敷地権の目的である土地の書き方|複数筆と土地の符号
マンションの敷地が3筆なら、3筆すべてを書けばよいですか?
区分建物の登記には『敷地権の目的である土地の表示』として3筆が載っています。重要事項説明書には3筆をそのまま書けばよいのでしょうか。それとも、売買する住戸に関係する土地だけを選ぶのでしょうか。
土地の符号を使い、対象住戸の敷地権表示まで照合します
『敷地権の目的である土地の表示』から所在・地番・地目・地積を抜き出し、土地の符号が対象専有部分の『敷地権の表示』に出てくるかを1筆ずつ確認します。マンションの敷地らしく見える土地を、外観や販売図面だけで一括記載してはいけません。
不動産登記法44条は、区分建物について敷地利用権が登記され、専有部分と分離して処分できないものを『敷地権』として建物の表示に記録します。不動産登記規則118条は、その記録事項を、目的土地の符号・不動産所在事項・地目・地積と、敷地権の種類・割合に分けています。
重要事項説明書では、一つの行に土地の表示と敷地権の種類・割合が並ぶことがあります。しかし調査は二段階です。この記事では土地側の『どの筆か』を扱い、次の記事で住戸側の『どの権利を何分の何持つか』を扱います。
区分所有法上の『建物の敷地』と、登記上の『敷地権の目的である土地』は、同じ言葉ではありません。建物が載る法定敷地や、規約で敷地とされた庭・通路があっても、対象住戸の登記に敷地権としてどう表れているかを別に確認します。
敷地権の目的である土地の書き方診断フローチャート
当てはまる答えを押すと、あなたの場合の結論に色が付きます。
- 確認2土地の符号は、対象住戸の「敷地権の表示」に全部ありますか?
- 確認3庭・通路の土地や、地上権・賃借権の土地はありますか?
- 結論全筆を符号ごとに転記
- 結論庭・通路も符号ごとに書く
- 結論符号ごとに権利の種類を書く
- 結論符号がない理由を確認
- 結論土地の権利を登記と契約で調べる
- 確認1対象住戸の登記に「敷地権の目的である土地の表示」はありますか?結論土地の権利を登記と契約で調べる
- 確認2土地の符号は、対象住戸の「敷地権の表示」に全部ありますか?結論符号がない理由を確認
- 確認3庭・通路の土地や、地上権・賃借権の土地はありますか?結論全筆を符号ごとに転記結論庭・通路も符号ごとに書く結論符号ごとに権利の種類を書く
- 全筆を符号ごとに転記
符号ごとに、所在・地番・地目・地積と敷地権の種類・割合を同じ行へ書きます。書いたあと、各土地の登記と照合します。
- 庭・通路も符号ごとに書く
庭や通路の土地も、登記どおり符号ごとに書きます。規約敷地かどうかの確認は、規約敷地の調べ方・書き方で説明しています。
- 符号ごとに権利の種類を書く
敷地権の種類は、符号ごとに登記どおり所有権・地上権・賃借権と書きます。借地の条件は借地契約で確認し、権利内容の欄に書きます。
- 符号がない理由を確認
「敷地権の表示」に載っていない符号の土地は、対象住戸の敷地権が及ぶ土地かどうかを、土地の登記と管理規約で確認してから書きます。
- 土地の権利を登記と契約で調べる
この表示がないときは、土地の共有持分、地上権、賃借権を、土地登記・契約書・管理規約で調べて書きます。調べ方は、敷地権でない区分所有建物の土地欄で説明しています。
対象の土地は、家屋番号で取得した対象住戸の最新の登記で確認します。
目的土地を書く前に分ける8項目
- 対象専有部分の登記かマンション名や部屋番号ではなく、家屋番号で対象住戸を固定します。別棟・別住戸の敷地権表示を参照しないようにします。
- 敷地権の目的である土地の表示があるか表題部にこの区画自体がなければ、敷地権が登記されている前提で書きません。敷地権でない土地利用権は後続の別記事で扱います。
- 土地の符号はいくつあるか符号1、2、3のように並ぶ場合、各符号と所在・地番・地目・地積を一行ずつ調査表へ抜き出します。符号は地番の一部ではありません。
- 対象住戸の敷地権表示に同じ符号があるか一棟側の目的土地一覧だけで終えず、専有部分側の敷地権表示にある土地の符号と突き合わせます。対応しない符号があれば理由を確認します。
- 各筆の最新土地登記があるか分筆・合筆、地目変更、地積更正等がないか、目的土地ごとの最新登記で確認します。古い規約や分譲時資料だけを転記しません。
- 法定敷地か規約敷地か建物が所在する土地か、庭・通路等を規約で敷地とした土地かを、配置図、管理規約、登記で整理します。詳しい確認順は、規約敷地の調べ方・書き方で説明しています。
- 敷地権の種類が所有権か借地権か土地の表示だけでは、区分所有者が土地を共有しているのか、地上権・賃借権を準共有しているのかは分かりません。種類と割合を必ず同じ符号で確認します。
- 敷地関係図・現況と対応するか登記上の目的土地が、建物、駐車場、庭、通路等のどこに当たるかを図面と現地で確認します。ただし現況から登記上の対象筆を逆算しません。
複数筆を土地の符号から重説へ移す順番
- 家屋番号で対象専有部分を確定する
売主資料、固定資産税課税明細書、登記識別情報通知等から家屋番号を確認します。住居表示や部屋番号だけで検索結果を選びません。
- 対象区分建物の最新登記情報を取得する
通常の物件調査では登記情報提供サービスで全部事項を取得し、取得日時が分かるPDFを保存します。証明書が必要な場面とは使い分けます。
- 目的土地を符号順に一覧化する
『敷地権の目的である土地の表示』から、符号、所在及び地番、地目、地積、登記日付を抜き出します。地積は各土地全体の登記地積です。
- 対象住戸の敷地権表示へ符号をつなぐ
専有部分の『敷地権の表示』で、各土地の符号、敷地権の種類、割合、原因・日付を確認します。符号が一致しない、欠ける、抹消線がある場合は追加確認します。
- 各土地の最新登記記録を取得する
土地ごとに表題部、甲区、乙区を確認します。所有権敷地権なら甲区、地上権・賃借権の敷地権なら乙区を含め、敷地権である旨の登記と建物側の表示を照合します。
- 管理規約・図面・現地へ重ねる
敷地関係図、管理規約、重要事項調査報告書、分譲時資料、現地写真から、各筆の利用状況と規約敷地の有無を確認します。登記と資料が不一致なら解消理由を調べます。
- 重説の一行を符号単位で再照合する
所在・地番・地目・地積・種類・割合を、同じ土地の符号ごとに一行へまとめます。行ずれ、筆落ち、別住戸の割合混入がないか二人目の確認ができる形で根拠表を保存します。
3筆ある敷地権の記載例と場合分け
次の所在地・地番・面積・権利割合は、土地の符号を追う方法を示す架空例です。実案件では最新登記を一字ずつ確認してください。
| 目的土地の表示 | 対象住戸の敷地権表示 | 重説での扱い | |
|---|---|---|---|
| 土地の符号1 | 東京都例示区南町一丁目20番1/宅地/1,845.32㎡ | 符号1/所有権/100000分の6847 | 土地の表示と種類・割合を同じ行へ記載 |
| 土地の符号2 | 東京都例示区南町一丁目20番2/宅地/82.14㎡ | 符号2/所有権/100000分の6847 | 通路状でも省略せず、登記どおり別行へ記載 |
| 土地の符号3 | 東京都例示区南町一丁目20番5/雑種地/46.00㎡ | 符号3/所有権/1000分の65 | 他筆と割合が違うため、その土地の割合を個別記載 |
合計値を補助的に示す書式でも、各筆の所在・地番・地目・地積と、土地の符号に対応する種類・割合を残します。合計面積だけでは、どの土地が権利の対象か追跡できません。
| 登記・資料の状態 | 判断と追加確認 |
|---|---|
| 目的土地と敷地権表示が全筆一致 | 各符号の土地表示・種類・割合を転記し、各土地登記と再照合します。 |
| 目的土地の符号が住戸側にない | マンション全体の土地一覧を対象住戸へ一括適用せず、対象住戸の権利範囲、登記経緯、規約を確認します。 |
| 規約で庭・通路を敷地としている | 規約敷地であることと、対象住戸の登記上の敷地権になっていることを分けて確認します。 |
| 表題部に敷地権表示がない | 敷地権付き区分建物として記載せず、土地の共有持分、地上権、賃借権等を土地登記・契約・規約から個別に確認します。 |
| 一部の土地だけ借地 | 土地の符号ごとに所有権・地上権・賃借権を対応させ、借地条件は後続の権利内容欄と借地説明書で確認します。 |
判決事案では、土地所有者が所有する土地の『一部』が建物所有目的で賃貸され、その上に区分所有建物がありました。ただし、公開判決は、その賃借権が登記上の敷地権だったか、土地の符号や割合がどう記録されていたかを示していません。したがって、この判決から特定の敷地権表示を推測することはできません。
この判決を実務へつなげるポイントは、区分建物が借地上にあるという説明だけで、登記上の敷地権の対象土地を決めないことです。判決事案の詳しい権利関係は、土地賃借権と2026年最高裁判決の記事で確認できます。
東京23区・埼玉県でも、登記は家屋番号と地番から調べます
敷地権の記録方法は全国共通です。地域によって変わるのは、対象区分建物と土地を管轄する法務局、管理規約等の保管・回答先です。区役所・市役所の都市計画窓口では、敷地権の対象土地や割合を確定できません。
東京都23区
物件所在区を管轄する東京法務局本局・出張所を管轄一覧から確認します。複数筆でも、住居表示ではなく土地の所在・地番で土地登記を取得します。
埼玉県
物件所在市町村を管轄するさいたま地方法務局本局・支局・出張所を確認します。複数市町村や管轄境にまたがる特殊案件は、各登記所へ確認します。
通常の事前調査
登記情報提供サービスで対象住戸と目的土地の全部事項を取得し、符号対応表を作ります。オンラインの登記事項証明書請求は、操作に不慣れな方へ積極的にはおすすめしていません。証明書が必要なら法務局窓口等と使い分けます。
マンション固有資料
管理規約、敷地関係図、重要事項調査報告書、分譲時資料は管理組合・管理会社・売主等から取得します。所在区・市が同じでも内容は物件ごとに異なります。
確認した公式資料:宅地建物取引業法35条(e-Gov)不動産登記法44条・46条(e-Gov)不動産登記規則118条・119条(e-Gov)建物の区分所有等に関する法律(e-Gov)区分建物の登記事項証明書見本(法務省)登記情報提供サービス東京法務局の不動産登記管轄さいたま地方法務局の不動産登記管轄令和8年8月28日最高裁判決
マンションの敷地全部ではなく、対象住戸の土地を符号で確定します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
複数筆では、地番を並べる前に『この住戸の敷地権が、どの符号に及ぶか』を確認してください。符号対応表を一枚作るだけで、行ずれをかなり防げます。
| 誤りやすい確認 | 実務で残す根拠 |
|---|---|
| 販売図面の敷地面積だけを使う | 区分建物登記の目的土地一覧、各土地登記、面積の定義が分かる資料を保存 |
| 一棟側の土地を全住戸へ一括コピー | 対象住戸の敷地権表示まで土地の符号を追い、住戸ごとの対応表を保存 |
| 通路や駐車場の筆を省く | 地目・現況にかかわらず、登記上の目的土地は符号単位で確認 |
| 合計地積を住戸の土地面積と呼ぶ | 各筆の全体地積と敷地権割合を別項目で記録し、専用部分と誤解させない |
| 借地上だから賃借権敷地権と決める | 建物・土地登記、借地契約、登記された敷地権の有無を分けて確認 |
土地の範囲を確定したら、次は各符号に対応する権利の種類と割合を読みます。「敷地権の種類・割合」の記事では、細かな分数を省略・小数化せず転記する方法を説明します。
物件調査から重要事項説明書の作成まで対応します
- 埼玉県全域・東京都23区の売買物件に対応
- 取引資料の確認、現地・役所・法務局等の調査、重要事項説明書ドラフト作成
標準的な1物件88,000円(税込)。公的資料取得実費は別途です。
対象住戸と複数の土地登記を符号で照合し、管理規約・敷地関係図・現況まで確認した重要事項説明書ドラフトを作成します。
物件調査・重要事項説明書の作成を依頼するサービス内容とご依頼の流れをご確認いただけます。敷地権の目的である土地でよくある質問
土地の符号は地番ですか?
違います。土地の符号は、区分建物登記の中で目的土地と敷地権表示を対応させる番号です。実際の土地は所在・地番で特定し、符号と地番をセットで管理します。
敷地が5筆なら、地積は合計だけ書けばよいですか?
各筆の所在・地番・地目・地積を符号ごとに記載したうえで、書式に合計欄があれば合計も示します。合計だけでは対象土地と権利割合の対応を追えません。
敷地権の目的土地の地積は、住戸が持つ土地面積ですか?
いいえ。その欄の地積は各土地全体の登記地積です。対象住戸の権利の大きさは別欄の敷地権割合で示され、特定の地面を専用できる面積を意味しません。
建物が載っていない駐車場や通路も対象になりますか?
規約敷地として建物の敷地とされ、登記上も敷地権の目的土地となっている場合があります。外観で省かず、登記・管理規約・敷地関係図を照合します。
敷地権の表示がない区分建物は誤登記ですか?
直ちに誤登記とはいえません。敷地利用権と専有部分を分離処分できる場合や、旧来の登記等も考えられます。土地持分・地上権・賃借権を土地登記、契約、規約から個別確認します。
2026年最高裁判決の賃借権は敷地権ですか?
公開判決は、土地の一部が賃借権の目的で、その上に区分所有建物があったことを示しますが、賃借権が登記上の敷地権だったか、土地の符号・割合がどう記録されていたかは示していません。判決だけから敷地権表示を推測できません。