重要事項説明書 法令上の制限|34-1

土地区画整理事業とは?仮換地・清算金と重説の書き方

土地区画整理事業中の土地は、普通の土地と何が違いますか?

売買物件が土地区画整理事業の区域内にあります。登記には古い地番と面積が載っていますが、現地では別の区画を使っているようです。何を売買し、重要事項説明書には何を書けばよいのでしょうか。

登記上の従前地と、実際に使う仮換地をセットで調べます

仮換地指定後・換地処分前の売買では、所有権と登記は従前地にあり、使用収益する場所は仮換地になるのが基本です。重説では、両方の土地を対応させ、事業段階、仮換地の位置・面積・使用開始日、76条の建築制限、換地処分、清算金等を記載します。

土地区画整理事業は、道路・公園等を整備しながら、ばらばらな形の宅地を利用しやすい区画へ配置し直す事業です。道路・公園や事業費に充てる土地を確保するため、一般に従前地より換地の面積は小さくなります。この土地の提供を減歩といいます。面積が減ることだけで損得を判断せず、位置・形状・道路付け等を含む土地の価値で考えます。

換地処分まで所有権の対象は従前地のままなので、仮換地を売買するときも、法律上は従前地について所有権移転登記をします。一方、引渡しや利用、価格、面積の説明は仮換地を中心に行われます。この二重構造が、通常の土地売買との最大の違いです。

土地区画整理事業の土地を重説にどう書くかの診断フローチャート

当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。

土地区画整理事業の区域内の土地を売買する
確認1売買する土地は、保留地予定地ですか?
  • 結論保留地の契約上の権利と融資を確認
  • 確認2施行者に確認した事業の段階は、どれですか?
    • 結論事業名・計画区域と53条を記載
    • 結論事業計画・76条と仮換地指定予定
    • 確認3仮換地の使用収益は、もう始められますか?
      • 結論従前地と仮換地を対応させて記載
      • 結論使用収益開始日と引渡し条件を記載
    • 結論公告日・換地と登記できない期間を記載
  1. 確認1売買する土地は、保留地予定地ですか?
    結論保留地の契約上の権利と融資を確認
  2. 確認2施行者に確認した事業の段階は、どれですか?
    結論事業名・計画区域と53条を記載
    結論事業計画・76条と仮換地指定予定
    結論公告日・換地と登記できない期間を記載
  3. 確認3仮換地の使用収益は、もう始められますか?
    結論従前地と仮換地を対応させて記載
    結論使用収益開始日と引渡し条件を記載
  • 事業名・計画区域と53条を記載

    仮換地はまだ指定されていないので、買主が使うのは従前地です。重説には、事業名、計画区域、未着手であること、都市計画法53条の許可、事業化の時期(未定なら未定)を書きます。

  • 事業計画・76条と仮換地指定予定

    この段階では、登記も使用も従前地のままです。重説には、事業計画、施行者、施行期間、土地区画整理法76条の許可、仮換地指定の予定、移転・工事の予定を書きます。

  • 使用収益開始日と引渡し条件を記載

    仮換地が指定されていても、使用収益開始日まではその土地を使用できません。重説には、指定日と使用収益開始日、使用できない期間、76条の許可、引渡しの条件を書きます。

  • 従前地と仮換地を対応させて記載

    従前地の全筆と、仮換地の街区・地積・図面を対応させて書きます。使用収益開始日、76条の許可、換地処分の予定、清算金も書き、清算金の帰属は売買契約の特約で定めます。

  • 保留地の契約上の権利と融資を確認

    重説には、売主がだれか、買主が得るのが契約上の権利であること、使用収益、換地処分後の所有権移転、契約を解除できる場合を書きます。換地処分前は通常の所有権移転登記と抵当権設定ができないので、施行者の取扱いと金融機関の融資条件を契約前に確認します。

  • 公告日・換地と登記できない期間を記載

    公告日、換地の地番・地積、清算金の帰属を重説に書きます。施行者が換地登記をする間はほかの登記が制限されるので、決済の時期を施行者と司法書士へ確認します。

仮換地の位置・地積、使用収益開始日、清算金は、地区の施行者へ確認します。換地処分の時期や清算金の額が未定なら、未定と書きます。

土地区画整理事業の段階ごとの重説記載の判断です。土地区画整理法と、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に基づき当事務所作成。

換地処分までは、登記と使用する土地がずれることがあります

都市計画決定、事業認可、仮換地指定、換地処分、換地登記と清算金までの流れと、登記・使用場所の変化
仮換地指定後も、換地処分の公告までは所有権の対象と登記は従前地にあります。仮換地は、従前地の権利に基づいて使用収益する場所です。

従前地

区画整理前から所有権等の対象となっている土地。換地処分前は、原則として登記もこの土地について行います。

減歩

道路・公園等の公共用地や保留地を生み出すため、地権者の土地を事業後に一定程度減らす仕組み。公共減歩と保留地減歩があります。

仮換地

換地処分前に、従前地に代わって使用収益する土地として指定される区画。指定日と使用収益開始日が同じとは限りません。

換地・換地処分

事業後に従前地に代わる土地と、その権利関係を法的に移行させる処分。公告の翌日から換地が従前地とみなされます。

保留地

施行者が事業費等へ充てるため換地として定めず、処分する土地。仮換地とは法的な成り立ちと登記時期が異なります。

清算金

従前地と換地の評価上の不均衡を金銭で調整するもの。徴収か交付か、金額、誰が負担・受領するかを確認します。

施行者へ行く前に従前地を確定し、仮換地資料と一筆ずつ結びます

  • 売買対象となる従前地を全筆確認する

    登記情報、公図、地積測量図、売主資料から、所有者、地番、地目、地積、共有持分、抵当権等を確認します。仮換地の街区番号だけでは登記対象を特定できません。

  • 地区名・施行者・事業段階を特定する

    都市計画図と地区一覧で予備確認し、都市計画決定、事業計画・組合設立等の認可、仮換地指定、工事、換地処分のどの段階かを施行者へ確認します。

  • 事業計画と施行区域を取得する

    正式名称、施行者、認可・公告、施行期間、設計概要、資金計画、換地処分予定を確認します。予定日は変更され得るため、確認日と未定事項を残します。

  • 仮換地指定通知・証明と仮換地図を確認する

    指定日、効力発生日、使用収益開始日、街区番号・符号、地積、位置、接道、分割・合併、従前地との対応を確認します。売主の通知書だけでなく、施行者が発行・閲覧する現行資料と照合します。

  • 現地と仮換地図を照合する

    街区杭、道路・宅地工事、使用可能部分、越境、上下水道、造成高、引渡し可能時期を確認します。仮換地指定済みでも、使用収益開始前なら直ちに使えるとは限りません。

  • 76条の建築行為等の制限を確認する

    土地の形質変更、建築物・工作物の新築・改築・増築、移動困難な物件の設置・堆積について、許可権者、施行者との事前協議、許可条件を確認します。

  • 面積と代金精算の基準を決める

    従前地の登記地積、仮換地指定地積、現地測量面積、将来の換地地積を混同せず、どの面積で価格を定め、差異を精算するか契約と重説を一致させます。

  • 清算金・仮清算金・賦課金を確認する

    徴収・交付・未定、見込額、確定時期、分割納付、組合賦課金等を施行者へ聞きます。売主・買主のどちらが負担・受領するかは、重説だけでなく売買契約の特約にも明記します。

  • 売買・融資・登記手続を事前に合わせる

    従前地の所有権移転登記、施行者への権利者変更届等、金融機関の担保評価、換地処分公告後の登記停止期間を、施行者・司法書士・金融機関と確認します。

  • 重説へ事実と未定事項を分けて記載する

    地区名、段階、仮換地、使用収益、換地処分予定、清算金、建築制限、添付資料を記載し、予定や見込を確定事項のように書きません。

事業段階ごとに、調べる資料と記載内容が変わります

状態土地の扱い重説で重点的に書くこと
都市計画決定のみ仮換地はまだない。従前地を使用事業名、計画区域、未着手、都市計画法53条、事業化時期が未定であること
事業認可後・仮換地指定前従前地を登記・使用。事業工事等の影響あり事業計画、施行者、施行期間、76条、仮換地指定予定、移転・工事予定
仮換地指定済み・使用開始前登記は従前地。仮換地もまだ使用できない指定日と使用収益開始日、使用できない期間、76条、引渡し条件
仮換地を使用中登記・所有権は従前地、使用収益は仮換地従前地全筆、仮換地街区・地積・図面、使用開始、清算金、76条、換地処分予定
保留地予定地換地処分前は施行者が将来取得する土地についての契約上の権利売主・契約上の権利、使用収益、代金、換地処分後の所有権移転、融資・担保、解除条件
換地処分公告後公告翌日に権利が換地へ移行。施行者が換地登記公告日、換地、登記停止期間、清算金の帰属、地番・地積、引渡し・決済時期

仮換地売買の記載例(架空)

本物件は○○土地区画整理事業施行地区内にあり、従前地○番○ほか1筆に対して、2026年6月1日付で仮換地○街区○画地(指定地積123.45㎡)が指定されています。使用収益開始日は同年8月1日です。換地処分の公告までは所有権および登記は従前地に存し、使用収益は仮換地について行います。仮換地図・指定証明を別添します。

建築制限の記載例(架空)

換地処分の公告日までは、施行地区内で土地の形質変更、建築物・工作物の新築、改築または増築等を行う場合、土地区画整理法76条1項の許可が必要です。申請前に事業施行者との事前協議が必要です。

清算金が未定の場合の記載例(架空)

清算金は徴収・交付の別および金額とも未定です。換地処分後に施行者から徴収または交付される清算金その他区画整理事業に関する金銭の帰属は、売買契約の特約で定めます。2026年9月13日、施行者○○課へ確認。

清算金は『未定』で終わらせません

国土交通省は、仮換地の売買等では、換地処分の公告後に土地所有者・借地人等へ清算金の徴収または交付があり得る旨を重要事項説明書へ記載して説明するよう示しています。金額が未定でも、その可能性と売主・買主間の帰属を契約で明確にします。

埼玉県・東京23区では、県や都だけでなく地区の施行者へ確認します

埼玉県は『彩の国の区画整理』で県内の施行中・施行済み・未着手地区を確認できます。ただし、個別地番の仮換地、清算金、工事、使用収益開始日は各施行者が管理します。さいたま市では、市施行、都市再生機構施行、組合施行ごとに窓口が分かれており、公式の地区別一覧から該当するまちづくり事務所・組合等へ進みます。

東京23区では、東京都の土地区画整理事業一覧で地区名と施行者を確認し、区施行なら区の担当課、都施行なら所管の市街地整備事務所、組合・個人・都市再生機構等なら各施行者へ確認します。東京都施行の一部地区では、仮換地指定証明・仮換地証明の交付や仮換地図の閲覧案内が公開されています。

  • 従前地との対応『従前地○番○ほか全筆に対応する仮換地の街区番号、指定地積、位置を確認できる最新の証明・図面は何ですか』
  • 使用収益『仮換地指定の効力発生日と使用収益開始日はいつですか。現在、引渡し後すぐに使用・建築できますか』
  • 事業と工事『換地処分・登記・工事完了の予定、敷地周辺の工事、道路・上下水道の供用予定に未定事項はありますか』
  • 金銭『清算金、仮清算金、賦課金等は徴収・交付・未定のどれですか。見込額、確定時期、権利者変更時の届出はありますか』
  • 建築と売買『76条許可の窓口と事前協議先、売買後に必要な権利者変更等の手続、施行者の承諾・届出の要否を教えてください』

埼玉県・東京23区の公式確認先:埼玉県|彩の国の区画整理さいたま市|土地区画整理事業のしくみさいたま市|地区別のお問い合わせ先さいたま市|土地区画整理法76条の許可東京都|土地区画整理事業一覧東京都|仮換地指定証明・仮換地証明東京都|仮換地売買の留意点

仮換地図だけでなく、売買後に誰へ何が来るかまで確認します

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

区画整理の土地は、位置と面積だけでは終われません。清算金、賦課金、登記、使用開始を一つずつ施行者へ聞きます。

調査・記載の誤り起こり得る不利益防ぎ方
仮換地だけを物件表示に書く所有権移転登記の対象となる従前地が特定できず、契約・登記と利用地が不整合になる可能性従前地全筆と仮換地を対応表・図で結ぶ
指定日だけ確認する使用収益開始前で、引渡し後も利用・建築できない可能性効力発生日と使用収益開始日を別確認
仮換地面積を登記地積と書く代金精算、融資、将来の換地地積について誤解が生じる可能性登記地積・指定地積・実測面積を別表示
清算金を未定の一語で終える換地処分後に想定外の徴収や、交付金の帰属をめぐる争いが生じる可能性可能性を説明し、契約で負担・受領者を明記
保留地を普通の仮換地として扱う換地処分前の所有権・登記・担保設定を誤認し、融資や決済が成立しない可能性施行者との契約、所有権取得時期、融資条件を個別確認
換地処分直後に通常決済を組む施行者の換地登記中は他の登記が制限され、予定日に所有権移転登記ができない可能性公告・登記作業期間を施行者と司法書士へ事前確認
従前地・仮換地・清算金を一案件として整理したいときは

物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します

  • 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
  • 施行者への照会、従前地と仮換地の照合、建築制限・清算金の確認から重要事項説明書ドラフト作成まで

標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。

登記、仮換地図、施行者回答、契約条件を照合し、買主が取得・利用する土地と将来負担を整理します。

物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。

土地区画整理事業についてよくある質問

仮換地は登記されていますか?

換地処分前は、原則として所有権と登記は従前地にあります。仮換地の位置・地積は、施行者の仮換地指定通知・証明・仮換地図等で確認します。

仮換地指定後でも土地を売買できますか?

売買は可能ですが、法律上は従前地を売買し、従前地について所有権移転登記をします。仮換地の使用収益、施行者への手続、清算金等を契約前に整理します。

仮換地の面積が、将来の登記面積になりますか?

必ず一致するとは限りません。仮換地指定地積と換地処分後の地積に差が生じる可能性、測量増減、清算金との関係を施行者へ確認します。

清算金の額が未定なら、重説へ書かなくてもよいですか?

書かない扱いにはしません。徴収・交付があり得ること、現時点で未定であること、契約当事者間の帰属を説明・記載します。

土地区画整理法76条の許可があれば、必ず希望どおり建てられますか?

76条許可だけで建築可能性のすべてが確定するわけではありません。建築基準法、用途地域、道路、地区計画、造成・インフラ条件等も別途確認します。

保留地でも住宅ローンは使えますか?

一律にはいえません。換地処分前は通常の所有権移転登記・抵当権設定ができないため、施行者の取扱い、金融機関の保留地融資、保証・担保手続、換地処分時期を契約前に確認します。

この記事は2026年9月13日時点の土地区画整理法、宅地建物取引業法施行令、国土交通省、埼玉県、さいたま市、東京都の公式資料を確認して作成しています。仮換地・保留地の処分、清算金・賦課金、融資・登記の取扱いは地区、施行者、契約時点、金融機関等で異なるため、個別案件は施行者・登記担当・金融機関へ確認してください。