検査済証がない建物・増築がある戸建てはどう調べる?重説の書き方
検査済証が見つからず、増築もある戸建てはどう調べますか?
中古戸建ての売却相談を受けました。売主の手元に検査済証がありません。売主は『平成○年頃、1階南側に約○㎡の居室を増築した』と説明していますが、増築部分は建物登記に記録されていません。違反建築と説明するべきでしょうか。何を調べて、重要事項説明書にはどう書けばよいでしょうか。
検査済証の紛失・未交付と、増築の手続を分けて調べます
売主の手元に検査済証がないだけでは、完了検査を受けていないとは限りません。まず行政台帳に検査済証の交付記録があるかを確認します。交付記録がなければ、確認申請の記録、工事時期、当時の制度、現況を調べます。増築がある場合は、当初建物と増築部分を分けて、建築確認・完了検査・登記の各手続を確認します。
検査済証、建築計画概要書、建築台帳記載事項証明書、建物登記は役割が違います。建物登記に増築部分が記録されていても、建築確認を受けたことの証明にはなりません。反対に、建築確認の記録があっても、増築登記が済んでいるとは限りません。
新築時の建築確認・中間検査・完了検査の調べ方は、建築確認・中間検査・完了検査の記事で先に整理しています。この記事では、検査済証の交付記録がない場合と、新築後に増築された場合を詳しく扱います。
検査済証がない戸建ての重説の書き方の診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 確認2台帳に、検査済証を交付した記録はありますか?
- 結論検査済証の交付記録を記載
- 結論窓口に確認し、交付記録なしと記載
- 結論登記・課税台帳で調べて再照会
- 確認3増築部分の確認済証・検査済証の記録はありますか?
- 結論増築の確認済証・検査済証の番号を記載
- 結論増築部分の手続は未確認と記載
- 確認1新築のあとに増築した部分はありますか?
- 確認2台帳に、検査済証を交付した記録はありますか?結論検査済証の交付記録を記載結論窓口に確認し、交付記録なしと記載結論登記・課税台帳で調べて再照会
- 確認3増築部分の確認済証・検査済証の記録はありますか?結論増築の確認済証・検査済証の番号を記載結論増築部分の手続は未確認と記載
- 検査済証の交付記録を記載
売主から検査済証の原本の提示がないことと、建築台帳記載事項証明書で確認した検査済証の番号・年月日を書きます。
- 窓口に確認し、交付記録なしと記載
完了検査を受けなかったのか、古くて記録が残っていないのかを、建築担当窓口に確認します。重説には、確認済証の番号・年月日を書き、検査済証は売主の資料でも台帳でも交付記録を確認できなかったと書きます。
- 登記・課税台帳で調べて再照会
登記と固定資産課税台帳などで新築の時期、構造、床面積を確認し、建築当時の地名地番と建築主名で建築担当窓口へもう一度照会します。それでも見つからないときは、重説に「台帳で交付記録を確認できない」と書きます。
- 増築の確認済証・検査済証の番号を記載
増築の時期と面積、増築についての確認済証・検査済証の番号を書きます。登記の床面積と現況が合っているかも確認します。
- 増築部分の手続は未確認と記載
工事当時に確認申請が必要な増築だったかを、建築担当窓口と建築士に確認します。重説には、増築部分の位置とおよその面積、売主から聞いた工事の時期、確認済証・検査済証・台帳の記録を確認できなかったことを書きます。
増築がある建物は、新築のときの検査済証の記録も台帳で調べます。増築部分が登記されていないときは、そのことも重説に書きます。
最初に四つの状態を区別します
| 確認結果 | 意味 | 次に調べること |
|---|---|---|
| 検査済証の原本はないが、交付記録がある | 行政台帳が保存されていれば、原本を紛失していても検査済証の番号・年月日を確認できる場合です。 | 台帳記載事項証明書等を取得し、交付記録を保存します。その後の増改築がないかを別に確認します。 |
| 確認済証の記録はあるが、検査済証の記録がない | 工事前の計画確認は確認できますが、完了検査の合格は確認できない状態です。 | 完了検査を受けなかったのか、古い記録を取得できないのかを所管へ確認します。現況の適合性は別途調べます。 |
| 確認・検査の記録を特定できない | 建築当時の地名地番や建築主が分からず、対象建物を台帳上で特定できない場合と、対象を特定しても台帳が現存しない場合があります。 | 登記と固定資産資料から新築・増築の時期、構造、床面積を確認し、売主資料と現況を照合します。その情報を基に、当時の所管と記録の保存状況を照会します。 |
| 検査済証の交付後に増築されている | 新築時の検査済証は、後から行った増築の手続や適法性まで示しません。 | 増築部分の確認済証・検査済証・図面・登記、工事時期、床面積、用途を個別に調べます。 |
国土交通省は、完了検査を受ける義務があったのに検査済証の交付を受けていない場合の手続違反を明らかにする一方、検査済証が交付されていないことだけで、直ちに違反建築物への措置が必要と判断されるものではないと示しています。重説では、交付記録がない事実と、現況の適合性を分けて説明します。
売主資料から現況まで、時系列で照合します
- 売主から新築時と増改築時の資料を集める
新築時と増改築時の確認済証・検査済証・確認申請書副本・設計図・竣工図を確認します。工事の時期と範囲は、工事請負契約書、見積書、領収書、増改築等工事証明書で確認します。『いつ、どこを、誰に頼んで工事したか』も聞き取ります。
- 建物登記と固定資産資料を確認する
建物登記の新築・増築年月日、構造、床面積を確認します。固定資産課税台帳、名寄帳、家屋図面等を取得できる場合は、課税上の床面積や形状も確認します。ただし、登記や課税の記録だけで建築基準法上の手続済みとは判断しません。
- 行政の建築記録を取得する
建築計画概要書、処分等の概要書、建築台帳記載事項証明書のうち、所在地・確認年度に応じて取得できる資料を確認します。各資料に記載された範囲で、新築時と増築時の確認・完了検査の番号、年月日、交付機関を調べます。現在の住所だけで見つからない場合は、建築当時の地名地番と建築主名でも照会します。
- 現地で増築の可能性がある部分を確認する
外形、各階の間取り、床面積、建物位置、外壁・屋根の継ぎ目を確認します。サンルーム、物置、車庫、バルコニー下の囲い込み、1階の部屋・浴室・台所の拡張は、床面積に算入される増築かを建築士へ確認します。
- 当初図面・増築図面と現況を比較する
配置、建築面積、延べ面積、階数、用途、構造を比較します。相違がある場合は、計画変更、増築、改築、用途変更、確認申請を要しない工事のどれに該当するかを確認します。
- 工事当時の確認申請の要否を所管へ尋ねる
確認申請の要否は、工事時期、区域、用途、構造、階数、増築面積等で変わります。現在の基準だけで過去の工事を判定せず、工事当時の法令と所管の取扱いを確認します。
- 確認できた事実と未確認事項を重説へ記載する
原本の有無、台帳上の交付記録、増築の時期・面積・手続、登記との一致、現況調査の要否を分けて書きます。資料がない場合は『なし』と断定せず、『売主から提示を受けていない』『行政台帳で交付記録を確認できない』など、調査結果を具体的に記載します。
『建築当時の地名地番○○、建築主○○、木造2階建て、昭和○年新築の戸建てです。新築時と平成○年頃の増築について、確認済証・検査済証の番号、年月日、交付機関を確認したいです。増築に関する概要書、処分等の概要書、台帳記録はありますか。当時の区域と増築面積から建築確認が必要だった工事かを相談する場合、どの部署へ確認すればよいですか』と、登記、案内図、現況写真、増築箇所を示す図を提示します。
戸建てでは、床面積が変わる工事を見落とさないようにします
| 現況で気付きやすい箇所 | 確認する資料 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1階の居室・水回りの張り出し | 当初配置図・各階平面図、増築図面、登記床面積、家屋図面 | 外壁と基礎が当初図面より外へ出ていないかを確認します。小規模でも建築確認の要否と法適合性は別に調べます。 |
| サンルーム・テラス囲い | 現況写真、商品名・工事資料、配置図、床面積計算 | 屋根や壁の状態、用途、構造により建築物・増築として扱われる可能性があります。施工会社の呼称だけでは判断しません。 |
| 車庫・カーポート・物置 | 配置図、登記、固定資産資料、確認記録 | 母屋と別棟でも、建築面積・容積率・建ぺい率・防火規制に関係します。敷地全体で確認します。 |
| バルコニー下やピロティの囲い込み | 新築時図面、現況平面図、工事記録 | 床面積の増加、用途変更、採光・換気・避難への影響を確認します。 |
| 小屋裏収納・ロフト | 矩計図、断面図、天井高・面積の実測、確認申請図書 | 申請図と形状・利用方法が違う場合があります。床面積や階として扱われるかを建築士へ確認します。 |
増築は、一般に建築物の床面積を増やす工事です。内装だけの改修とは扱いが異なります。ただし、2025年4月1日以後は、2階建て木造戸建て等の大規模な修繕・模様替えにも建築確認が必要となる場合があります。床面積が増えていないという理由だけで、確認手続が不要だったとは判断できません。
小規模な増築に建築確認の例外が適用される場合はありますが、防火地域・準防火地域、建物の規模・用途、工事内容等によって扱いが変わります。また、確認申請が不要でも、建ぺい率、容積率、接道、防火、構造などの規定には適合させる必要があります。
東京23区・埼玉県では建築記録と工事当時の所管を確認します
東京23区
原則として所在地の区の建築担当窓口から確認します。大規模建築物等は東京都が所管する場合があります。建築計画概要書、処分等の概要書、台帳記載事項証明の取得可否を確認し、増築時の記録も別に検索してもらいます。
さいたま市
北部・南部建築指導課で、概要書等の閲覧・交付方法を確認します。さいたま市は、確認処分の日付によって処分等の概要書と台帳記載事項証明書の交付対象を分けて案内しています。旧市ごとに古い概要書の保存開始時期も異なるため、建築当時の所在地を伝えます。
さいたま市以外の埼玉県
市が所管する地域、県建築安全センターが所管する地域、小規模建築物だけ市町村が扱う地域があります。所在地、工事当時の年月、建物規模から当時の所管を確認します。
建築記録の公式窓口:東京都|建築計画概要書の閲覧制度埼玉県|概要書・台帳証明の窓口さいたま市|概要書等・台帳記載事項証明書
重説には、資料の有無ではなく調査結果を具体的に書きます
| 調査結果 | 独自の記載例 |
|---|---|
| 原本紛失・交付記録あり | 『売主から検査済証原本の提示はありません。○○区の建築台帳記載事項証明書により、○年○月○日付第○号の検査済証交付記録を確認しています。』 |
| 確認記録あり・検査済証記録なし | 『確認済証は○年○月○日付第○号です。売主保管資料および所管行政庁の台帳では、検査済証の交付記録を確認できませんでした。これにより現在の法適合性を判定したものではありません。』 |
| 増築の確認・検査記録あり | 『本建物は○年○月に1階○㎡を増築しています。増築に係る確認済証は第○号、検査済証は第○号です。建物登記の床面積と現況を照合しています。』 |
| 増築部分の手続を確認できない | 『現況では建物南側に約○㎡の増築部分があります。売主は○年頃の工事と説明していますが、当該部分に係る確認済証・検査済証および建築台帳の記録は確認できませんでした。登記上の床面積にも反映されていません。法適合性は未確認です。』 |
| 行政記録と現況が一致しない | 『建築計画概要書の延べ面積は○㎡、建物登記は○㎡、現況実測の概算は○㎡で一致しません。差異の原因となる工事資料は確認できていないため、買主は利用・改修計画を建築士および所管行政庁へ確認してください。』 |
未登記増築は不動産登記上の問題です。無確認増築や法令不適合は建築基準法上の問題です。両者は同じ意味ではありません。登記済みだから建築基準法にも適合している、未登記だから直ちに違反建築である、という説明は避けます。
将来の増改築や用途変更を予定する場合は、現況調査の要否と確認申請に必要な資料を、建築士および所管行政庁へ確認します。買主が予定する工事について、調査や是正の必要性を売買契約前に確認できるよう、判明した事実と未確認事項を説明します。
増築履歴と建築記録を確認して重要事項説明書を作成します
- 新築時・増築時の確認済証、検査済証、行政台帳の調査
- 建物登記・固定資産資料・建築計画概要書・現況の照合
- 検査済証の紛失、交付記録なし、未登記増築の区別
- 確認できた事実と未確認事項を反映した重説ドラフトの作成
標準料金は1物件88,000円(税込)で、公的資料の取得実費は別途ご負担いただきます。建築士による法適合性調査、測量、登記申請は料金に含みません。物件規模・資料量・調査先によっては個別にお見積りします。
検査済証や増築資料がそろわず、調査範囲を整理したい方へ
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼する埼玉県全域・東京都23区/売買物件検査済証がない建物・増築についてよくある質問
検査済証がない建物は売買できませんか?
実務では、売買契約前に行政台帳の交付記録を調べておくと、原本紛失と未交付を区別できます。交付記録も確認できない場合は、現況と増改築履歴を調べ、買主が予定する工事について建築士・所管行政庁へ相談します。融資に必要な資料は金融機関へ個別に確認します。
建築台帳記載事項証明書があれば、検査済証の代わりになりますか?
検査済証の番号・年月日が台帳に記録されていることを証明する資料として利用できますが、検査済証そのものの再発行ではありません。提出先が必要とする資料も確認してください。
未登記の増築部分があれば、必ず違反建築ですか?
未登記増築と、建築確認を受けていない増築・法令に適合しない増築は別の問題です。増築登記の有無と、建築確認・完了検査・法適合性をそれぞれ確認します。ただし、未登記と建築手続の未実施が同時に見つかることもあるため、資料と現況を照合します。
建物状況調査をすれば、増築部分の法適合性も分かりますか?
宅地建物取引業法上の建物状況調査は、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の劣化・不具合を調べる制度です。建築基準法全般への適合性を判定する調査とは目的が異なります。必要に応じて建築士へ法適合性の調査を別に依頼します。
国の旧『検査済証のない建築物』ガイドラインを使いますか?
旧ガイドラインは2025年4月1日に廃止され、現在は『既存建築物の現況調査ガイドライン』へ一本化されています。将来の増築・改築等を予定する場合は、現行ガイドラインに基づく調査の要否を建築士と所管へ確認します。