重要事項説明書の「取引態様」とは?取引の種類との違いと書き方
売主側の業者なら「売主」に印を付けるのでしょうか?
自社は売主から依頼を受けている不動産会社です。重要事項説明書の取引態様は「売主」と「媒介」のどちらを選べばよいでしょうか。上にある「売買・交換」との違いも分かりません。
取引の種類は「売買」、宅建業者の取引態様は「媒介」です
通常の仲介売買では、上段の取引の種類は「売買」、下段の宅建業者の取引態様は「媒介」です。「売買」と「媒介」は同じレイヤーの選択肢ではありません。

上段では、今回の取引が売買か交換かを選びます。下段では、記載する宅建業者ごとに、その会社の取引態様が売主・代理・媒介のどれに当たるかを選びます。土地、土地建物、区分所有建物の売買書式に共通する最初の項目です。
売主・代理・媒介のどれを選ぶかの診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 結論取引態様は「売主」
- 確認2売主か買主から、どんな依頼を受けていますか?
- 結論取引態様は「代理」
- 結論取引態様は「媒介」
- 結論代理契約書・委任状で権限を確認
- 確認1自社が、売買契約の売主ですか?結論取引態様は「売主」
- 確認2売主か買主から、どんな依頼を受けていますか?結論取引態様は「代理」結論取引態様は「媒介」結論代理契約書・委任状で権限を確認
- 取引態様は「売主」
売買契約書案の売主欄が自社になっているかも確認します。
- 取引態様は「代理」
誰の代理なのかと代理権の範囲を、代理契約書や委任状で確認します。
- 取引態様は「媒介」
売主側の業者でも、専任媒介でも、売買契約を結ぶ代理権を受けていなければ、取引態様は「媒介」です。
- 代理契約書・委任状で権限を確認
販売協力や連絡窓口をしているだけでは、「代理」とは決められません。売買契約を結ぶ権限を受けているかを、代理契約書や委任状で確認してから選びます。
取引の種類の欄は、契約が売買か交換かで選びます。宅建業者が2社以上関与するときは、会社ごとに取引態様を選びます。
上段と下段を分けて確認する4点
- 契約は売買か交換か売買契約書・交換契約書の案を確認し、取引の法的な種類を先に決めます。
- 契約当事者として売るのは誰か登記事項証明書だけでなく、売買契約書案の売主欄を確認します。自社が契約当事者として売るときに「売主」となります。
- 契約締結の代理権があるか代理契約書や委任状等で、誰を代理するのか、売買契約を締結できるのか、権限の範囲を確認します。
- 関与する宅建業者は何社か売主側・買主側に別の業者がいる場合も、元付・客付という呼び方ではなく、各社の契約上の立場を個別に判定します。
取引関係を確認して記載する順番
- 売主・買主・関与業者を並べる
契約書案を基準に、契約当事者と、売主側・買主側で関与する宅建業者を一度書き出します。
- 所有者と契約上の売主を照合する
登記事項証明書で所有者を確認し、売買契約書案の売主と照合します。異なる場合は、取引態様とは別に売主の表示や他人物売買の検討が必要です。
- 媒介契約・代理権限を確認する
媒介契約書があるから「媒介」、という確認に加え、代理の場合は契約締結権限まで付与されているかを確認します。単なる連絡窓口や販売協力だけでは代理と決められません。
- 宅建業者ごとに取引態様を判定する
自社が契約当事者なら売主、本人に代わって契約を成立させる権限があれば代理、契約成立を取り持つ立場なら媒介と整理します。
- 広告・契約書・重説を突き合わせる
広告やレインズ登録の取引態様を参考にしつつ、最終的な契約関係と一致するかを確認します。途中で取引の組み方が変わった場合は、そのまま転記しません。
媒介・代理・売主の違いと記載例
売主
宅建業者自身が売買契約の当事者として物件を売る場合です。自社所有物件を自社が売る一般的なケースでは、上段の取引の種類は「売買」、下段の取引態様は「売主」です。
代理
売主または買主から代理権を受け、本人のために契約を成立させる場合です。民法99条では、代理人が権限内で本人のためにした意思表示は、本人に直接効力を生ずるとされています。
媒介
宅建業者自身は契約当事者にも代理人にもならず、売主と買主の契約成立を取り持つ場合です。一般に「仲介」と呼ばれる取引は「媒介」に当たります。
以下は売買契約を前提とした整理です。実際には、契約書案、媒介契約書、代理権限を示す書類と一致させます。
売主から売却の仲介を受託
上段の取引の種類は「売買」、下段の自社の取引態様は「媒介」。売主側の業者、元付業者というだけで「売主」にはなりません。
自社所有物件を自社で販売
上段の取引の種類は「売買」、下段の自社の取引態様は「売主」。売買契約書の売主欄にも自社が記載されます。
売主から契約締結の代理権を受けた
上段の取引の種類は「売買」、下段の自社の取引態様は「代理」。代理する本人と代理権の範囲を資料で確認します。
売主側と買主側に別の仲介業者がいる
売主側業者・買主側業者とも、契約成立を取り持つ立場であれば各社の取引態様は「媒介」です。関与業者ごとの欄へ分けて記載します。
東京23区・埼玉県でも判定方法は同じです
取引態様は宅地建物取引業法に基づく全国共通の区分です。東京都や各区、埼玉県や市町村の窓口へ行って調べる欄ではなく、取引当事者と自社の契約関係から判定します。
社内で確認する資料
売買・交換契約書案、媒介契約書、代理契約書・委任状等、広告・レインズ登録内容を確認します。
法務局資料で確認すること
登記事項証明書で物件所有者を確認します。ただし、所有者が分かるだけでは、自社が媒介か代理かまでは判定できません。
個別確認が必要な場合
登記名義人と売主が異なる、複数契約を前提とする、販売提携の権限が不明確など、通常の3区分へ直ちに当てはめにくい場合は、契約関係を先に整理します。
確認した公式一次資料:宅地建物取引業法34条・34条の2・34条の3(e-Gov法令検索)民法99条(e-Gov法令検索)宅地建物取引業法関係(国土交通省)不動産取引に関するお知らせ(国土交通省)
名称ではなく契約上の権限で判断します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
実務で混同しやすいのは、「売主側の業者だから売主」「専任媒介だから代理」と考えてしまうことです。売主側・買主側、元付・客付は取引上の呼び方であり、この欄の法的な区分そのものではありません。
専属専任媒介・専任媒介・一般媒介は、いずれも媒介契約の種類です。売買契約を本人に代わって締結する代理権まで受けていなければ、取引態様は「代理」ではなく「媒介」と整理します。
広告作成時の表示をそのままコピーするのではなく、重説作成時点の契約書案と受託関係で再確認することが重要です。取引の組み方が変わったときは、広告、媒介・代理契約、重要事項説明書、売買契約書の整合を取り直します。
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。
契約関係と物件資料を突き合わせ、重説の各欄までまとめて整理します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。取引態様でよくある質問
売主側の仲介業者は「売主」になりますか?
なりません。宅建業者自身が売買契約の売主となる場合が「売主」です。売主から売却の仲介を受託している場合は、売主側の業者であっても「媒介」です。
専任媒介契約を結んでいれば「代理」ですか?
専任媒介は媒介契約の一種なので、それだけで代理にはなりません。本人に代わって売買契約を成立させる代理権を受けているかを、代理契約書や委任状等で別に確認します。
両手仲介の場合の取引態様はどうなりますか?
同じ宅建業者が売主側・買主側の双方から仲介を受託していても、契約当事者や代理人ではなく契約成立を取り持つ立場であれば、取引態様は「媒介」です。
宅建業者が2社関与するときは、どちらか1社だけ書けばよいですか?
関与する宅建業者ごとに、その会社の免許情報と取引態様を記載します。売主側・買主側という呼称だけでまとめず、各社が売主・代理・媒介のどれに当たるかを個別に確認します。
広告に書いた取引態様をそのまま転記してよいですか?
広告は確認資料の一つですが、そのまま転記せず、重説作成時点の契約書案、媒介契約、代理権限と一致するかを確認します。取引の組み方が変わった場合は関係書類も見直します。