承諾料・名義変更料、精算方法を確認します。
- 譲渡・転貸・建替えの承諾誰の承諾が必要で、取得済みか、取得予定か、条件はいくらかを文書で確認します。
- 対抗力の根拠借地権の登記、建物登記、建物の所在・名義等を確認し、対抗力を推測だけで記載しません。
- 売買対象となる持分建物全部か持分か、それに伴う借地権全部か持分かを分けます。共有者・地主の関係も整理します。
土地登記から重説へ書く順番
- 土地と建物を別物件として一覧化する
土地所有者と建物所有者を別列にし、各地番のどの範囲にどの建物があるかを対応させます。
- 土地乙区の用益権を確認する
地上権・賃借権があれば、目的、範囲、存続期間、地代、特約、権利者を読みます。ない場合も調査を終えません。
- 建物登記で所有者と所在を確認する
借地契約の借地権者と建物登記名義人が一致するか、共有・相続・移転の経緯を確認します。
- 契約の現在内容を復元する
原契約から更新・変更・承諾を時系列化し、現在の期間、地代、借地範囲、契約当事者を整理します。
- 地主へ事実照会する
契約存続、滞納、譲渡承諾、承諾条件、保証金、建替え等を文書回答で確認します。
- 重説へ権利内容を具体化する
借地権の種類、対象土地・範囲、期間、地代、更新、登記・対抗力、承諾状況を記載します。
- 未取得承諾を契約条件にする
承諾取得期限、承諾条件、取得できない場合の解除・受領金返還等を売買契約書へ明記します。
登記された借地権と、登記されていない借地権を分けます
土地の権利部(甲区)
| 順位番号 | 登記の目的 | 受付 | 権利者その他の事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 所有権保存 | 平成10年4月1日 第1000号 | 所有者 A(土地所有者) |
土地の権利部(乙区)
| 順位番号 | 登記の目的 | 受付 | 権利者その他の事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 賃借権設定 | 平成20年4月1日 第2000号 | 原因 平成20年4月1日設定/目的 建物所有/存続期間30年/賃借権者 B |
建物の権利部(甲区)
| 順位番号 | 登記の目的 | 受付 | 権利者その他の事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 所有権保存 | 平成20年6月10日 第2100号 | 所有者 B(建物所有者) |
土地乙区に事項がなくても、建物登記と土地賃貸借契約がある例です。
土地の権利部(乙区)
| 確認結果 | 読み方 |
|---|---|
| 乙区事項なし | 登記された所有権以外の権利は見当たらない。借地契約がない、とは断定しない。 |
建物の権利部(甲区)
| 順位番号 | 登記の目的 | 受付 | 権利者その他の事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 所有権保存 | 平成20年6月10日 第2100号 | 所有者 B |
登記外の契約資料
| 資料 | 確認内容 |
|---|---|
| 土地賃貸借契約書・更新覚書 | 土地所有者A/借地権者B/建物所有目的/対象範囲/期間/地代/譲渡承諾条項 |
| 場面 | 重説の独自記載例 | 契約条件 |
|---|---|---|
| 賃借権登記あり・承諾済み | 土地に関する権利:借地権(土地賃借権)。対象・期間・地代・登記順位・承諾日を記載。 | 承諾書、保証金等の承継、決済時書類を確認。 |
| 賃借権登記なし・建物登記あり | 賃借権登記なし。建物登記および借地契約に基づく土地賃借権。対抗力の根拠は確認資料とともに記載。 | 原契約・更新・地主回答、譲渡承諾を条件化。 |
| 譲渡承諾未取得 | 承諾未取得、申請・交渉中等の現在状態を明示。 | 取得期限、費用負担、不取得時の解除・返金を明記。 |
東京23区・埼玉県でも、借地権の確認資料は同じです
借地権の法的枠組みは全国共通です。東京23区では承諾に代わる許可等の借地非訟事件を東京地方裁判所が扱う案内があります。埼玉県内では土地所在地等に応じて管轄裁判所を確認します。通常の重説調査は裁判所へ行くことから始めず、土地・建物登記、借地契約、地主回答を先にそろえます。
借地物件は、登記・契約・承諾の三層で見ます
とくに共有持分の売買では、建物持分と借地権持分、地主の承諾を一つの図にします。2026年最高裁判決のように、建物持分を取得した後の救済まで問題になるため、『借地権あり』という一行で済ませません。
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 土地・建物登記、借地契約、対象範囲、譲渡承諾を照合して重説ドラフトを作成
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。
登記されていない借地権も含め、確認済み事実と未取得の承諾・資料を区別して記載します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。借地権の登記調査でよくある質問
地上権と土地賃借権は同じですか?
どちらも建物所有目的なら借地借家法上の借地権になり得ますが、地上権は物権、土地賃借権は契約上の債権です。登記・契約・承諾の扱いも分けます。
建物登記があれば、必ず借地権を第三者へ対抗できますか?
建物が借地上にあり、登記名義が借地権者と対応することなど具体的要件の確認が必要です。建物登記だけを見て一律に断定しません。
地主の口頭承諾でも売買を進められますか?
承諾内容、対象、条件、承諾料、日付を後から証明できるよう文書化します。未取得なら契約条件にし、取得できない場合の処理も定めます。