重要事項説明書 法令上の制限|34

市街地開発事業とは?種類・調べ方・重説の書き方

市街地開発事業とは何ですか?都市計画道路とは違いますか?

重要事項説明書に『市街地開発事業』という欄があります。道路や公園の計画と何が違い、対象地について何を調べればよいのでしょうか。『有』の場合は、事業名だけ書けば足りますか。

一定の区域を区切り、道路・公園と宅地を一体で整備する事業です

市街地開発事業は、一定の区域を面的に整備し、公共施設と宅地・建物をまとめてつくり直す事業です。重説では、対象地が区域内か、事業の種類・名称、計画だけか施行中か、現在かかる建築・譲渡等の制限を調べます。

都市計画道路や都市計画公園は、道路・公園という施設そのものの位置や区域を定める『都市計画施設』です。これに対し、市街地開発事業は、道路や公園だけでなく、その周囲の宅地、街区、建物等を一つの区域として整備します。線や点の計画と、面の計画という違いです。

都市計画法12条は市街地開発事業を7種類に分けています。ただし、同じ区域に用途地域、地区計画、都市計画道路等が重なっていることがあります。市街地開発事業だけ確認して、ほかの都市計画を確認済みと扱うことはできません。

市街地開発事業欄に何を書くかの診断フローチャート

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重説の市街地開発事業欄を書く
確認1対象地は、市街地開発事業の施行区域に入っていますか?
  • 確認2都市計画担当や施行者に確認した事業の段階は、どれですか?
    • 結論「有」と種類・名称、53条の許可
    • 結論「有・施行中」と施行者・個別法の制限
    • 結論完了後も清算金・登記・地番を確認
  • 結論市街地開発事業欄は「無」
  1. 確認1対象地は、市街地開発事業の施行区域に入っていますか?
    結論市街地開発事業欄は「無」
  2. 確認2都市計画担当や施行者に確認した事業の段階は、どれですか?
    結論「有」と種類・名称、53条の許可
    結論「有・施行中」と施行者・個別法の制限
    結論完了後も清算金・登記・地番を確認
  • 市街地開発事業欄は「無」

    市街地開発事業欄は「無」とし、区域境界の根拠資料を保存します。近くの事業が取引に大きく影響しそうなときは、そのことを補足するか検討します。

  • 「有」と種類・名称、53条の許可

    「有」として種類と正式名称を書き、事業計画が未認可であることと、建築に都市計画法53条の許可が要ることを書きます。事業化や着手の時期が未定なら、未定と書きます。

  • 「有・施行中」と施行者・個別法の制限

    「有」として種類・正式名称・施行中であることを書き、施行者、認可・公告、施行期間、個別法の制限を施行者の資料で確認します。土地区画整理事業の場合に確認することは、土地区画整理事業で説明しています。

  • 完了後も清算金・登記・地番を確認

    事業が完了していても、現在の都市計画での扱いを所管に確認し、欄にはその回答どおりに書きます。換地処分等の公告、登記、町名地番の変更、清算金が済んでいるかも確認します。

敷地が区域の境界付近にあるときは、Web地図で決めず、地番を示して所在地の都市計画担当へ確認します。

市街地開発事業の区域内外と事業段階ごとの重説記載の判断です。都市計画法12条・53条と宅地建物取引業法施行令3条に基づき当事務所作成。

都市計画施設は線・点、市街地開発事業は面で確認します

都市計画施設が道路や公園を整備するのに対し、市街地開発事業が区域内の公共施設と宅地を一体で整備する違い
市街地開発事業は、道路一本だけを見る制度ではありません。区域、街区、宅地、公共施設、建物を一体で見るため、売買対象地が区域のどこにあるかを確認します。
種類何を整備する事業か売買調査で特に見ること
土地区画整理事業道路・公園等と宅地の区画を換地方式で整備仮換地、使用収益、減歩、清算金、76条許可
新住宅市街地開発事業大規模な住宅市街地を計画的に整備処分計画、建築義務、買戻し等の個別制限
工業団地造成事業工業団地を計画的に造成造成地の用途・処分条件、事業段階
市街地再開発事業敷地・建物を共同化し、施設建築物と公共施設を整備権利変換、明渡し、施行者、事業計画
新都市基盤整備事業大都市周辺で新都市の基盤と住宅地を整備土地整理、処分・利用に関する制限
住宅街区整備事業共同住宅の供給と公共施設を一体整備換地・施設住宅、使用収益等の個別制限
防災街区整備事業密集市街地を防災性の高い街区へ更新権利変換、建築物・敷地の整備、事業段階
最初は七つを暗記しなくても構いません

重説調査では、対象地が何という事業の区域内なのかを公式図で拾い、その事業の個別法と施行者へ進むことが重要です。埼玉県では土地区画整理事業、東京23区では土地区画整理事業と市街地再開発事業に出会う機会が比較的多いものの、名称だけで制限を推測しません。

公式地図で拾い、都市計画決定と事業の進行を別々に調べます

  • 売買対象の全地番を確定する

    登記情報、公図、測量図から対象地を確定します。住居表示だけでは、区域境界にかかるか判断できません。

  • 公式GISで市街地開発事業レイヤーを見る

    都市計画情報の市街地開発事業を表示し、区域内外、事業の種類、名称を予備確認します。境界付近はWeb画面だけで確定しません。

  • 都市計画決定の内容を確認する

    計画書・計画図、告示年月日・番号、事業の種類・名称・施行区域・面積を確認します。計画決定があることと工事中であることは別です。

  • 施行者と事業段階を特定する

    未着手、事業計画作成中、認可済み、施行中、完了のどこかを確認し、個人、組合、区市町村、都県、都市再生機構等の施行者を特定します。

  • 現在適用される条文を分ける

    都市計画決定段階の都市計画法53条、事業認可後の個別法上の制限、都市計画事業としての65条・67条等を、所管回答で整理します。

  • 買主の利用計画を示して質問する

    建築、増改築、土地の形質変更、有償譲渡、事業用地取得、入居・営業時期への影響を具体的に示します。単に『建てられますか』では回答条件が不足します。

  • 根拠資料と未定事項を保存する

    計画図、事業計画、認可・公告、施行期間、所管回答を保存し、完了時期や補償等の未定事項は未定のまま記録します。

  • 重説の欄を二段階で記載する

    都市計画法欄には市街地開発事業の有無・名称・段階を、法令上の制限欄には現在適用される許可・届出・使用収益等を具体的に記載します。

『有・無』だけで終わらせず、事業段階と制限を続けて書きます

確認結果市街地開発事業欄続けて確認・記載すること
区域外無区域境界の根拠資料を保存。近隣事業が重要な影響を与える場合は別途補足を検討
都市計画決定済み・未着手有(種類・正式名称)都市計画法53条の建築許可、長期未着手・見直し状況、事業化の未定事項
事業計画認可後・施行中有(種類・正式名称・施行中)施行者、認可・公告、施行期間、個別法の制限、用地・権利処理、買主利用への影響
事業完了・換地処分等済み現在の都市計画と所管回答に従う完了・公告、登記・町名地番、未清算金等の残存事項を確認。『完了だから無』と推測しない

都市計画決定のみの記載例(架空)

市街地開発事業:有(○○土地区画整理事業)。対象地は同事業の都市計画施行区域内にありますが、2026年9月13日現在、事業計画は未認可です。区域内で建築物を建築する場合は、原則として都市計画法53条の許可が必要です。事業化・着手時期は未定です。

施行中の記載例(架空)

市街地開発事業:有(○○第一種市街地再開発事業・施行中)。都市計画決定日、事業計画認可日、施行者、施行期間は別紙のとおりです。対象権利と明渡し・権利変換等の取扱いは、施行者発行資料および照会回答を参照してください。

土地区画整理事業は別欄も必要です

土地区画整理事業なら、市街地開発事業欄だけでは足りません。土地区画整理事業の記事で、仮換地、使用収益、清算金、建築制限まで確認します。

埼玉県・東京23区は、所在地と施行者から確認先を決めます

埼玉県では、所在地の市町村の都市計画担当で区域と都市計画決定を確認し、事業の詳細は施行者または土地区画整理・市街地整備担当へ進みます。埼玉県の『彩の国の区画整理』では、施行中・換地処分済み・未着手地区を確認できます。さいたま市では地図情報の『市街地開発事業』と都市計画決定状況を入口にし、地区別のまちづくり事務所・組合等を特定します。

東京23区では、東京都都市計画情報等インターネット提供サービスで予備確認し、東京都の事業一覧から施行者を確認します。区施行、都施行、組合・個人・都市再生機構等で資料の保管先が異なるため、物件所在地の区と施行者の双方へ、どちらが計画図・認可図書・権利関係資料を管理しているか確認します。

  • 区域について『地番○番○は、どの市街地開発事業の施行区域に全部または一部が含まれますか。現在の計画図と告示を確認できますか』
  • 事業段階について『都市計画決定のみですか。事業計画・組合設立等の認可は済んでいますか。施行者と施行期間を教えてください』
  • 現在の制限について『この地番で建築・造成・売買をする場合、現在どの条文の許可・届出・制限が適用されますか』
  • 保存資料について『重要事項説明の根拠として取得・閲覧できる計画図、認可公告、事業計画、証明書、照会回答はありますか』

埼玉県・東京23区の公式確認先:さいたま市地図情報さいたま市|都市計画決定状況埼玉県|彩の国の区画整理東京都都市計画情報等インターネット提供サービス東京都|土地区画整理事業一覧東京都|市街地整備事業地区一覧

事業名より、現在どの段階にあるかが取引へ影響します

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

『区画整理区域です』だけでは、買主が今日受ける制限は分かりません。計画、認可、仮換地、完了を分けて聞きます。

調査・記載の誤り起こり得る不利益防ぎ方
都市計画施設と同じものとして扱う道路部分だけを見て、区域全体の権利・土地利用変更を落とす可能性都市計画施設レイヤーと市街地開発事業レイヤーを別確認
計画決定を工事中と説明する着手時期や移転等が確定したように誤認させる可能性都市計画決定、認可、施行中を別記載
有・無だけ記載する建築許可、譲渡手続、仮換地、権利変換等の重要な制限が伝わらない事業種類に応じた個別法と施行者資料へ進む
完了地区を無条件で調査終了する登記停止期間、地番変更、清算金等の残存事項を見落とす可能性完了公告・登記・精算状況まで確認
区域・事業段階・個別法を一案件として整理したいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 市街地開発事業の区域・施行者・事業段階・法令制限の確認から重要事項説明書ドラフト作成まで

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

都市計画決定と事業の認可・進行を分け、現在の買主に関係する制限を根拠資料とともに整理します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

市街地開発事業についてよくある質問

市街地開発事業と都市開発事業は同じですか?

法令上の欄を確認するときは、都市計画法12条の『市街地開発事業』という正式名称を使います。一般的な『都市開発』という言葉だけでは、法定の事業種類や区域内かを確定できません。

都市計画道路が区域内にあれば、市街地開発事業も有ですか?

自動的に有にはなりません。都市計画道路は都市計画施設です。別途、市街地開発事業の都市計画区域に対象地が含まれるかを確認します。

計画決定だけで、まだ工事をしていなくても書きますか?

対象地が現在の市街地開発事業の施行区域内なら、有として種類・名称と計画段階を記載し、都市計画法53条の建築制限等を確認します。工事中とは書きません。

市街地開発事業が完了していれば、調査は不要ですか?

不要とは限りません。現在の都市計画上の扱い、完了・換地処分等の公告、登記、町名地番、清算金等の残存事項を所管へ確認します。

土地区画整理事業はすべて都市計画に定められますか?

すべてを一律には扱えません。土地区画整理事業には都市計画事業として行われるものと、個人・組合等によるものがあります。都市計画GISだけで終わらず、施行地区・施行者の情報も確認します。

この記事は2026年9月13日時点の都市計画法、宅地建物取引業法施行令、国土交通省、埼玉県、さいたま市、東京都の公式資料を確認して作成しています。市街地開発事業の区域・事業段階・施行者・制限は個別地区ごとに異なるため、対象地番と資料を示して所管へ確認してください。