重要事項説明書 A 不動産の表示|11

土地所有権の調べ方・書き方|重要事項説明書

普通の土地建物売買なら、権利の種類は「所有権」でよいですか?

売主が土地と戸建てを所有し、土地建物をまとめて買主へ売却します。借地ではありません。このような通常の仲介売買なら、重要事項説明書の土地に関する権利の種類は「所有権」を選べばよいでしょうか。

通常の土地・土地建物の売買は、まず所有権を確認します

はい。売主が売買対象土地の所有権を有し、その所有権を買主へ移転する取引であれば、この欄は「所有権」を選びます。一般的な土地・戸建ての仲介売買は、この形が中心です。

土地に関する権利の種類で所有権にチェックし、借地権を選ばない通常売買の図
売買対象に土地所有権が含まれる通常売買は、第1段の「所有権」を選びます。借地権を選んだ場合だけ、第2段の地上権・土地賃借権を確認します。

ただし、所有権にチェックを入れるだけでは調査完了ではありません。どの土地の、誰の、どれだけの所有権を売るのかを、土地登記の甲区、土地の表示、売買契約書案で一致させる必要があります。

民法206条は、法令の制限内で所有物を使用・収益・処分する権利を所有者に認めています。土地が共有なら各共有者の持分も所有権ですが、一人の単独所有と同じように土地全部を自由に処分できるわけではありません。

土地を借りて建物だけを所有している場合は、この通常型ではありません。借地権のうち土地賃借権となる具体例は、2026年最高裁判決から土地賃借権を読む記事で分けて説明します。

土地の権利は所有権か借地権かの診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

土地・土地建物の売買で権利の種類を選ぶ
確認1売買する物件の土地は、売主が所有していますか?
  • 確認2登記の甲区で、土地の所有者は何人ですか?
    • 結論所有権(対象筆の全部)
    • 結論所有権(共有者全員の持分を明記)
    • 結論所有権(売買する持分を明記)
  • 結論地番ごとに所有権と借地権を記載
  • 結論敷地を使う権利を登記と契約で確認
  1. 確認1売買する物件の土地は、売主が所有していますか?
    結論地番ごとに所有権と借地権を記載
    結論敷地を使う権利を登記と契約で確認
  2. 確認2登記の甲区で、土地の所有者は何人ですか?
    結論所有権(対象筆の全部)
    結論所有権(共有者全員の持分を明記)
    結論所有権(売買する持分を明記)
  • 所有権(対象筆の全部)

    所有権を選びます。私道を含む全部の筆で、甲区の所有者が売主と同じかを確認します。

  • 所有権(共有者全員の持分を明記)

    所有権を選び、売買対象に「A持分2分の1、B持分2分の1」のように各共有者の持分を書きます。共有者全員が売主になっているか、持分の合計が1になるか、筆によって持分が違わないかを確認します。

  • 所有権(売買する持分を明記)

    所有権を選び、売買する持分を書きます。土地を誰がどう使っているか、ほかの共有者は誰か、共有物の管理の状況も確認して書きます。

  • 地番ごとに所有権と借地権を記載

    「101番1は所有権、101番2は借地権(土地賃借権)」のように、地番ごとに権利を書きます。範囲と面積も地番ごとに書き、欄に入らなければ別紙にします。

  • 敷地を使う権利を登記と契約で確認

    敷地を使う権利が、建物所有目的の地上権か土地賃借権か、使用貸借かを、登記と契約書で調べます。土地賃借権の場合の書き方は、借地上の建物売買の記事で説明しています。

抵当権、差押え、仮登記があっても、選ぶのは所有権です。抹消できるか、いつ抹消するかを確認し、登記記録に記録された事項の欄に書きます。

土地に関する権利の種類欄の判断です。宅地建物取引業法35条と民法206条・249条以下に基づき当事務所作成。

所有権と記載する前に確認する8点

  • 土地が売買対象に含まれているか土地建物を売るのか、建物だけを売るのか、土地だけを売るのかを最初に確定します。土地の登記が取得できても、契約上その所有権を売らないなら、この欄を同じようには扱えません。
  • 土地の甲区に記録された所有者は誰か対象となる全筆の最新登記情報を取得し、甲区の現在の所有者を確認します。売主と登記名義人が異なる場合は、相続、住所・氏名変更、他人物売買、代理等の理由を調べます。
  • 単独所有か共有か共有なら、共有者ごとの持分と売買対象となる持分を確認します。共有者全員で土地全部を売る取引と、一人が自己持分だけを売る取引を区別します。
  • 複数筆すべての権利が同じか宅地、私道、ごみ置場、通路等を含む全筆を一覧にし、各筆の所有者と持分を確認します。主たる宅地だけを見て、私道持分を落とさないようにします。
  • 売主に処分権限があるか信託登記、差押え、仮登記、成年後見、法人の代表権、相続未了等があれば、名義だけで売主が単独処分できると判断しません。必要な同意・登記・許可等を確認します。
  • 決済時に所有権を移転できる状態か抵当権等の抹消、相続登記、住所変更登記、農地法上の許可・届出等、移転までに必要な条件を契約・決済工程と照合します。
  • 登記上の土地と現地が対応しているか所在・地番・地目・地積、公図、測量図、現地の利用範囲を照合します。所有権の確認と、境界・面積・占有範囲の確認は別に行います。
  • 借地権や使用貸借が混在していないか建物敷地が複数筆にまたがり、一部は売主所有、一部は第三者所有という場合があります。筆ごとに所有権・借地権・使用関係を対応させます。

甲区から契約書まで、所有権を確認する順番

  • 売買対象の土地を地番で一覧にする

    販売図面や住所だけで始めず、売買対象となる宅地、私道、通路、ごみ置場等を地番単位で整理します。物件所在地の住居表示と地番は別のものです。

  • 全筆の最新登記情報を同じ基準日で取得する

    通常調査では登記情報提供サービスを使い、各筆の表題部・甲区・乙区をPDFで保存します。登記情報は登記事項証明書そのものではないため、証明書が必要な場面とは分けます。

  • 甲区の現在所有者と持分を転記前に表にする

    所有権に関する事項は甲区で確認します。最終順位だけを機械的に見るのではなく、現在効力を有する所有者、共有持分、移転原因、受付年月日を読みます。

  • 売主・登記名義人・契約当事者を照合する

    本人確認資料、法人登記、相続関係資料、委任状等と照合します。住所や氏名が違う場合も、同一人物だと推測せず変更経緯を確認します。

  • 売買対象となる権利の範囲を確定する

    各筆の全部を売るのか、共有持分を売るのかを契約書案へ反映します。売主が持つ持分と売買対象持分が一致しない場合は、その理由を解消するまで確定しません。

  • 乙区とその他の制約を別に確認する

    抵当権、根抵当権、地上権、賃借権等があっても、土地所有権そのものが直ちになくなるわけではありません。ただし、買主が取得する所有権の負担となるため、登記記録に記録された事項として別途説明します。

  • 重説・契約書・決済条件を同じ内容にする

    権利の種類、対象地番、持分、売主、抵当権等の抹消条件を照合します。決済直前にも登記情報を再確認し、調査後の差押えや新たな登記がないか確認します。

所有権でも、単独所有・共有・負担付きで書き方が変わります

権利関係重説作成での確認ポイント
単独所有一人の所有者が土地全部を所有甲区の所有者と売主を照合し、対象全筆の所有権全部が買主へ移ることを確認します。
共有者全員で売却複数人が持分を持ち、全員が土地全部を売却全共有者の持分合計が1になること、全員が売主となること、各筆で共有者・持分が同じかを確認します。
共有持分だけを売却一人が自分の持分だけを第三者へ売却権利の種類は所有権ですが、土地全部の売買ではありません。売買対象持分、使用関係、他の共有者、共有物の管理状況を明確にします。
抵当権等がある所有権所有権に抵当権、差押え、仮登記等が付いている権利の種類は所有権でも、負担を無視できません。抹消の可否と時期を確認し、登記された権利の欄・契約条件と整合させます。
所有権と借地権が混在建物敷地の一部は売主所有、残りは第三者から借りている一つのチェックだけで一括表示せず、地番・範囲ごとに所有権と借地権を整理し、独自別紙等で対応関係を示します。

所有権という結論と、所有権に付いている負担は分けて考えます。例えば抵当権が設定されていても売主は所有者ですが、買主へ負担のない所有権を移す契約なら、決済時の抹消が必要です。

確認できた前提独自の記載例
土地建物を通常売買売主が土地2筆と建物を単独所有し、土地所有権全部を買主へ移転土地に関する権利の種類:所有権。対象土地:上記2筆の全部。
夫婦共有の土地建物を全員で売却土地・建物ともA持分2分の1、B持分2分の1。A・Bがともに売主土地に関する権利の種類:所有権。売買対象:A持分2分の1、B持分2分の1(合計全部)。
宅地と私道持分を売却宅地は所有権全部、私道は持分6分の1を売買対象に含める土地に関する権利の種類:所有権。宅地○番○は全部、私道○番○は持分6分の1。
一部筆だけ借地宅地101番1は所有権、隣接する101番2は建物所有目的の土地賃借権101番1:所有権。101番2:借地権(土地賃借権)。権利・範囲・面積を地番別に表示。
記載例を使う前提

上記は架空例です。実際には利用する最新版書式の選択欄・備考欄・別紙の構成に合わせ、土地の表示と登記記録に記録された事項、売買契約書の目的物を一致させます。

東京23区・埼玉県とも、所有権は土地登記の甲区で確認します

所有権の法的内容や登記の読み方は全国共通です。東京都や埼玉県の都市計画窓口で所有者を確認するものではなく、土地所在地を管轄する法務局の登記記録と当事者資料から確認します。固定資産税資料だけを所有権の確定資料にはしません。

通常の登記調査

登記情報提供サービスで対象全筆の登記内容を確認します。取得したPDF、取得日時、対象地番を案件資料として保存します。これは証明文・公印のある登記事項証明書とは異なります。

東京都23区

東京法務局の本局・出張所が区ごとに不動産登記を管轄します。物件所在地から最新の管轄一覧を確認します。

埼玉県

さいたま地方法務局の本局・支局・出張所が市町村ごとに管轄します。物件所在地から最新の管轄一覧を確認します。

登記事項証明書が必要な場合

証明書そのものが必要なら法務局窓口またはオンライン請求を利用します。ただし、オンライン請求は操作に不慣れな方へ積極的には勧めず、通常調査の確認は登記情報提供サービスを第一選択にします。

確認した公式資料:宅地建物取引業法35条(e-Gov)民法(e-Gov)登記情報提供サービス等の案内(法務省)登記事項証明書の見本(法務省)東京法務局の不動産登記管轄さいたま地方法務局の不動産登記管轄

所有権は簡単に見えて、対象筆と持分の取り違えが起きやすい欄です

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

通常売買なら所有権です。ただし、主たる宅地だけで判断せず、私道持分を含む全筆について、売主・持分・売買対象を一行ずつ合わせます。

よくある見落とし不動産会社が確認すること
住所だけで登記を取った住居表示と地番を区別し、公図・名寄帳・売主資料等から売買対象となる全筆を洗い出します。
宅地は単独所有、私道は共有各筆の持分を個別に確認し、私道持分も売買対象・登記・契約書に入っているかを照合します。
売主と登記名義人の住所が違う本人確認資料と住所沿革を確認し、決済までに必要な住所変更登記を司法書士と整理します。
甲区に信託・差押え・仮登記がある売主の処分権限と移転条件を個別確認し、所有者名だけを見て通常売買として進めません。
乙区に抵当権がある所有権の選択とは別に、抹消可否、残債、抹消書類、同時履行の段取りを確認します。
土地所有者と建物所有者が違う借地権、使用貸借、土地所有者も売主となる取引、相続・登記未了等を切り分け、土地所有権が本当に買主へ移るかを確認します。

所在・地番・地目・地積の転記は、「土地の表示」の記事、境界や図面との照合は、「測量図面と境界確認」の記事もあわせて確認してください。

対象筆・共有持分・売主の権限まで照合したいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。相続・信託・差押え等について個別の登記手続や紛争対応が必要な場合は、業務範囲を確認してご案内します。

土地の全筆、所有者、共有持分、売買対象、登記上の負担を照合し、確認できた権利関係が分かる重要事項説明書ドラフトを作成します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

土地の所有権と重要事項説明書でよくある質問

普通の土地売買なら、権利の種類は所有権ですか?

売主が売買対象土地を所有し、その所有権を買主へ移転する取引なら所有権です。借地上の建物だけを売る場合や、土地を売買対象に含めない場合は別に確認します。

土地が共有でも、権利の種類は所有権ですか?

共有持分も所有権です。ただし、共有者全員で土地全部を売るのか、一人が自己持分だけを売るのかを区別し、売買対象持分を明記します。

抵当権が付いていても所有権を選びますか?

土地の権利の種類は所有権ですが、抵当権は別途説明すべき負担です。決済時に抹消する契約なら、抹消条件と手順を契約書・決済準備で確認します。

売主と土地の登記名義人が違う場合も所有権ですか?

権利の種類の候補は所有権でも、売主がその所有権を移転できるかは別問題です。相続登記未了、住所・氏名変更、代理、他人物売買等の理由と決済までの解消方法を確認します。

土地と建物の所有者が違えば借地権ですか?

直ちに借地権とはいえません。土地所有者も売主になる取引、使用貸借、土地賃借権、地上権、転借、相続・登記未了等が考えられるため、登記と契約関係を調べます。

私道持分も所有権として記載しますか?

売買対象に含む私道持分は所有権です。宅地と私道では持分が異なることがあるため、地番ごとの持分を登記と契約書で対応させます。

地上権や土地賃借権はどのような場合ですか?

売買対象建物が他人の土地上にあり、その敷地利用権が建物所有目的の地上権または土地賃借権である場合です。具体的な土地賃借権の例は、最高裁判決を使った関連記事で説明しています。

この記事は2026年9月3日時点の宅地建物取引業法、民法、法務省・法務局の公開資料と、ユーザー提供の売買用重要事項説明書書式を確認して作成しています。個別の売買では、登記名義、売主の処分権限、売買対象、決済時の所有権移転条件を契約書・登記資料と照合してください。